2019年08月25日

小説『彼女が追ってくる』石持浅海

冷酷で頭脳明晰な才女たちによる
論理的な頭脳ゲーム開幕。最期に笑うのは一体誰だ?

「箱根会」は成功した経営者たちに催される会。
今回はコテージに会のメンバーとゲストとして
火山学者碓氷優佳が参加した。
メンバー間の懇談によって楽しい夜が過ぎていく。
そんな中、中条夏子はかつての親友にして
恋のライバルだった黒羽姫乃殺害を断行した。
用意周到にして計画的な殺人であり、
夏子は完全犯罪を確信していたのだが…

事件は被害者である姫乃が握っていたカフスボタンの
存在によって、思わぬ展開をみせる。
それは姫乃の遺志なのか?殺したはずの相手から
追われているような錯覚を受ける加害者夏子。

容疑者をかばう気鋭や同情心や打算から
警察への通報が遅れ、関係者たちによる
殺人事件に対する考察が行われる。
部外者のはずの碓氷優佳は事件の真相を暴いていく
超然とした存在として異彩を放つ。
読んだあなたが本当に冷たいと感じる女性は誰?
祥伝社文庫
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2019年08月19日

小説『極楽カンパニー』原宏一

定年退職した会社人間須河内、桐峰は本気で
会社ごっこをはじめた。
「絵空事・馬鹿正直・度外視」
という現実の会社ではできなかった理想を掲げ、
邁進する二人は彼らに賛同する喫茶店のマスターの
協力もあって架空の会社を設立。

退職後張り合いをなくし、暇を持て余していた
同じ境遇の者たちが想像以上に集まってきた。
喫茶店をオフィスとした本気の会社ごっこ遊びは
会社人間、モーレツ社員たちにとって最高の時間。
金の介在がないだけで本式の会社と見間違うレベルの
ごっこ遊びに定年退職者達は夢中になる。

100人単位に膨れ上がり、喫茶店だけではキャパ超えと
桐峰は新たに別会社をつくり切磋琢磨しようと張り切る。
商社に勤めていた須河内の息子慎平はそんな父を冷ややかに
見ていた。だが将来の独立を真剣に考えるようになり
父たちの会社ごっこはそのままビジネスに転用できる
可能性に気づく。そして資金を出してくれるという
悪評ばかりの二谷の存在もあって会社との決別を決める。

会社ごっこは会社人間だった多くの定年世代の心を捉え、
全国に広がっていく。そんな中、事件が勃発して。

父と子の確執、母の怒り、働き方や働く意味を
ユーモアを交えて描く。作品の中で、登場人物が
会社って一体何なんだろうね?と考えるシーンがあるが
本当に会社って何なのかね?労働環境自体はどんどん
よくなっているはずなのに、離職率とかは上がっている。
終身雇用が崩壊したことや、転職自体のハードルが
ずっと低くなったことや、家庭の形やあり方や
女性の社会進出など多くの要素がからみあって、
一概には言えないのもかもしれない。

職業選択が自由化したことで、かえって複雑化、
迷う要素が増えたような気もするが、職業を変えられる、
逃げられる環境もできた気もするし。いずれにせよ
天職を見つけられればいいけどこればかりは難しい。
集英社文庫
ラベル:小説 原宏一
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2019年07月29日

小説『影男』江戸川乱歩

いくつもの名前を持ち、複数の恋人を持ち、
人々の秘密を握り影のように暗躍する影男。
人の表の顔と裏の顔を探求する影男は、
めだたない影のような存在となり恋人や部下も
動員して権力者の急所を握り大金を脅し取る。

犯罪小説家という顔を持つ彼は、実際に自分が
行った犯罪を作品で発表するという
大胆不敵な行為をし、それを愉しんですらいる。
しかし根っからの悪党ではないので、きまぐれで
困っている人間を助けたりと義賊的性格も併せ持つ。

その類い稀な頭脳は本当の悪党に目をつけられる。
殺人請負会社を営む須原は影男に接触。
ターゲットを奇抜な方法で殺したいので
その方法を伝授してほしいと影男に依頼した。

幻想的な世界を構築し、ルパン的主人公影男が
暗躍する物語に引き込まれる。作者が述べるように
思いつきと二番煎じ(過去の作品との)、
後半の構成にやや難があるが十分楽しめた。
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2017年08月15日

小説『紅い白描』松本清張

葉子は日本を代表するデザイナー葛山の下で
働けることになり、期待に胸を膨らませていた。
戦後間もないこのご時世、日本のデザイナーは
海外の模倣ばかりで独創性がないと言われていた。
しかし、葛山はその独特の感性から鬼才として知られ、
作中海外からも評価されるような異彩を放っていた。

この場所で勉強すれば多くの物が得られると思い、
働き始めた葉子だったが、早々に疑問を抱く。
葛山のすばらしい作品と葛山自身の持つ俗物的で
ビジネスライクな言動が一致せず違和感を覚えた。
特に名古屋に旅行に出かけた際に、不信を抱いた葉子は
葛山という人物そのものに疑念を持つようになった。

近所で出会った人懐こい少年と仲良くなった葉子は
不思議と彼に対して関心を持つ。
それはある種のひらめきだったのか。
少年と葛山とは何らかのつながりがあるはず。
葉子はキーパーソンと思われる少年を追う内に
意外な真相にたどり着き、自らの道に悩む。角川文庫
ラベル:松本清張
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2017年08月12日

小説『花のさくら通り』荻原浩

経営悪化に伴い都心部から離れることになった
ユニバーサル広告社は移転も自分たちで行い、
経費を賄うことにした。石井社長の決断に
三人の社員は不満たらたら。通勤時間もひどいことに。
民家のようなオフィスでの仕事はブレーカーが
簡単に飛んでしまい、都落ちしたことを実感させる。

さて彼らがやってきた本来の意味でヤバいさくら通り商店街。
シャッター商店街10選に挙げられる経営不振に陥っていた。
店主たちはこの状況を直視したくなくて、
ただただ威張っていたい長の磯村は会議のたびに
古い因習に従い、若手店主の意見をはね返す。
6月に行われる「さくら祭り」の頃には桜が咲いていないし、
そもそも害虫問題の解決策として桜を切ってしまっていた。
名ばかりのさくら祭りは毎年盛り上がるわけもなく、
係の癒着もあり形骸化した催しに成り下がっていた。

脱サラし和菓子店で家族と共に働く無口な男守は
ユニバーサル広告社に仕事を依頼。
12万円という破格の値段で仕事を引き受けた杉山は
愉快な社員たちと共に商店街を活性化させようと尽力。
しかし、一国一城の主として土地に根差しがんばってきた
面々は新参者である杉山たちを信用していない。
新旧、年代も異なる店主たちを相手に苦戦を強いられ、
半ば意地もあり奮闘する杉山たちは奇策を打ち出した。
この土地で彼らは受け入れてもらえるのか?

離婚し、愛娘早苗と離れて暮らすことになった杉山。
元妻が再婚したこともあり娘から届く手紙に喜ぶが
返事を書くかどうか逡巡し葛藤する。
娘や元妻、再婚相手の気持ちを考えた結果、
クラウチ君という謎の人物からの手紙を送ることにした。
父の想いは、娘に届くのか?
シリーズ第3弾。集英社文庫
ラベル:荻原浩
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2017年07月23日

小説『悪人』吉田修一

九州で殺人事件が発生。殺人者と被害者が提示され、
その事件に至った経緯、そして現在が描かれていく。
悲しい過去を持つ殺人者。事件に関わる人々が
描かれていく過程で読者に疑問を投げかけるのは
タイトル「悪人」の意味。どうやら殺人者清水祐一
そのひとを指しているわけではなさそうだと気付く。

被害者でありながら、貶められる人権。
無罪放免こそされても決して人道的に許せないヒト。
大切な人の命を奪われた家族の失意。
予期せぬ形で人を殺めてしまった好青年
だったはずの犯人が取っていた謎の行為と真意。
彼に寄り添う人々…。
事件をめぐり、人々の心がどのように動き、
行動に駆り立てられたのかを描く。後半よい。
朝日新聞出版 上・下巻
ラベル:吉田修一
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2017年07月17日

小説『ドS刑事 風が吹けば桶屋が儲かる事件』七尾与史

静岡県浜松市で発生した連続放火殺人事件を追う
猟奇的な美魔女黒井マヤと代官山はコンビを組み事件を追う。
美しいが毒ばかり吐くマヤに翻弄される部下の代官山。
通常と異なる精神回路を持つマヤは殺人現場に漂う
酸鼻な状況を心から愉しんでいる。病んでいる…。
しかも彼女、たちの悪いことに警察のおエライさん
(ナンバーツー)を父に持つ。
家族におエライさんがいるなんて浅見光彦みたいだ。
彼女の機嫌を損ない僻地に飛ばされた者もいるという。

絶対的な権力の庇護の下、やる気を見せず仕事を
サボろうとする彼女であったが抜群の推理力を持つ。
事件を追ううちにコンビを組む代官山は疑問を抱く。
彼女すでに事件の真相にたどりついてないか?
でもなぜか捜査に対して積極的な進言しないし、
推理を披露してもくれない。
代官山はクセのあるアニメオタクの先輩の助言などから
彼女の推理を推理することを選択した。

殺人の動機を持つ容疑者が次々と出てくるが
その容疑者たちが次々と焼死体となり発見される。
負の連鎖、悪意のバトン渡しのリレー。
犯行の動機(因果関係)を追っていくこのミステリーは
設定上一見イロモノ感があるが緻密に計算されていて
エンターテインメントとしては一級品。幻冬舎文庫
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2017年07月11日

小説「ラスト・コード」堂場瞬一

渡米した天才少女美咲が告げられたのは唯一の肉親である
父が殺人事件に巻き込まれたというものだった。
羽田空港に来てほしいと言われた彼女は
数学オリンピック金メダルの理系女子でまだ14歳だった。
2年前の母の死により、元々うまくいっていなかった
親子の仲は余計にこじれ、心は離れてしまっていた。

過去の「事件」をきっかけに警察内部で腫れ物に触るように
扱われている刑事筒井は被害者の娘である美咲を迎えに行く。
父の死を悲しんでいないような少女に当惑する筒井は
署をめざすのだが、何者かから襲撃を受ける。
戸惑う筒井、なぜか冷静な美咲。
応援を要請する筒井であったが、上層部の思惑、
謎の圧力がかかり、人手不足を理由に援助を受けられない。
移動する度に襲撃を受け、おまけに警察内部で
誰が味方かわからない筒井は元警察官の探偵小野寺冴
に助けを求めることにした。

徐々に明らかになっていく美咲の父の行動。
警察内部で発生した政治的駆け引き。大義なき行動。
刑事である筒井、そして警察内部の核弾頭鳴沢了、
小野寺冴が抱える正義感の功罪。
孤高の存在であることの難しさと、
組織で生きることのジレンマ。
人間の心は数字化できるものじゃないから
解き明かせない。決して…。中央文庫
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2017年06月28日

小説『公開処刑人 森のくまさん』堀内公太郎

「森のくまさん」は私刑による死刑執行人。
犯行声明をネット上で公開し世間に話題を提供。
被害者は生前に悪い行いをしていた悪党や小悪党であり
生前は加害者。よって世間では彼を支持する者も多い。
「正義の味方」、世直し的ヒーロー的立場を得た
森のくまさんこと連続殺人犯の正体は?

自殺をしようとしていた女子高生たちの前に現れたのは
救いの神だったのか?それとも悪魔だったのか?
最も解きやすい推理小説のひとつであり、
ツッコミどころも多いがやはり設定のインパクト、
森のくまさんの不気味さ、魅力、
サクサク読める平易な文章を評価したい。
単なるサイコパス的な連続殺人犯モノで終わらず、
犯人が悪意の種や社会不安をばらまいていく過程は
目をみはるものがある。宝島社文庫 このミス大賞
ラベル:推理小説
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2017年06月17日

小説『母恋旅烏』荻原浩

花菱家は出鱈目な父のせいでサイコロ的バクチ生活を
余儀なくされている。元々大衆演劇の役者であった父、
彼のファンだった母。兄、姉、そして僕。姉の子6人の
花菱家はけったいな仕事をしていた。
レンタル家族派遣業である。リクエストされた家族として
3時間数万円などの報酬を得ることで生活をしていた。

安定しない仕事なので家計は火の車であり、
ケンカは絶えず、借金取りから逃げる日々…。
それなのにあまり悲壮感が漂わないのは、
語り手であることが多いお調子者の僕の存在が大きい。
父に振り回される日々にいい加減うんざりした兄は
自立をめざし、姉は家を飛び出し夢を追いかける。
そして僕や母は…。笑いあり、涙ありの珍道中は
大団円を迎えるのか?双葉文庫
ラベル:荻原浩
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2017年05月27日

小説『本日は大安なり』辻村深月

11月22日大安吉日。
結婚式場に集まった訳ありの面々により、
予想外の事態が次々と巻き起こる。
正直、作者がこじらせたのかと心配になったが
読み進めると山積みかと思われた課題が解決されていく。
辻村先生の作品は読者の心をざわつかせるなぁ。

老舗として評判も高いが値段も高い結婚式場。
本日は大安ということもあり4組の新郎新婦が
華燭の典を挙げる。大金を支払うこともあってか
わがままなクレーマー新婦を担当することになった
プランナーの多香子は、私情を押し殺し式に臨む。
最悪の相手さえ乗り切ればこの先もずっとこの仕事を
全うできるはず…。がんばれ多香子応援だけしてるぞ。
また厄介事を押し付けられるけど、
きっと君を見守ってくれる人もいる…はず。

さて、別の新郎新婦に目を転じようか。
おや、一卵性双生児の美人双子姉妹の一方が
本日めでたく結婚するらしいぞ。でもこの二人、
とんだ食わせ物だぞ。双子という立場や生い立ちも
関係してか、お互いに複雑な感情を抱いているみたい。
厄介な双子に振り回される新郎はついつい本音を。
勘弁してよ、と。

おや、こちらは結婚前に散々揉めた新郎新婦だ。
薬剤師の新婦りえさんと結婚するのは同じ職場で
アルバイトのまことさんかぁ。いわゆる格差婚。
新婦側の親御さんの反対押し切った結婚だ。
結婚しちゃって大丈夫かしら。
りえを心配するオレこと小学生の真空君は
まことの秘密を知ってしまった。
なんとかこの結婚式をやめさせたいと考えている。
小学生の健気な想いは通じるのか?

そして最後は結婚式場をうろつく不審な男。
自分の普段の行いの悪さから墓穴を掘り、
いよいよ切羽詰まった状態に追い込まれた男。
犯罪者メンタルに陥った男が余計なことを
しでかしてしまいそう。不穏な空気が漂っている。
角川文庫
ラベル:辻村深月
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2017年05月24日

小説『あの日にドライブ』荻原浩

上司に反目したことで銀行を辞めた牧村は
腰掛けのつもりでタクシー運転手になった。
銀行というクソみたいな職場、カス上司のせいで
割をくってきた家族。その報いからか、
家では肩身が狭くなり、会話も弾まない。

あの日あのときに戻ってあの道、あの選択をしていたら…
あのときああしていればの「タラレバオヤジ」と化した
牧村は妄想という現実逃避に走る。
銀行員として出世を続ける自分。
思わぬ出会いにより大会社にスカウトされる自分。
プロ野球選手になっていたかも。
大学時代夢見た出版関係の仕事。
そしてかつての恋人と結婚していたら…。
あの時もしも違う選択をし、あのカーブを曲がれば、
それこそすばらしい道を歩めていたかも…。

営業成績が上がらない彼は営業部長に罵られ、
ストレスと不規則な生活がたたり円形脱毛症に。
運が悪いから成績上がらないとギリギリプライドを保つ。
しかし、戦時中飛行機乗りだった隊長さんの営業努力や、
意外な過去を持つ山城たち同僚の姿、
かつての恋人の現在などを知るうちにはたと気付く。
青春を追うかのように自分にゆかりの場所や
人を求め出した牧村が行き着いた答えとは?
かっこ悪すぎる主人公に我慢を強いられるが、
最後まで読むと納得できるかなぁ。光文社文庫
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2017年05月20日

小説『ザビエルの首』柳広司

教科書に載る位有名な人物宣教師ザビエルを追う
超常現象の物書き修平。奇跡体験を通じて
生前ザビエルが遭遇した謎を秘めた殺人現場に遭遇。
不思議な力により事件を目撃した修平は、
事件に居合わせた人物の中に憑依し真相を暴く。

死後ザビエルの遺体は腐敗せず、生きているかのような
状態を保っていたという。この「奇跡」は認められ、
彼の遺体は厳重に保護されているという。
(死後2回以上の奇跡を起こし、遺体が腐敗しないと
「聖人」として認定され手厚く保護される)

ザビエルの首が鹿児島で発見されたといううさんくさい
情報を記事にするために辺境の村にやってきた修平。
どう見ても村おこしのためのでっち上げと思われたが、
ザビエルの首と、不思議な目を見た修平は
過去の世界に飛ばされていた。

自身が体験したアフガニスタンでの地獄のような日々。
大国アメリカの誤爆により結婚会場に集まった人々は
無残な最期を迎えた。戦場で修平は生死をさまよい、
一命をとりとめ帰国。当たり前のように平和な日常をすごす
日本の中で、傷は癒えたかのように思われていたが
意識下の中に「なぜ」という疑問が渦巻いていたのだろう。

なぜ何の罪もない人が殺されるのだろうか?
なぜいつの時代も人は争い合うのだろうか?
なぜ人は安易に悪意をまき散らすのか?
なぜ人は神にすがり、神は人を本質的な意味で助けないのか?
矛盾をはらんだ宗教。場合によっては犯罪にも加担し援護する。
ちんけな奇跡起こしている暇などないはずなのに。
意識下に潜んでいた「怒り」のような感情とやるせなさが
数奇な人生をすごしたザビエルと共鳴したのかもしれない。
講談社文庫
ラベル:柳広司 推理小説
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2017年05月04日

小説『白いしるし』西加奈子

32歳。失恋を繰り返す夏目は恋に溺れぬように
絵を描きながら日々を送る。それだけでは
食べられないのでバーテンダーをしている。
写真家の男友達瀬田の紹介により、かねてから
心を奪われるような絵を描く間島と出会う。
本人が危惧していたように、超然とした間島に
強く惹きつけられ恋に溺れてしまう夏目。
自分の絵を、自分のことを好きだと言ってくれる
間島だったが、暗い影のような存在が見え隠れ。
彼には自分が踏み込めない聖域のようなものがある。
かつて体験した失恋の痛みがかさぶたに変わる日は
来るのか?全身全霊をかけた恋の行方は。新潮文庫
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2017年04月19日

小説『虚報』堂場瞬一

自殺教唆を疑われる大学教授のサイトをめぐり
新聞記者たちがその真相に迫っていく社会派作品。
なぜ上山は自殺を勧めるかのような記事を書き、
質問者に答えていたのか?
特ダネをめざすやり手の市川、記者経験の浅い長妻は
この事件を追ううちに窮地に立たされ…。

相次ぐビニール袋集団自殺の被害者たちは、
上山教授が運営するサイトを閲覧していた。
その内容は自殺教唆と受けとられるような記事で
自殺の決め手になったのではないかと疑われた。
サイトは封鎖され、上山教授は会見により
自殺ではなく自死であり、直接自殺を促したことを否定。
マスコミは上山に論破され
ネット上では彼を支持する者も多い。しかし新聞社、
雑誌系は上山の言動に懐疑的であり追跡取材。
また警察官も自殺教唆(自殺ほう助)などをめぐり
彼をマークしていた。

市川は上山と知り合いでその言動に首をひねる。
彼らしくない言動であり疑問が尽きないので
直接取材に乗り出した。自殺や尊厳死、安楽死
をめぐる問題に切り込んだ社会派ミステリー。
新聞社内で発生するぎすぎすした関係、
まさに生き馬の目を抜く報道合戦。
生き死にを懸けた人々の戦いを鋭く描く。文春文庫
ラベル:堂場瞬一
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2017年04月15日

小説『古書店アゼリアの死体』若竹七海

不幸続きの相澤真琴は念願だった海でバカヤローと
叫ぶために神奈川県葉崎市に来たのだが死体が…。
なんてついてない日なんだ。
と叫びたくなる日々だが、古書店アゼリアの女主人
前田紅子から店番を任された。
ロマンス小説という昔取った杵柄的知識が生きてきた。

莫大な財産を持つという紅子は名門前田家の出身で
ここ葉崎で権力者として知られているひとかどの人物。
恩義を感じている者も多いのだ。意外に忙しい店番を
こなしていた真琴だったが新たな死体との遭遇…。
数多くの秘密と問題を抱える前田家の因縁が噴出し…。
入り組んだ内容と演出が心憎い推理小説。
皮肉のきいたオチが印象的。光文社文庫
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2017年04月01日

小説『仮面同窓会』雫井脩介

理不尽な体罰的指導を強制されていた高校時代を
思い出し、仕返しを企てることにした4人。
20代後半になりながら体育教師樫村から受けた傷は
洋輔の中に未だ尾を引いていた。

高校時代あこがれていた美郷をストーカーから守った
ことで親しくなり、パッとしない日々に潤いが生まれた。
同窓会にやってきた洋輔が見た者は、自らの行為に
何の疑問も反省もせず生きている樫村の姿だった。

樫村の健在をおもしろく思わない皆川、大村、八真人は
「仮面同窓会」を開き梶村に制裁を加えることを発案。
洋輔も断り切れず、4人で樫村を拉致して彼が自分たちに
強制させていた天突き体操をさせることにした。

溜飲を下げることに成功した彼らは意気揚々と引き揚げた。
しかし、樫村が死体で見つかったことから疑心暗鬼となり
自分たちの中に犯人がいるのではないかと思い出す。
過去の事件が引き起こした因果応報的ミステリー。
関係者は皆沼に引きずり込まれていく。
姿は見えないが声だけはする不思議な兄の存在。
そして物語に隠された伏線回収が見事だ。幻冬舎
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2017年03月29日

小説『御不浄バトル』羽田圭介

電通ではなく電信に入社。ブラック企業だった。
教材を法外な値段で売る詐欺会社の事務職の僕は
徐々にこの会社の実態に気付いていく。
まともな精神の者は半年で会社を去り、
精神が麻痺した社員はインチキ教材を売りさばき
報酬を得て、ぜいたくな暮らしに走る。
人の嫌がることを進んでやれる(悪い意味で)。
そんな鈍感な者だけがいられる場所。
それが電通。おっと間違えた電信だ。

主人公の僕が心を落ち着けられる場所はトイレだ。
駅のホームにある比較的綺麗な個室を確保したいと
今日も僕は速足で歩く。常連メンバーと出くわす。
緊張感漂う会社の中で僕にとって安寧の場所。
トイレの中だ。食事もここで行う位だ。
欲求不満すらもここで処理する。
絶対不可侵の聖域。それはトイレである。
それにしても排泄物の描写がリアルすぎる。

僕は何とか詐欺的勧誘に関わらないように
お茶を濁してきたが、上司から暴力的な制裁を受ける。
本格的に会社を辞めたいが、会社都合による退職を
めざす僕は証拠集めに乗り出す。恋人や友人の支え、
トイレの中でこっそり発揮されるバカバカしい戦い、
ブラック企業の実態、サラリーマンの苦悩を描いた問題作。
短編「荒野のサクセスも収録」 集英社文庫
ラベル:小説 羽田圭介
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2017年03月18日

小説『ファイヤーボール』原宏一

商社マンとして猛烈社員的働きをしていた咲本。
スペインのミゲル社長との大きな取引をまとめ
意気揚々と帰国した咲本。
しかし社内抗争が勃発し、閑職に追いやられてしまう。
暇なら町内会の仕事やってよと妻から言われ、
しぶしぶ会議に赴く咲本。

だがこの町内会大きな問題をはらんでいた。
元校長、元町内会長武村が院政をしくこの町内会では
横領、使い込み、業者への恫喝と政治的腐敗が進んでいた。
小規模な祭りとは思えないような予算が組まれるという
オリンピック的な腐敗に首をかしげた咲本は
「今より十倍盛り上がる祭り」を生み出すと豪語。

世界の祭りを調べた咲本は火の玉祭りの存在を知る。
まぁこんな危険な祭り無理だけど、本命のペット祭りを
選ばせるために提案する(捨て案)と思っていた。
しかし、武村の卑怯な策略により可決されてしまう。
どうせ泣きつくだろうとバカにされているのだ。

数少ない味方である役員と共に本気で火の玉祭りを
開催することにした咲本。オラ祭りするぞ!
家族や地域住民と共に祭りを盛り上げる決意を固めるが
既得権益保持に回る武村一味による妨害もあり苦戦。
やりたいからやる。
ファイヤーボールのように燃え上がった想いは
人々の心に伝播していき…。PHP文芸文庫
ラベル:原宏一 小説
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2017年02月15日

小説『噂』荻原浩

噂が人を殺しに駆り立てる。
新ブランドの香水を売り出すために集められた女子高生。
噂の発信地は渋谷。高額報酬により意図的な販売戦略、
口コミにより、都市伝説化した噂により大ヒットした。
「レインマンが現れ、女の子の足首を切るのだが
この香水(ミリエル)をつけていると助かる」
いい噂よりも悪い噂の方が10倍伝わり、
恐怖を交えるとその効果は一層高まる。
まことしやかに囁かれる都市伝説的噂の数々…。
しかし、その不気味な噂は現実の殺人事件になり…。

妻を亡くし、中学生の娘菜摘と暮らす中年刑事の小暮は
優秀な女性警察官名島とチームを組み事件捜査に乗り出す。
被害者である十代の友達、ギャルなどを探る二人は
噂の出所を探る内にムリエルという香水に行き着く。
意図的に広められた噂。これは臭う…。
被害者が年頃の女の子と言うこともあり警戒を強める小暮。
殺人犯の魔の手は自分の娘の友達にも迫っていた。
警察の捜査をあざ笑うかのように連続殺人事件に発展。
拡散した噂は新たな犯行のきっかけになって…。新潮文庫。
ラベル:小説 荻原浩
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2017年02月05日

小説『クリムゾンの迷宮』貴志祐介

目覚めた場所は不気味な深紅色の岩が連なる不思議な世界。
ゼロサムゲームを余儀なくされた藤木たち9人の
悪夢のようなサバイバルゲームの火ぶたが切って落とされた。

藤木芳彦は何者かの手により荒野に立たされていた。
記憶はあいまいではっきり覚えていないのだが、
アルバイトの最終面接に行ったような…。
どうもはっきりしないのだが、冬だというのに暑い。
違和感がぬぐえない。傍らに置かれたゲーム機が告げる。
「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された…」
与えられた情報は限定されたもので、混乱は止まらない。
そんな彼が見た者は人影…。少しでも情報がほしい。
必死で追いかけた相手は大友藍と名乗る女であった。
やはり彼女も記憶があいまいで、ここがどこかは不明。
ゲーム機の導きにより、チェックポイントをめざす二人は
ゲームプレイヤーと合流。7人の男、2人の女は
悪意満々の主催者により、ゲームの趣旨を暗喩的に知らされる。
このゲームは限られたパイを奪い合うゼロサムゲーム。
ゲーム機により、4つのルートが提示された。
それぞれ自分がほしいと思うアイテムを選んでほしいという。
不自由な4択を迫られた9人は、各々の判断で4つのチームに
分かれ、それぞれのルートを歩み出した。
再び合流して、獲得したアイテムを平等に分配し合うという
口約束をして…。しかし…。
角川ホラー文庫
ラベル:小説 貴志祐介
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2017年02月01日

小説『恋愛検定』桂望実

恋愛の神様が人間たちの恋愛力を判定!
恋愛検定に受かると何かと便利。先輩の中には
恋愛検定に合格したことで課長に出世した人も。
上級試験に合格すると、恋愛マスターとして
著書を出しベストセラー作家も夢ではない。
恋愛の神様は対象者の恋愛を6か月観察し合否を判定。
姿を現すときは、自分と対象者(受験者)以外の時間を
とめて会話をするのだが、酒好きで妙に人間臭いのだ。
恋愛の神様は神同士の仕事の中では傍流の末端的役割らしい。
だから仕事や上司に対するグチをする上に、恋愛をしないと
いう神様からしてみたら人間のそれは理解不能らしい。
しかも基本的にヒントを与えることも禁止されていて、
恋愛の相手すら教えてもらえない。
登場する七人の男女はそれぞれの恋愛力に応じた級を
受けることになるのだが…。
恋愛を前向きに肯定的に描き読者を楽しませる要素満載。
祥伝社文庫
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2016年11月13日

小説『百万のマルコ』柳広司

王の中の王フビライ・ハーンに仕え数々の功績をあげた
マルコポーロにより語られる謎かけとその答えが語られるとき
味気ない囚われの身の囚人たちは確かに自由を手に入れた。
退屈を余儀なくされた囚人たちに許されたのは思考することだけ。
マルコが語るとっておきの思考ゲームとは?
巨万の富を王により与えられながら、いつになっても
牢から出ていかないマルコを囚人たちは「ほらふきマルコ」と
呼びながら、いつしかその謎かけを熱望するように。
創元推理文庫
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2016年10月01日

小説『ヤッさん』原宏一

若くしてホームレスになってしまった男タカオを救ったのは
誇り高き食通のホームレスヤッさんであった。
彼の叱咤激励により身体と心を鍛えられたタカオは
銀座を拠点に築地の名店で歓迎され食を振る舞われる
この謎の男に弟子入りし大切なものを教えられていく。
しかし、人を良くすると書く「食」の世界にも仁義を通さず
自己の利益に執着した輩ははびこっていた。
自分によくしてくれた人々に迷惑をかけてしまったタカオは猛省し
一旦は姿をくらます。
温情により、復帰したタカオは仁義を通さぬ輩に対抗しようと
策をめぐらした。そば職人をめざす少女ミサキ、
韋駄天トラック龍次さん、口は悪いが人情家なオモニらに
支えられながら、事件を解決していく人情グルメ小説。双葉文庫
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2016年07月23日

小説『ゼロの焦点』松本清張

新婚旅行を経て、仕事の引継ぎのため出かけて行った
夫鵜原憲一は謎の失踪を遂げる。
夫を心配する妻禎子は、会社の関係者や憲一と懇意にしていた
室田夫妻らと共に憲一の安否を気遣う。
どうも憲一には秘密にしていたことがあるようだ。
その秘密に近づき、真相を知ろうとする者たちが
次々と命を落としていく。一体誰の仕業なのか。
禎子は二枚の写真や非業の死を遂げた者たちの足跡をたよりに
真実に近づいていく。
それは戦後間もない時代が引き起こした悲劇だったのか。
『点と線』に次ぐ著者のミステリー物。
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2016年06月17日

小説『花桃実桃』中島京子

父が死にアパート花桃館の大家になることにした40代の茜は
風変わりな住人たちと騒がしい日々を送る。
いいかげんな不動産屋のじいさんいわく花桃館は出るらしい。
なにしろ隣に墓があり、昭和の香りただようたたずまい。
そう言われてもおかしくない。
だが実際見るまではそんなことよりも家賃を滞納している
住人や、音楽を奏でる住人、他人への依存度が高い住人。
入居が決まったクロアチア人や父の恋人と名乗る住人、
整形が趣味の住人、空き部屋の方がよほど気になる。
もう若くはないがまだ老いてもいない茜は、
彼らと深く関わりながら自分の生き方を模索していく。
かつての同級生尾木くんとの親交も生まれ、
そこから派生した新たな選択。ユーモア溢れる味わい深い作品。
中央文庫
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2016年06月11日

小説『Rのつく月には気をつけよう』石持浅海

大学時代からの飲み仲間である湯浅、長江、熊井の三人は
今でも定期的に飲み会を開催している。
ゲストメンバーの発言から「謎」や「事件」が生まれ
卓抜した頭脳を持つ長江を軸にその真相が解き明かされる
グルメミステリー。食材によって発生した事象や言葉から
隠されていた秘密や登場人物たちの想いを酌みとり
ゲストの恋愛を後押し、または静観する姿を描いている。
最終的に主催者の結婚話もからめて描かれる結末は
読者に素敵な余韻を残してくれる請け合い。祥伝社文庫
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2016年06月04日

小説『はじまりの島』柳広司

イギリス海軍船がガラパゴス諸島に立ち寄り11人が上陸。
その中にはあのダーウィンもいた。
独自の進化、生態系を持つこの島にダーウィンは興奮し
画家である私アールに動植物のスケッチを求める。
船長以下11人は島の生き物たちが人や他の生物に
全く警戒心を持たない事実に気付く。
これじゃ捕獲し放題じゃないか。
料理人の提供した食材は宣教師を怒らせ、人々の食欲を奪う。
そんなちょっとした事件の次の日、宣教師の死体が発見された。

物語はミステリー形式で、当時のダーウィンの発想がいかに
突飛であり、またキリスト教世界が普遍的に蔓延、「常識」として
人々の精神、生活に及んでいたかが物語の鍵となる。
作中、世界のスタンダードはイギリスであり、神が前提、
科学が万能の世界ではない。そんな中現在「常識」とされる
ダーウィンの『種の起源』的発想がいかにキリスト世界に
おいて不都合な真実であるかは想像に難くない。
新しい発想や発見は人々の心に不安や混沌、虚しさを
与えることもある。事件に隠された異常とも言える動機、
裏側を知るとき、時代、場所、生い立ちにより
「価値観」がいかに頼りなく揺るぎやすい脆いものなのか
が問いかけられる。「常識」と「非常識」とは。
創元推理文庫 
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2016年04月10日

小説『何者』朝井リョウ

就活を迎えることになった5人の大学生と
劇団員の道を選ぶことにした者。
お互い「内定」の道を得ようと協力し合う彼らだったが
そこに見え隠れする人間の負の感情。
直面する選考落ち。
まだ何者でもなく、直接的な責任を負っていない彼らが
感情をぶつけ合い、現実の自分と向き合う。
誰もが他人を批評することはうまくても
自分を評価することはヘタという事実を鋭くえぐる。
新潮社
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2016年01月09日

小説『PK』伊坂幸太郎

些細な言動のきっかけによってドミノ式に起こる事象を
着眼点に描かれたSF小説。
なぜ絶不調だった日本代表ストライカーはPKを決められたのか?
奇跡的に助けられたこどもがたどった数奇な運命は?
握手することで6秒間だけ時間泥棒になれたら?
自分ひとりの命によって人類が救えたら死を選択できるか?

難題に直面した際に発揮されるのは勇気なのか?
それは人の意志なのか?それとも人智を超えた神のような
存在によるものなのか?とにかく賽は投げられた。
現在が必然だとしても、そこに至る過程には無数の蓋然が
あったはず。悲しい事件の裏側にもドラマがあり、
防げたこともあったかもしれない。しかし反対に
誰も知らない者の活躍によって防がれたこともあったかも。
無数の意志によって世の中の形が決まる。講談社
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2015年12月19日

小説『明日この手を放しても』桂望美

後天性の眼の病気により19歳で視力を失った凛子。
裁判官めざして勉強に励んでいた完璧主義で潔癖症の
彼女だったが目の前が真っ暗になってしまった。
無遠慮でがさつな性格が災いするのか恋人はできるが
なぜかいつもフラれてしまうその兄真司。
性格も異なり決して仲の良くない兄妹であったが、
不幸な事故で母が亡くなり
漫画家だった父も謎の失踪を遂げてしまう。

父の作品は視覚障碍者のヒロインが主人公であり、
凛子がストーリーを考え、父が作画をしていた。
この作品は大切にしたい。兄真司と共に凛子は
新しい漫画家と共にこの作品を守り、父の帰りを待つ。
ちゃらんぽらんで自分の努力のなさを社会のせいにする
あまちゃんだった兄は成長を遂げ、凛子も作品に愛情を
注ぎ込むことで前向きに歩みだす。
いつしか二人は強い絆で結ばれていく。

これはよくあるきょうだい間の恋愛感情を描いた作品ではない。
家族に限らず、人の距離感というのは微妙で難しいものだ。
同時にまともそうに見えても人それぞれ、裏の顔というか
どこかズレた感覚を持ち合わせていて驚かされたり…。
真司は結構登場人物たちに振り回されているなぁ。 新潮文庫
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2015年10月07日

小説『愛しの座敷わらし』荻原浩

冴えない高橋一家が、引っ越しを機に座敷わらしや
新天地の人々と出会い、忘れていた大切なことに気付く。
5人の家族は6人になれるのか?

東京に住んでいる高橋一家。
何事も一生懸命だが、家族との関係も仕事も空回りの父晃一。
転勤ばかりの会社によって振り回され不満ばかりの母史子。
中学でいじめに遭っている梓美。
そしてぜんそく持ちで引っ込み思案の弟智也。
認知症がはじまったばぁば…。
どこにでもいそうな冴えない高橋一家は
父の転勤を機に田舎の420坪の大きな一軒家に住むことに。
もちろん不便だし、家の中は所々がたがあるし、
何よりこの家には「座敷わらし」がいた。
智也、ばぁばを筆頭に徐々に姿を捉えるようになるその
不思議な存在は、悲しい過去を背負っていた。
最初は得体のしれない存在と怖がっていた一家だったが
その頼りない存在に愛しさすら抱くようになる。
彼らは新しい出会いを通して、家族の大切さ、
人との絆を結び、しあわせをつかんでいく。
わかりやすいストーリーであり、感情移入しやすい。

朝日新聞出版 上・下巻
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2015年07月29日

小説【世界の終わり、あるいは始まり】歌野晶午

連続誘拐殺人事件の犯人は息子の雄介ではないか?
富樫修は小学六年生でありながら妙に大人びた雄介が
世間をにぎわせる残虐な事件と関わりがあると疑う。
息子を信じたい。だが調べれば調べるほど、
不都合な真実が見えてきてしまう。
身近に被害者がいても、それが実の子供でなければ
どこか他人事として捉えていた主人公であった。
自分の子供が殺人犯の毒牙にかかるとも思えない。
冷血漢と言われようと、楽観的と思われようと
わが身にふりかかなければそんなものかもしれない。
だがよりにもよって自分のこどもが犯人だなんて。
しあわせな家庭はみせかけの虚像だったのか?
ほころびはいつからはじまっていたのか?
警察の捜査はどこまで進んでいるのか?
絶望的な状況に対する打開策は?
事件が発覚したら、一体どんな事態に陥るのか?
そこに希望はあるのか?
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2015年07月05日

小説【銀行仕置人】池井戸潤

500億円融資が焦げ付き、その責任を押しつけられ
黒部に銀行員としての出世の道は閉ざされた。
人事部付の新しい職場は座敷牢と揶揄される左遷先。
最速でエリートコースをたどっていたのに、
詰腹を切らされた形の彼は下っ端にもなめられ
苦汁の日々を送る羽目に。
人事部長によって彼に与えられたのは、
銀行員たち身内が行っている不正を暴くことだった。
行く先々で犯罪者どもが登場し、かつての出世頭を罵る。
しかし、黒部は数少ない味方と共に身内の恥をあばき
迷惑をかけた関係者たちに頭を下げてまわる。
彼の熱意は人の心を動かし、
自分を罠にはめてご満悦な奴らに肉薄していく。
だがその行為はある者にとっては自分の破滅となるので
妨害工作を受けることもしばしば。
エリートでありながらやたら打たれ強い黒部は
銀行員としての矜持を胸に困難に立ち向かっていく。
ハードボイルド路線。「花咲舞が黙ってない」原作。
でも花咲舞は出てこない。双葉文庫。
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2015年07月01日

小説【有頂天家族】森見登美彦

京都を舞台に狸の名門下鴨家とライバルのヨゴレ
夷川家が火花を散らす。
かつて大天狗と恐れられていたが、弟子の弁天に
骨抜きにされた赤玉先生も巻き込んで大騒動。
笑いあり、涙ありの毛玉ファンタジー。

父は偉大だった。狸の大親分であった。
残念ながら狸鍋にされ喰われてしまった。
彼には4人の息子があった。
まじめ、のんき、阿呆、気弱の4人は残念な
息子たちと言われたが母は笑い飛ばした。
息子たちを信じていたからだ。母もまた偉大だった。

新たな狸の大親分を決めようと下鴨家は長男が
夷川家は家長がそれぞれ名乗りを上げた。
親戚でありながら、過去の因縁から仲の悪い両家。
特に夷川家は何かと底意地の悪い態度をとる。
阿呆の三男矢三郎と夷川家の娘は許嫁でありながら
夷川家によって一方的に結婚を破談された。
しかし矢三郎はそのことを気にしていない。
実力伯仲と言われる大親分の取り決めとなると
ヨゴレの夷川家が何もしないわけがない。
下鴨家が大ピンチに陥る。幻冬舎文庫
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2015年06月23日

小説【山越くんの貧乏叙事詩】芦原すなお

東京の大学にやってきた四国出身ののんきな著者と
美青年石上、おっさんくさい巽らが織り成す
お気楽大学生活を描く。
学園闘争が盛んだった60年代後半、山越くんは
早稲田大学文学部に入るも、生来のお気楽な性格から
賭け麻雀と居酒屋通いに明け暮れる。
モラトリアムを最大限利用し、
仕送りは届いたその日に使ってしまう。
いつも素寒貧だが、物事を真剣に考えない性質なので
同様にいつもお金に困っている石上ら仲間と共に
友のサイフを期待している。
軽佻浮薄を絵にかいたような主人公の飄々とした
姿をおもしろおかしくつづっている。

ポプラ文庫
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2015年06月16日

小説【月の扉】石持浅海

沖縄県でハイジャックが発生。
飛行機は飛び立てず空港にとどまった。
三人の犯行でありながら、幼児を人質にとったことで
240人の人質とスタッフたちは手出しができない。
彼らの要求は「時間内に師匠を連れてくること」だった。
三人が盲目的に信じる師匠とはカリスマ性を持つ
無欲な男石嶺。沖縄で行われる「キャンプ」に
参加すると、自閉症などで苦しんでいたこどもたちが
元気になり社会復帰する。
趣味で行っているので一切金銭を要求しないが、
あやしげな新興宗教と間違われることも多い。
石嶺は警察関係者も首をかしげる誘拐事件の犯人として
数日前から那覇警察署に拘留されている。

緊迫する旅客機内において、
トイレの中で死体が発見される。
身に覚えのない三人は、居合わせた男を探偵役に任命。
「犯人探し」をしながら、当初の目的を果たそうと
極限の状況の中でドラマを演じることに。

光文社文庫
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2015年06月12日

小説【月と蟹】道雄秀介

海辺の町に住む少年慎一は祖父と母と暮らしている。
父は癌となり、カニの形の癌細胞に侵され命を落とした。
同級生の美少女鳴海は赤ん坊の頃母を亡くしていた。
慎一の父が起こした事故が原因であり、そのことから
教室において彼に話しかける者はほとんどいない。
慎一同様にクラスでともだちがいない春也、
そしてなぜか自分に話しかけてくる鳴海のみ。
慎一は唯一無二の友達春也と共に海岸に出かけ、
ペットボトルを使ってヤドカリを獲る。
ヤドカリをヤドカミと呼び願いを込めた儀式を行う。
はじめはたいしたことを願っていなかった。
お金がほしいとかだった。
でもいつしかその儀式にはドロドロとした想いが
こもるようになっていた。

母が内緒で男と会っているらしい。
春也はどうも父親から虐待を受けているようだ。
好意を持つ鳴海。でも春也を見つめる鳴海。

無邪気に遊びを楽しめた少年時代は終焉を迎え
いろいろなことに気付きはじめてしまった。
そのことで葛藤し、激しくも切ない衝動に駆られる。
腹の底に溜められていった情念は噴出し
いつしかズルくなってしまった少年は
儀式に自らの想いを託した。直木賞受賞作。
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2015年05月31日

小説『扉は閉ざされたまま』石持浅海

伏見は新山を殺害することにした。
コロンボ形式で描かれる推理小説。
犯人は伏見、探偵役として
伏見がかつて本気で愛しながら女性優佳が担う。
なぜ犯人伏見は新山を殺害したのか。
動機は何だったのか。
そして、なぜ部屋の扉を閉ざしたのか。
そこに一体どんな意図があったのか。
伏見と優佳。二人の頭脳の対決と、その勝者。
そして動機を知るとき納得の会心作と気付く。

歴史ある世田谷の豪邸ペンションにやってきた七人。
大学の同窓会のメンバーとその関係者である彼らは
休憩を挟み夕食の鍋をつつき団らんするはずだった。
しかし、新山がやってこない。
犯人である伏見はほくそ笑む。
完璧な密室ができた。扉は閉ざされたままだ。
不自然な言動をとらないように気をつけなければ。
なぜならここにはあの優佳がいる。
下手なことを言えば自分の計画が破たんする。
うまく誘導しなくては…。
伏見はさりげなく会話をリード。本心を隠して。
完璧と思われた計画であったが、
思わぬほころびがあり。最後に本意を遂げるのは…

祥伝社文庫
 
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2015年05月17日

小説『八月の魔法使い』石持浅海

お盆に行われる役員会議は緩い内容になるはずだった。
しかし、「工場事故報告書」が資料に紛れ込んでいた。
そんな報告は受けていないと常務は叫ぶが
工場事故を把握していなければそれはそれで大問題だ。
未来の社長(副社長)の座を狙う役員同士は
これを好機と捉え、責任追及に紛糾する。
社長が参加するこの会議での失敗・失態は
会社での失脚を意味する。
会議をプレゼンしていた平社員美雪は
こんな資料なかったはずと首を傾げ、
上司である大木課長の仕業だと気付く。
最悪自分も責任問題に発展するかもしれない。
美雪は職場の恋人小林拓真にSOSを送る。

その頃小林も異常事態を察知していた。
万年ヒラ係長であり、部下からもナメられている
松本係長が嫌われ者の部長に何かをつきつけていた。
顔色が悪くなる部長。妙に迫力がある係長が
持っていた資料を見る羽目になった小林が見たものは。
「工場事故報告書」の表紙であった。
あってはいけないものを見てしまった。
この事故は確実に報告されていない危険な代物だ。
これは危ない。さわらぬ神にたたりなし。
だが小林は結局この最悪の案件に立ち向かうことになる。

かつて会社の方針を決め、魔法使いのように采配を振るった
伝説の松本係長を論破しなければならない。
小林が奮起する中、役員会議では出世争いに目がくらんだ
者たちによって醜い争いが展開される。
なぜ松本係長と大木課長はこんな自爆テロ的行為に
走ったのか。そこには語るも涙の謎があった。
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2015年05月05日

小説【死神の浮力】伊坂幸太郎

小学生の娘を殺された夫婦の前に現れたのは
風変わりな死神だった。

サイコパス。良心を持たず、平気で嘘をつき、
他人を傷つけることに罪悪感を持たない
ある意味最強最悪の存在である。
知り合いである本城により愛娘を殺害された
山野辺夫妻は娘のかたき討ちをしようと
本城を殺すことを模索し計画を立てていた。
そんな折、千葉と名乗る不思議な男が現れた。
被害者でありながら悪意すら感じるマスコミ攻勢により
疲弊していた山野辺。
だが本城の居場所を知っているという何の面識もない
この男と共に打倒本城をめざして行動を共にする。
ちなみに千葉は、一週間後に死ぬ者の前に現れ
生かすか殺すかを決める音楽好きな死神であった。

山野辺は他者を制圧し絶望させることをいきがいとする
本城によってワナにかけられ、常に後手に回り大苦戦。
隣で平然とわけのわからないことばかり言っている
千葉に励まされたり、腹を立てたりしながら敵を追う。
山野辺夫妻が本懐を遂げることはできるのか。
そして、千葉の出す答えは。

『死神の精度』の続編 文藝春秋
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2015年05月03日

小説【幻夜】東野圭吾

阪神淡路大震災を経て生まれかわった魔性の女。
彼女の通る所、死屍累々。
まさに魔女の宅急便。不幸宅配便。

人の弱さにつけこむのに長けた悪魔がささやく。
美貌とコールドリーディングによって彼女に魅了され
魂を掌握された男により不都合な真実は隠蔽される。

犠牲者によってできた無限へと続く階段を登る魔女。
己の美のために、人々の人生を踏みにじり
悪を完遂する魑魅魍魎は野望を完遂するのか?
「白夜行」との決定的な違いは作品の主人公の魅力。
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2015年04月11日

小説【龍神の雨】道尾秀介

雨が龍を連れてきて、人の心を惑わせて…。
家族を亡くした未成年の兄妹、兄弟。
血の繋がらない家族と同居するそれぞれの主人公たちが
直面する事件を臨場感たっぷりに描いたミステリー。
龍という名の悪魔は人の心に棲んでおり
ときに人を凶行に駆り立て、
家族を信じることさえも奪っていく。
悲しみや痛みを雨が洗い流してくれれば
とかくこの世は住みやすいのに。
凶行のきっかけは雨だった。

新潮社
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2015年04月02日

小説【下町ロケット】池井戸潤

佃製作所は高品質の技術力を持つ中小企業。
ロケットを飛ばす宇宙開発機構の研究員だった
佃が社長を務めるこの会社が危機を迎える。
主要取引先が一方的な契約の打ち切りを通達、
長年つきあいのあった銀行は業績の悪化を理由に
傘(融資)を引きあげる露骨な態度をとる。
銀行から出向してきた殿村と共に憤る佃だったが
更に追い打ちをかけるような事態が起こる。

業界内の鼻つまみ者ナカシマ工業が佃製作所は
自社の特許を侵害していると裁判を起こすという。
むしろ大手のナカシマ工業の方が猿真似して
特許侵害をしているのが事実。
だが、優秀な弁護士を抱え法廷闘争に持ち込み
勝利と権利を勝ち取ることを得意とする
この悪徳会社によって佃製作所は大ピンチ。
下手に裁判が長引けば風評被害だけで
取引先をなくし、倒産の憂き目を見るのは明らか。
ピンチに陥った佃は、別れた妻の伝手で優秀な
弁護士に窮地を任せることにした。

また、特許という面で業界の雄である帝国重工が
佃製作所と話し合いたいという連絡が入る。

モノづくりに必要不可欠なプライド、品質、情熱。
そして、夢と現実と直面し、たくさんのピンチを
迎えながら、迷い、考え、たくさんの仲間と共に
巻き起こる問題と正面から向き合っていく。
まさにピンチの時こそその人間の真価が問われる。

ロケットを飛ばすのは莫大な資本や燃料もあるけど
なにより人の気概をおいて他にない。
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2015年03月08日

小説『格闘する者にまる』三浦しをん

続けてきたことは漫画を読むことだけ。

毎日気楽に生きてきた女子大生可南子であったが

遂に就職戦線が訪れた。氷河期まっただ中。

つぶしの利かない文学部の可南子の志望は

毎日漫画を読めそうな出版業界だ。

マンガに対するうんちく、知識は並じゃない。

熱意もある。

でも人気が高く志望者も多い出版業界は狭き門。

態度の悪い面接官にイラつかされ、しかも

結果は連戦連敗。内定が遠い…。


気が合うだけあってどこか呑気な友だち、

家庭をかえりみない政治家の父親、義理の母、

優秀な弟。派生する父の後継者問題。

姉と弟どちらかを後継者にとしゃしゃり出てくる親族。

えらく年の離れた脚フェチ書道家との不思議な恋。


想像した以上に騒がしい毎日と青春が彼女を待っていた。

可南子はこれらと格闘しながら何かを思い、

何を感じ、何を得て、何を失うのか?


デビュー作にして才能を魅せつける。
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2014年12月27日

小説『Run!Run!Run!』桂望実

中学・高校と区間新を出し続け負け知らずの

長距離ランナー岡崎優は大学陸上部に入部。

エゴイズムを貫き、長距離ランナーとして

遺伝子的にも大変恵まれた肉体を持つと証明された優は

自らの為に動く育成チームを大学側に要求する。

箱根駅伝は通過点に過ぎず、目標はオリンピックに出て

金メダルを取ることである。

わがまま放題、言動は最低の彼は周囲の反感を買うが

ある日医学部に通う非常に優秀な兄が突然死を遂げた。

競馬場で兄が言っていた意味深な言葉。

また、兄に偏愛を注いでいた母が漏らした発言から

彼は疑心暗鬼にかられていく。

自分とそして兄は遺伝子操作によって

意図的に恵まれた才能を持って生まれてきた

存在なのかもしれない。

父は母が兄の死によっておかしくなったと言うが

優の中での不安は募るばかり。

なぜなら親戚の中にそのような事例に

精通した者がいたからだ。

もし仮に自分がそんなあってはならない行為に

よって生まれた存在であったら、

自分の記録ははたまた自分という存在を

世間は認めてくれるのであろうか。


深い葛藤、誰にも打ち明けられぬ日々を送る優は

性格おおらかな岩本らとの関わりの中で

どのように考え、どのような答えを出すのか?


文春文庫
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2014年12月13日

小説『県庁おもてなし課』有川浩

高知県にパンダを呼ぼう!
二十数年前にある県職員が提示し、実現すれば
大きな観光の目玉になること請け合いの企画だった。
しかし、事なかれ主義のお役所のこと。
熱心なその男の呼びかけは受け入れられず、
官職に追い込まれた男は失意のまま県庁を去る。

そして時は流れた…。

高知県庁に「おもてなし課」が生まれた。
若手職員掛水は高知振興のために著名人たちを
観光特使に依頼し、名刺を配ってもらうように
呼びかける。しかし、そこはお役所仕事。
民間の感覚を持たない彼らはことごとくチャンスを
失っていく。そんな中、地元出身の人気作家である
吉門という男だけは親身になってこのお役所仕事に
痛快なまでのダメ出しをしてくる。
吉門に触発された掛水は彼のアドバイスを受けながら
このダメダメなおもてなし課の意識改革に乗り出す。
たまたまアルバイトとして働いていた優秀な多紀を
コンビに据え、吉門が推挙するある男に会いに行く。
それはかつてパンダ誘致論を唱えた奇抜な男だった。
吉門とその男には浅くない繋がりがあった。

高知の最大の売りである自然を武器に攻勢をかける
ことにした同志たちは、ときに苦く渋い想いをしながら
県振興、観光促進をめざして歩き出していく。

地方を舞台に仕事と恋をからめた人間ドラマを痛快に描く。

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2014年10月05日

小説『デパートへ行こう!』真保裕一

創業100周年を迎える老舗デパート。

その深夜に集まった人々がそれぞれの思惑を胸に動く。

そこには強い想いや悲哀。願いや痛みがあった。


リストラされ、家族を失った男。

贈収賄事件の犯人のこども。

自分を裏切った男に対して仕返しを企てる女性店員。

暴力団と癒着してしまった元警察官。

このデパートの社長。

そして、このデパートを守ることを誇りに生きる

伝説の守衛とその志を継がんとする後輩。

己の利益のために蠢く輩…。


ある男にとって、母と出かけるデパートは

幸せの象徴だった。

ある男にとって、そのデパートは人生そのものだった。

そこには待ち続けている幸せの形があった。


彼ら、そして彼女らによって

激動の一日を迎えることになった深夜のデパート。

様々な人間ドラマが展開され感動のラストが胸を打つ。


講談社

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2010年09月08日

『ルパンの消息』横山秀夫

時効ぎりぎりの自殺事件は他殺だった。

高校で起こった女性教師の墜落死。

そのキーパーソンとなるのは、

事件当時不良高校生だった三人組。

彼らは期末テストを盗み取るという作戦

「ルパン作戦」を決行していた。

捜査本部は、本庁からの信頼度の高い

タレコミによって、スピード捜査に乗り出す。

また、その事件の背景には三億円事件も

絡んでいた。三人が屯する喫茶店ルパンの

マスターは、その経歴や人物像から限りなく

犯人像に近い人間。


捜査本部によって重要参考人としてやってきた

三人は一様に違う人生を歩み様変わりしていた。


峰フジ子を連想させる美人教師が殺された夜

彼らはテストを盗み出そうと学校に侵入して

いたのだ。彼らが青春を謳歌した15年前と

時効寸前に何とか真犯人を捕まえんと

四苦八苦する捜査本部とを交互に描き、

真相をあぶりだしていく。


光文社文庫 430ページ。
ルパンの消息 (光文社文庫)

ルパンの消息 (光文社文庫)

  • 作者: 横山 秀夫
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/04/09
  • メディア: 文庫



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2010年08月24日

小説『水の中のふたつの月』乃南アサ

亜理子はスケジュールを埋めたがり「忙しい」が

口癖のOL。恋人は二人つくり、一週間先まで

スケジュールを埋め尽くし、ありのように

ちょこまかと動き回る。意外としたたか。

そんな亜理子は、少女時代に仲良しトリオだった

恵美と再会した。それは望まれぬ邂逅。

まさに運命のいたずらだった。


亜理子はある事件を機に、少女時代の引っ越しを

早め、二人から離れた。

事件によって恵美と梨紗も話す機会は少なくなり

恵美が私立中学に行ったことで疎遠になった。

しかしそれは、ある意味でよかったのかもしれぬ。

だが再び大人になった三人は会うことになった。


恵美は、トリオだったもう一人の梨紗も誘い

三人で会うことを一方的に決めてしまった。

亜理子は不安だった。様変わりしてしまった

恵美は誰もがわかるような嘘を吐きまわる

虚言癖になっていた。

かつての約束、三人の誓いを破り、秘密を

しゃべってしまうかもしれない。

そこには、なにかしらの企みがあるのではないか。


一見大人しそうに見えて、その反面で男をだまし

高級マンションを手に入れていた梨紗は潔癖症。

すぐに手を洗わなくてはいられない。

亜理子と共に恵美に不審を抱きながらも

三人は何かと連絡をとり、交友が復活。


そこには一人の男の存在が大きい。

恵美の恋人であり、テレビ局でアルバイトをし

バンドに明け暮れる軽佻浮薄のバカ男哲士。

それはかつて夢見がちで、占いやこっくりさん、

魔法などが大好きだった少女時代に三人が

好きだった乾君を連想させる弱弱しさを持つ男。

乾君は「神かくし」に遭い、ある日突然会えなく

なってしまったのだ。

三人は、不当ないじめに遭う乾君と仲良くなり

彼を助けようとがんばっていたのに……。


一人の軽薄な男の浮気心によって、

三人は切れることなく密接な結びつきを強める。


現代と過去を描きながら、三人がそれぞれ持つ

性癖(クセ)はやはり少女時代が落とした

暗い影なのか?そして三人を待ちうける運命は?


角川文庫 350ページ。

水の中のふたつの月 (角川文庫)

水の中のふたつの月 (角川文庫)

  • 作者: 乃南 アサ
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1996/09
  • メディア: 文庫



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2010年06月01日

小説『タッチ』ダニエル・キイス

放射能漏れによって、バーニーとカレン夫妻が

被る一連の騒動と葛藤を描いた闘争劇。


結婚4年目。芸術家であり気難し屋のバーニーと

夢見がちな所のあるカレン夫妻は、

こどもがほしいのだが授からず不妊に悩んでいた。


元々バーニーは学生時代、カレンの姉である

マイラに首ったけだったのだが、

マイラは突然助教授と駆け落ちし姿をくらませた。

マイラの妹だったカレンはバーニーに好意を抱き

彼らは結婚。そういった背景や不妊もあり

二人の関係はぎくしゃくとしたものに。


そんなある日のこと。

バーニーは自分が勤めている会社で放射能事故が

起こったことを知る。

そして、自動車をいっしょに乗っていた同僚が

被爆し、自分と妻カレンもその被害者であることを

知らされる。


市民をパニックにしたくない(もちろん詭弁)

という配慮から口外無用を命じられ、

彼らが触れた場所は放射能ちりが拡散している

ということで市内に同行を求められる。

被害者でありながら、投げつけられる市民からの

心ない言葉に傷つく二人。


ささくれだっていくカレンとバーニーは

身体だけでなく精神的に蝕まれていく二人。


会社から提示された非良心的な損害賠償。

そして本来被害者であるはずの二人が

市民から向けられる非人道的な扱いと暴力。

圧倒的悪意。


そんな折、カレンは妊娠したことを知る。

複雑な想いを抱きながら、この子を産むべきか

どうかに葛藤するカレン。

味方が主治医と近所の老夫婦くらいしかいない。

彼らの両親でさえも、何の助けにもならない。

そんな過酷な状況の中で、暴力的な衝動にかられる 

バーニーに相談できずに悩むカレン。


そして、宗教に傾倒したマイラが登場。


自分の怒りを芸術にぶつけるかのように

没頭していくバーニー。母性に目覚め、

命を育てていこうとするカレン。

失ったかに思われた夫婦の愛情が蘇生するまでの

軌跡を「悪夢」や回想を用いながら、

グロテスクに鋭く描く。


被爆や放射能事故、放射能盗難などの事象が

起こった際に政府や会社がとる一般的な選択は

ほぼ「隠蔽」及び「公表の先延ばし」である。

本書はその非人道的・無責任な事実を鋭く描く。

角川書房。 約300ページ。 秋津和子訳

タッチ

タッチ

  • 作者: ダニエル キイス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 単行本



ラベル:小説
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2010年03月02日

小説「サウスバウンド」奥田英朗

上原二郎の父は元過激派で、役所の年金課に

「税金など払わん!」と豪語したり、

「学校など行かなくていい」「国などいらん」

と言い切る型破りなやっかいさんだ。


父上原一郎は、

185cmの恵まれた巨漢とでかい声。

理路整然と議論をふっかける父によって

次々と巻き起こる問題。

仕事もせずに、熱心に何か書いたり、

昔の仲間といっしょに何かあやしげなことを

している父。主人公じゃなくても

叫びそうになる。頭を抱えてしまう。


小学校六年生の僕こと一郎や妹、母は

そんな父に翻弄されながらそれでもなんとか

中野で生活をしていた。


でも二郎は不良に目をつけられてしまい、

結局その輩と闘わなくてはいけなくなる。

そして、未だに公安からマークされ続ける父。


こどもの世界でも、大人の世界でも存在する

闘いと葛藤。妥協せずに生きることの大切さと

大変さ、家族のあり方や生き方を投げかける。

作者お得意のユーモアも交えながら描かれ、

さっぱりとした読後感でありおすすめだ。


約530ページ。角川書店。
サウス・バウンド

サウス・バウンド

  • 作者: 奥田 英朗
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2005/06/30
  • メディア: 単行本



ラベル:小説 奥田英朗
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2008年12月25日

小説「千里眼」松岡圭祐


人の心が手にとるようにわかる「千里眼」と言われる超然とした

カウンセラー友里佐知子。彼女を敬愛する防衛大学出身のエリートで

元パイロットの岬美由紀は、友里と共に日本屈指のカウンセラー

治療を誇る東京晴海医科大附属病院において、人々の心に沿った

治療を心掛けていた。


そんな二人の元に、国防の危機に瀕したということで美由紀の元上司

だった仙道からお呼びがかかる。

「首相官邸」に向けてミサイルの標準があわされた。

その危機を「千里眼」の力で救ってほしいというのだ。


仙道と美由紀には確執があり難色を示したものの、

結局ふたりはこの依頼に協力。

これを阻止することに成功したのだが、

テロリストカルト教団「恒星天球教」の「宣戦布告」によって、

新たな恐怖が展開されていく。

また、美由紀が出会った少女宮本えりは、「催眠」の力によって

マインドコントロールされているような奇怪な行動をとる。

美由紀はえりを救済しようと立ち上がるのだが、恒星天球教の

暗躍と幾多の巧妙な罠が仕掛けられていた。


臨床心理士の著者によるスケールの大きな渾身のシリーズ第一弾。

催眠やマインドコントロールをはじめたとした「心の支配」が

テーマだが、オカルトな内容に留まらない快作である。

ハードカバーで430ページあり、読み応え十分。



〜本文より抜粋〜

「目は口ほどにものをいう」

なにかを思いうかべたとき、

人間は自分でも気づかないうちに視線がおどるの。


左上に視線を向けたときには、

どこかで見たことがある情景を想像してる。


右上に視線を向けたときには、逆にこれまでいちども見たことの

ないものを思い浮かべているの。


左下に向いたときには、音とか声とかを思い出そうとしているときで


右下に向いたときには、暑いとか寒いとか、

あるいはなにかに触ったとか、身体で感じることを思いうかべて

いるときなの。
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2008年11月01日

小説「禿鷹の夜」逢坂剛




ヤクザすらも恐れる冷血漢ハゲタカ−禿富鷹秋(とくとみたかあき)

は、はぐれモノの警察官。残酷なまでの暴力を駆使し、ヤクザに金を

たかる。強者、弱者の別なく、襲い掛かる凶暴な最悪の刑事。


任侠ヤクザ渋六興業の親分をひょんなことから助けたハゲタカは、

彼らとなあなあの関係を築きながら、大金を得る。正義のかけらも

ない情け容赦のないハゲタカだが、恋人だけには少年的な素顔を

のぞかせる。


しかし、その恋人に渋六興業と対立する南米マフィアから送られた

殺人鬼の魔の手が迫り……。読みやすいハードボイルド作品。

360ページ。
ラベル:小説 読書
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2008年10月24日

小説「夏の災厄」篠田節子





平和な街に突如起こった原因不明の奇病によって巻き起こった

バイオハザード。伝染病である奇病の感染防止と原因を究明しよう

と立ち上がった市の保健センター職員たちだったが、

行政システムの弊害によって、有効な対策が立てられない。

同時に、権利だけを主張する無責任な住民や崩壊した地域社会の

希薄な人間関係も加わって、巻き起こる悲劇の数々。

そういったごたごたの中で、「日本脳炎」の新型ウイルスは

着実に街の人々の身体と心を蝕んでいき、パニックや自殺、

暴力的な衝動を誘発し、更なる悲劇を生んでいく。


設定は、埼玉県の昭川市、都心から50キロ、人口は86000人。

農林業が盛んな、ベットタウンという架空の市だ。


物語で特に印象的なのは、日本脳炎を媒介するある生物を駆除

しようと農薬散布が行われるのだが、地域の人間関係の希薄化、

核家族化によって、情報が行き届かずに、こどもがモロに農薬を受け

絶命する描写である。あらかじめ、地域には放送で農薬散布を

する放送や、回覧や散布する旨の書類が伝達され、同時に

悲劇が起こる数分前におばあさんがこどもたちに家に入るように

促す場面がある。だが、「知らない人の意見は聞かないように」

という親から教えられたこどもたちは、それを無視してしまう。

そこには、地域の相互扶助(助け合い)をしてこなかった人間関係の

希薄化が如実に現われている。


「漠然としたものに対する恐怖」によるパニックなどによって、

正常な判断が取れずに起こる異常な行動を読むにつけ、本当に怖い

のはウイルスもそうだが、人間の心なんだとひとりごちた。585ページ
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2008年09月26日

小説「奪取」真保裕一

借金返済のために「偽札作り」に手を出した軽犯罪者の青年たちの

長きに亘るヤクザとの戦いを描いたサスペンス。上下巻で950ページ。

日本推理協会賞と山本周五郎賞をダブル受賞した、涙あり感動ありの

物語。最後に大金を掴むのは誰だ?



悪友雅人が、ヤクザの街金に騙されて、膨らんだ借金は1000万円。

雅人とともに、ヤクの運び屋に仕立てられそうなピンチを乗り切る

ために「偽札作り」を思いつく。

自動販売機や、駐車場において軽犯罪を行い小銭を稼いでいた

主人公の道郎は、雅人と協力してキャッシュディスペンサーの

裏をつく。「人の目には偽札だと一目瞭然でも、機械を騙せばいい」

という独自のアイディアで、人生の危機をどうにか乗り切れそう

だと目星がついたのだが……。

道郎は、「本物の偽札づくり」をめざしてチームを作り、

どうせなら金の取り扱いのプロである銀行員を騙したいという

ロマン?溢れる夢を追い求めるようになる。

「偽札作りは割に合わない」という世間の言葉通りに、苦労を

重ねる道郎たちの長きに亘る戦いがはじまる。



(光は)七つの虹の色からできてる。

相手、小道具、時間、場所、手順、仲間、そして、自分。

その七つの要素の重なり具合を見分けられるやつだけが、

成功を握るんだ。

何かひとつかけても、光は満足にガラスの中を通り抜けやしねえ。

〜本文より抜粋〜
ラベル:読書 小説
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2008年09月19日

小説「雷桜」宇江佐真理


雷雨の日に連れ去られた庄屋の娘遊は、十五年ぶりに女傑の「狼娘」

として機関を果たし、数奇な運命をたどる。370ページ。


紀州の山奥の瀬田村の庄屋助左衛門は、村人から慕われる好人物

だったが隣の藩の逆恨みを受け、雷雨の日に赤ん坊だった遊を

連れ去られる。地元の者も恐れて近づかない山で生きているのでは

ないか?という一縷の望みを信じ、一家は日々の生活を送る。


遊は生きていると信じる次男の助次郎は、ある日馬に跨った不思議な

少年に出会う。少年は、誰もが恐れて近づかない山道を助次郎と

ともに名馬で駆け抜ける。助次郎は、あれは少年ではなく妹の遊

だったのではないか……と考える。


助次郎は後に、御三卿清水家の中臣として百姓としては異例の出世を

遂げるのだが、清水家の当主である斉道(将軍家斉の息子)は、

心の病を抱えた癇癪持ちの乱暴狼藉を繰り返す絵に書いたような

暴君であった。助次郎は、斉道の家臣である榎戸の手助けになれば

と思い、心を砕き、いつしか斉道と心を通わせるようになる。

そんな折、ついに遊が帰還を果たし、斉道は助次郎から聞いていた

遊の噂を知り、彼の母親と同じ名前を持つ遊に会ってみたいと

言い出すのだった。


雷桜…らいおう

遊が生まれた頃に、イチョウの樹に雷が落ち、

桜が生えてきたことに由来する不思議な桜である。
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2008年09月16日

小説「宿命」東野圭吾




敵対する二人の男の宿命の対決と、二人の間を繋ぐ一人の女の物語。


医者の道と最愛の女美佐子との恋を諦め、警察官になった勇作は、

殺人事件の発生によって永遠のライバルと対面。ライバルは、

財閥の御曹司であり、美佐子と結婚し、同時に医者になっていた。

貧しい家に育ったが故に、苦闘を強いられ夢をあきらめた主人公は、

ライバルを容疑者として疑い、事件の真相に迫るのだが、

そこには宿命としか言えない恐るべき「秘密」が隠されていた。


幼少の頃に赤レンガの建物で、すでに敵対していた二人の宿命の対決

はまさに皮肉で、運命的で、感動的な結末を迎える。365ページ。
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2008年08月25日

小説「いつかパラソルの下で」森絵都


筋金入りの頑固親父も、自分らしさの檻の中でもがく人間だった。


異常なまでに厳格、異性との付き合いに過剰に反応し、こどもたちに

干渉し続けた父が亡くなった。20歳のときに家を飛び出し、

その日暮らしの生活をしていた私野々は、5年ぶりに家に戻り、

同様に家を飛び出したちゃらんぽらんな兄や、父の影響をもろに

受けた妹といっしょに、父がどうしてあんなに厳格になったのかを

考える。そんな折、どうやら父が不倫をしていたということがわかり

私たち兄妹は裏切られたような気持ちにとらわれる。

あれだけ私たちに潔癖を強いり、自分も潔癖な生活を貫いていた

父の過去に見え隠れする「暗い血」の秘密とは何なのか?



父を知ることで、自分たちが父の呪縛から逃れられるかもしれないと

私たちは父が生まれ育ち、その後二度と父が訪れることがなかった

佐渡島にやってくる。そして、私たち同様に父も

あるがままの心で生きようともがく一人の人間にすぎず、

また私自信も、自分自信と向き合って生きていかなくちゃ

いけないということだった。「名もなき詩」を連想する小説。

240ページ。
ラベル:森絵都 読書 小説
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2008年08月21日

小説「憑神 つきがみ」浅田次郎


江戸の幕末。貧乏御家人彦四郎は、文武を兼ね備えた

ひとかどの人物でありながら、家のしがらみや嫡男(長男)

に生まれなかったことを理由に、こづかいもままならない。


兄の家に厄介になりながら、出世を諦めきれない彦四郎は、

苦しいときの神頼みと三巡稲荷の祠に手を合わせた所、

まさに霊験あらたか、次々と神様が現れた。

もっとも、それらの神様は邪神(貧乏神、厄病神、死神)であり、

彼らの出現によって、彦四郎はつらい決断を迫られる。



武士の持つ「義」と、浅田氏のユーモアが光る時代小説。

激動の時代に、馬鹿正直に生きる彦四郎の潔さが心地よい340ページ。
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2008年08月09日

直木賞「東京新大橋雨中図」杉本章子

明治時代、主人公小林清親は絵師として激動の時代を駆け抜ける。

第100回直木賞受賞作。305ページ。下町情緒あふれる粋な作品。


小林清親は、江戸に居を構える小役人。たくさんの兄弟がいるものの

母といっしょにかつかつの生活をしていた。時代は幕末。

「幕族」薩長の侵攻によって、江戸の町は「明治維新」を余儀なく

され、江戸っ子や武士たちは蔑ろにされる。清親は、年老いた母と

ともに江戸を離れた。絵を描くことが好きだった清親は、それを機に

自分の画帳を燃やしていたが、母の頼みもあり江戸の景色を描いた

1冊だけは手元に残った。



転居先で身体を動かす仕事をし、生計を立てていた清親は

退屈さを感じ、親友である圭次郎らと共に、昔取った杵柄で

斬り合いを見せるショーに参加することにした。しかし、

限界を感じ、これを機に江戸にふたたび舞い戻ることにした。


その後、清親は自己流で描いていた絵を見込まれ、「光線画」や

漫画のような「ポンチ絵」、新政府の風刺絵などを描き好評を博す。


絵師として成功を収めながらも、大切な人と離別をしたり、

殺害現場に居合わせたり、結婚をするも妻と心が離れたり、

いいことばかりではないが、絵師仲間の芳年と切磋琢磨しながら

また自分を取り立ててくれたパトロンや自分の絵や成功を喜ぶ人

のために清親は筆を取るのだった。


変わっていく世の中、変わっていく町々、変わっていく人々……。

でも変わらないものもあるんじゃないか。

変えてはいけないこともあるんじゃないか。

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2008年08月06日

直木賞「遠い国からの殺人者」笹倉明

被害者は加害者であり、加害者は被害者であった。


遠い国からやってきた外国人ストリッパーは、暴力を繰り返す

ろくでなしのヒモ男を殺害。

「男の人が倒れている」という110番通報の女性の声には、

妙ななまりがあり、捜査線上には早くから被害者の男性と

つきあっていた金髪の女性が容疑者として浮かび上がる。

彼女のことをかばい、逃亡を助ける同僚や人々の介入もあり、

確実に忍び寄る警察の包囲網をくぐり抜ける彼女だったが……。


日本に憧れを抱いてやってきた外国人女性が体験した

日本での地獄のような生活と、彼女を食い物にする悪人たちを描く。

しかし、作中において彼女を一人の人間として尊重し、彼女を

助けるために尽力する同僚や弁護士の姿も描き、緩和剤を果たす。

またこの作品の被害者は、同時にろくでなしの加害者でもあり、

(被害者と思われたヒモ男は、性質の悪い事件の犯人でもある)

加害者である外国人女性に、情状酌量すべき余地もある。


またこの作品は2部構成であり、1章においては殺人者の逃亡劇を

2章においては、殺人者の真の素性と事件の細部についてを言及。

また、スリリングな法廷を描き、「無罪」を獲得しようとする

弁護士と検事の戦いや、「真実」を見極めようとする裁判官の姿を

鋭く描く。101回直木賞受賞作のミステリーである。330ページ。
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2008年07月07日

小説「八つ墓村」横溝正史




八つ墓村の由来…村に訪れた落ち武者八人を、皆殺しにしたという

暗い歴史を持つ村で、次々と村人が不幸な死を遂げる。

武者が所持していた黄金を強奪せしめんと画策していた

村人だったが、結局宝物(小判)を手にすることはできなかった。


そして、時は流れ村の権力者である男が己の欲望に任せた行為を

したことを端に発し、村人32人が殺されるという史上類をみない

事件が起こる。


そして、四半世紀を超える時が流れ、血みどろの歴史を持つこの

村に新たな大量殺人事件が勃発。名探偵金田一耕助も登場するが、

謎解きしかしてくれずに、次々と被害者が増えるという悲惨すぎる

ストーリーであり、もっとどうにかならなかったのか?という

感もあるが、娯楽として読む分には、優れたミステリーと言える。

但し500ページ弱と長いのが難。


物語は、32人の大量殺人犯の息子であることを告げられた主人公が

実は犯人の嫡出であり、莫大な遺産相続をすることを村人から

告げられ、のこのこ村にやってきたことによって陰惨な事件に

巻き込まれるというストーリーである。また、村に隠されている

宝探しという魅力的な部分も描いた娯楽性の強い作品でもある。
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2008年06月19日

ミステリー「巨人−阪神」殺人事件 吉村達也

事件の進行と読むスピード(個人差あり)が一致するという

画期的な手法で描かれた、独特な味わいがあるミステリー。


巨人の先発は桑田、阪神は湯船。

懐かしい顔ぶれの野球試合の、中継を見つめる主人公たち。


富士山麓で行われる管理職養成所は、「地獄の特訓」と言われる

過度の体罰・言葉責めを行い、結果的に死者を出してきた

悪名高い黒組織。骸骨のような顔をした所長に異議を唱える参加者。


そして、「ある女性が危ない」という謎の電話を受けた男は、

彼女が出かけると言っていた東京ドームに赴き、

彼女を守ろうとする……。


スリリングな展開と、ミステリーの謎解きに不可欠な伏線があり、

フェアな内容。おすすめの260ページ。
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2008年06月14日

小説「続瀬戸内少年野球団」阿久悠

淡路島を舞台に、中学生になった竜太は
悪友バラケツらと共に青春を謳歌する
はずだったのだが、「栄養失調」・「肺病」に
かかり、さえない生活を余儀なくされる。

前作「瀬戸内少年野球団」
http://book0001.seesaa.net/article/75552563.html

又、「運命」を約束した美少女ムメからの手紙や、
突然の訪問、高校進学・就職によって、
江坂タイガースは少しずつ離れ離れになっていく。

高校進学を果たした竜太は、映画の世界にのめり込み
勉強を疎かにしたり、年上の女性と恋仲になったり、
忙しい。バラケツは、甲子園をめざす高校球児になり
その立派な体躯と豪快な性格に磨きをかけて、
プロの選手にならんと奮起。

そして、遂に旅立ちの時が訪れた。

ムメに強い憧れを抱いていたバラケツは、神戸に住む
ムメの所に駆けつける。竜太は、とまどいの中で、
ムメに思いを募らせる。しかし、バラケツが見たムメは
憧れを抱いていた美少女ムメの姿からかけ離れていた。


また、竜太は祖父・祖母の下から離れて単身で大学を
めざすことになる。物語はドラマティックな展開を見せ、
一気に読ませる力は流石だと思う。おすすめ。250ページ。
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2008年06月13日

ホラー「白い部屋で月の歌を」朱川湊人




除霊アシスタントのジュンは、霊能力者シシィやその弟リョウと
共に除霊行為を行っていた。ジュンは、自分の体内に「白い部屋」
を有し、その霊魂を部屋の中に入れ、シシィによってその霊魂を
解放することができる。

ある日、ジュンは生きながら霊魂が抜けてしまったエリカという
少女を救い出すが、彼女のことが頭から抜けない。

ジュンは、彼女の存在を感じながら除霊を行うのだが、「事件」
が起こり……。衝撃的なラストが魅せる日本ホラー小説大賞受賞作。

約115ページ。


「鉄柱 クロガネノミハシラ」

自らの不倫が原因で、「僻地」にとばされた主人公が体験する
恐怖の物語。倫理観・人生観を問うた新感覚ホラー。

主人公や登場人物の心の葛藤を描いたおすすめの物語。

主人公は、過呼吸症の発作を起こす妻と共にド田舎にやってきた。

その村は、「よそものに厳しい」一般的な田舎と違って、
二人に対して、やたら親切であり、「人のよい」者たちばかりの
街だった。そう、薄気味悪いほどに。

妻は、村の人たちと打ち解けていき、主人公も村の生活に順応して
いくのですが、村には「クロガネノミハシラ」と呼ばれる不気味な
鉄柱があり、また村には一般の感覚では考えられないような風習が
あった。そして、悲劇が起こった。170ページ。
ラベル:小説 読書 ホラー
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2008年05月19日

小説「I’m Sorry, Mama.」桐野夏生


私は、女の顔をした悪魔を一人知っているのです。
その女のしたことを考えるだけで、ぞっとします。
彼女の本当の名前が何というのか、今現在、
何という名前を名乗っているのかは知りませんけど、
もちろん彼女はまだ生存していて、人を騙し続けて
います。そして、へいぜんと人を殺し続けています。

彼女は正真正銘の大嘘つきです。泥棒です。放火魔です。
詐欺師です。そして、世にも怖ろしいことに人殺しです。

彼女の手口はとても巧妙で、証拠を残すことは一切ありません。
彼女は金欲しさからいとも簡単に人を殺し、
闇から闇へと消えて行くのです。彼女は顔のない悪魔です。
どこにでもいる中年女。でも、その心は真っ黒です。
(本文より)

今まで読んだどの小説の登場人物よりも、「不幸」な
ヒロインアイ子は、親の愛を知らないモンスター。

物語は凄惨を極め、登場人物の大半が悪しき心を
持っている。アイ子は、その恵まれた体躯と欠如した
倫理観によって、次々と犯行を繰り返す。
そして、唯一の心の拠り所である「母の形見」と
信じる白い靴に話しかけるのだ。

ホラーには、大きく分けて2つの種類がある。
「現実味のあるホラー」と「非現実的なホラー」だ。

この物語は、前者に分類されるホラーであり、
ミステリー要素も備えている。犯人は、アイ子と
はっきりわかっているので、読者はアイ子の逃亡劇の
展開に集中できるという利点がある。かなりハードな
内容であるが、その凝縮された内容や後半の
ラストのうまさなどは流石だなと思う。
240ページ(ハードカバーの方が)

おすすめ同著として、「OUT」、「柔らかな頬」、
「魂萌え」などがある。

「柔らかな頬」、「魂萌え たまもえ」の紹介はこちら。
http://book0001.seesaa.net/pages/user/search/?keyword=%8B%CB%96%EC%89%C4%90%B6&vs=http%3A%2F%2Fbook0001.seesaa.net%2F&fr=sb-sesa&ei=Shift_JIS
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2008年03月14日

直木賞「GO」金城一紀


主人公は、在日韓国人という「肩書き」のせいで、

いろいろな「壁」にぶつかります。


一番の壁は、作品のテーマである「恋愛」です。


しかし、「肩書き」や「名前」なんて所詮は呼称にすぎません。

主人公は、この「壁」をぶち破るために立ち上がります。


スピード感があって、主人公の生きる姿勢に好感を持つ作品です。

特に高校生におすすめの作品です。直木賞。映画もおすすめです。


いつだって、自分の道を切り開いていくのは「意志」の力です。

文章は正直拙いけど、だからこそ胸に響く部分があります。
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2008年03月11日

直木賞「緋い記憶」高橋克彦

画家として成功した主人公は、かつて住んでいた盛岡での

‘忌まわしい記憶’を探るために調査に乗り出す。

主人公を待ち受ける、逃れられぬ悲しくも切ない運命とは……。


あいまいで、不確かで、書き直されてしまう記憶たち。

悲惨な物語で終わるのかと思いきや、最後まで読んで救われました。

表題作(緋い記憶 あかい記憶)など記憶に関する短編集。7作品。

300ページ。同著「青い記憶」もおすすめ。直木賞。
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2008年02月19日

芥川賞「ひとり日和」青山七恵


先生をしている母が、中国に仕事に出かけた関係で

私(知寿 ちず)は親戚のおばあさん(吟子さん)と

いっしょに住むことになった。ネコが大好きで、50も

年の離れた吟子さんとの「新生活」が始まった。


私は、学校の先生のこどもだが、勉強が大嫌いで大学に

通うこともなく、フリーターをしている。恋人もいるのだが、

希薄な関係しか気付けていない。コンパニオンの仕事を

していたが、いっしょに住んでいるおばあさんの家から

見える駅の売店の売り子を始める。そして、恋をした。


私には、昔から「盗癖」があった。人がとるに足りないと

感じそうな教室に落ちている消しゴムだとか……

そういった物をこっそりポケットにしのばせて持ち帰る。

私には、そんなちょっと暗くて、淋しい一面があった。


吟子さんは、70歳でありながら元気で精力的に生きていた。

ボーイフレンドもいた。ネコが大好きで、部屋にはネコの

額縁の写真が並んでいた。なぜか名前はみんな同じ。

わからない。70になって恋をしたりするなんておかしい。


若いときっていうのは、ゴーマンなものかもしれない。

主人公を見ていると、切にそう思う。もちろん50も年が離れた

人の気持ちなどわからないのだが、吟子さんに意地の悪い態度を

とる主人公を見ていると、なんかそんな気持ちになった。

160ページの短編。2007年度芥川賞受賞作品。
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2008年02月06日

小説「阿弥陀堂だより」 南木佳士( なぎ けいし)


少年時代に祖母といっしょに山奥の田舎で、ほそぼそと

暮らしていた孝夫は、40歳を過ぎて妻美智子と共に

信州谷中村六川集落に帰ってきた。そこは、素朴で

地に足がついた人々が生きる小さな集落だった。

その村には、「阿弥陀堂」と言われる習慣があり、

阿弥陀堂には、阿弥陀堂守と言われる身寄りのない

「おうめばあさん」がいた。

村には、難病によって声を発せられない若い女性

小百合ちゃんがいて、「阿弥陀堂だより」を書いていた。

ほのぼのとした作品であり、文学的な作品。芥川賞作家

である著者の力が遺憾なく発揮されており、切ない

ストーリーを推移するも読後感はよくやさしい雰囲気。

スローライフと、率直に生きることの難しさや確かさを

描いた心温まる物語。登場人物が少ないのも読みやすくてよい。


孝夫:少年時代を祖母と暮らす。まじめで働き者だったが、
  祖母をおいて文学と出会い谷中村を出てしまう。
  42歳の厄年。まさに人生の分岐点を迎えている。

  その後、大学進学、サラリーマンを経て売れない作家に。
  実直、祖母を置き去りにしたことに罪悪感を抱き、
  「おうめばあさん」に祖母をダブらせていて、気にかける。


美智子:高校時代の孝夫のクラスメイトにして、恋愛を通じて結婚。
   学生時代に吹き荒れていた、大学紛争に疑問を抱いていた
   孝夫と考えを同じくしていて、身のある医者という仕事を
   志す。いわゆる、病める人の痛みがわかるタイプの人間。
   順風満帆かと思われていた彼女の人生だったが、ある事件を
   きっかけに孝夫といっしょに、谷中村で住んでみることに。
   医者である作者の描く話しにはリアリティーを感じる。

おうめばあさん:
   孝夫が少年時代にも谷中村堂守だったが、現在も現役。
   半世紀の間堂守をしている現在96歳のおばあさん。
 
   野良仕事に精を出すほど元気であり、一汁一菜式の
   簡素な食事をしている。

   阿弥陀堂だよりの答え手であり純粋。
   村人から慕われている。
        
小百合:阿弥陀堂だよりのインタビュアー兼発信者。
    23歳。すぐ顔が赤くなる好感の持てる人物。
    難病を抱えている。

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埼玉県寄居大和水! 日本百水のひとつ。
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2008年01月14日

直木賞「私が殺した少女」原りょう


19年前に直木賞を受賞したハードボイルドミステリー。

探偵である俺(沢崎)は、身代金を取りにやってきた誘拐犯として
掴まるも誤解が解ける。さらに犯人からのご指名で、身代金の
運搬人という大命を授かった。

「やっぱり犯人の一味なのではないか……?」と疑われるも、
俺はその役を引き受けることにした。

俺を目の敵にする刑事。それには、探偵という俺の仕事以外にも
理由があった。かつての俺の同僚渡辺が、事件捜査の際に金を
持ち逃げし、俺に対する疑念が払拭されていなかったからだ。

誘拐犯による電話によって、俺は走り回らされるはめになった。

少女の命は助けられるのか……?


2段ぶち抜きで265ページなので、実質小説500ページ超の長編。

最後まで読んだら、評価が上がった。ディティールも凝っているし、
フィーリップ・マーロウ的な主人公に魅力を感じる。会話や文章に
ユーモアがある。おすすめのミステリー。
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2008年01月10日

小説「魔王」伊坂幸太郎


その時歴史が動いた。人々は、犬飼という政治家の煽動によって、
憲法の9条問題や、日本の未来に向けて関心を示すようになる。

パフォーマーであり、若くして魅力的な犬養は、宮沢賢治の詩を
引用し、日本人の心をがっしりとつかんでいく。

社会の大きなうねり(変動)の中で、兄弟たちは戦うことを選んだ。

不気味さの中に、真実味が伴う意欲的な作品。法学部卒の作者の
経験が生かされた作品と言える。約275ページ。

〜魔王〜

若くして、弟(潤也)と二人で生きてきた俺は常に考えて生きてきた。
俺は、最近メディアにおいて注目されている政治家犬養に対して
危惧感を持つようになる。そして、彼によって踊らされる大衆に
対して。

そんな俺は、最近自分が思っていることを他人の口から言わせる
「腹話術」の能力を有することに気付き始める。弟とその彼女と
共にその能力がどの程度のものかを実験してみることにした。

使い方によっては、「魔王」と対決できるかもしれない。

「でたらめでもいいから、自分の考えを信じて、対決していけば、
 世界が変わる」という信念を胸に兄は戦う。

口癖は、「考えろ。考えろ。マクガイバー」



〜呼吸〜

恋人の潤也君は、お兄さんに似ずに勉強ができなかったが、
直感的に優れたものがあるし、時に物事の本質を見抜くことがある。

語り手は、私(詩織)に移行。ある日を境に、潤也君はツキ出した。

具体的に言えば、じゃんけんで常に勝つ。引き分けにすらならない。

私たちは、競馬場に行って「実験」をしてみることにした。

神がかり的とも言えるこの能力を、潤也君が身につけたことには
何かしかの意味があるのかもしれない。

テレビに映る犬養首相を観ながら、私は思う。
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2008年01月06日

小説「ダヴィンチコード」ダンブラウン

天才レオナルドダヴィンチが、「最後の晩餐」によって
暗示した謎とは何か?

キリスト教のタブーをテーマに、ミステリー調で書かれた
この作品は、ベストセラーに恥じないスリリングで、
興味深い作品に仕上がっています。時代を代表する偉人
たちが在籍していた、秘密結社シオン修道会や、
ダヴィンチに隠された「背景」を思い出す時、ぞくぞくして
します。僕は、キリスト教の知識なんてありませんでしたが、
十分堪能できる内容でした。

開けてはいけない「パンドラの箱」に手をかけてしまった
主人公たちの運命やいかに……?。大長編。

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2008年01月04日

直木賞「漂泊者のアリア」古川薫

母は琵琶芸者キク、父はイギリス人名士リード。
オペラ歌手藤原義江の波乱万丈な物語。

1898年頃義江は生まれ、日露戦争を背景に 「あいのこ」
としていわれのない嘲笑と排斥を受けながら育つ。

母に捨てられ、義江は 住む場所を転々。頼りにしていた
リード からも冷たい仕打ちを受けるが、後に和解し、
数少ない理解者の協力などによって、 ヨーロッパに
本格的に音楽を学びに出かける。

日本、ヨーロッパ、アメリカと世界を股にかけ、
義江は少しずつだが、着実に認められていき、脚光を
浴びる日々を送るようになる。

主人公:義江 極貧生活を体験しながら、大金を得ると
持ち前の浪費癖を発揮する。豪放磊落と言えば聞こえが
いいが、無計画とも言える。 「和製ババロッティ」と
呼ばれ容姿に恵まれた義江は、 無茶苦茶女性にモテる。

よって、その女性遍歴たるやすごいものがある。 そのことが
義江の人生を、より波乱万丈に華やかにし、苦境に立たせる。
ちなみに、具体的ないやらしい描写はない。

第二次世界大戦を通して、ダブルである彼は 実に難しい立場に
たたされる。元々、彼に対しては偏見や、やっかみがあったが、
彼の不貞行為、不倫などによってそれが顕著に噴出する。

自業自得。 3部構成の260ページ。
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2007年12月31日

直木賞「柔らかな頬」桐野夏生



「現代の神隠し」=謎の別荘地幼児失踪事件。
をめぐり当事者の母と、ガンの宣告を受けた
元刑事が事件の謎に挑む。

母……誰も私を救えない。

「誰が幼児を連れ去ったのか?」。

「その目的とは?」。

「連れ去られた幼児の心は?」謎は尽きない。

読み応えのある作品です。私は、桐野夏生さん
の作品では特に「OUT」が好きですが、この
作品も桐野さんの描写力とぞくぞくする怖さが
にじみ出ていて、ドキドキしながら読みました。

読者の「想像力」を信じて書かれた作品という
風に私は捉えています。

柔らかな頬と言えば、赤ちゃんでしょう。
http://book0001.seesaa.net/article/72266167.html
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2007年12月30日

名作「瀬戸内少年野球団」阿久悠

戦争は、腹が減る。戦争は、小学生の希望や夢を奪う。

主人公の竜太は、日本の勝利を確信していたが、戦争が
終わり実際にアメリカ人を目の当たりにして、それが
「錯覚」だったと痛感する。

絵が上手だった竜太は、8歳になる今まで戦艦大和を
はじめとした、100を超える絵を描き、「優」・「秀」を
沢山もらってきた。

だが、家に進駐軍がやって来て、それを見られると具合が
悪いので、燃やすように祖父からさとされる。空虚感を
感じながら、竜太はなくなく絵を燃やすのであった…。

戦後の荒廃した淡路島で、少年少女と、若い駒子先生が
野球チームを結成。貧しく、あけっぴろげ、悪く言えば
下品な人たちの支えの中で、成長する少年・少女を描いた
素敵な物語。作詞家阿久悠さんの作品らしく、随所に
歌の引用があり、物語に花を添える。

小学生の小さな恋にも注目。おすすめの330ページ。
内容は、大人向け。

8月4日(土)の読売新聞の編集手帳に、阿久悠さんのことが
書かれていました。

「UFO」、「もしもピアノが弾けたなら」、「ピンポンパン体操」……。改めて、すごい人だったんだなぁと感じました。

今年の紅白の一つの目玉でもある大人物を偲んでご紹介。
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2007年12月20日

直木賞「高円寺純情商店街」ねじめ正一


主人公の正一は、商店街の乾物屋の息子。

店のかつをぶしを削ったり、自転車で
配達をこなす野球が大好きな中学生。

今、正一の心は沈んでいる。店の一番の
お得意先が、他の店に移ってしまうかも
しれないからだ。気の弱い父親は、
プレッシャーがかかると発病する天狗熱
にかかり、寝込んでしまった。

しかし、そんな頼りない父を少年は嫌いでは
なかった。(天狗熱)


六月は、乾物屋にとって地獄だ。商品にハエが
たかるし、湿気によって物が腐りやすく、
かんぴょうはきつい臭いを発する。

上から吊るされた「蝿取紙」を見ていると、
やはり六月はいやだなぁと少年は思う。

そして、となりの魚屋のケイ子と、蝿取紙に
ついた蝿の数を競っていた頃を思い出す。

父親が書いたふざけた「俳句」が元で、
暗雲立ち込めるねじめ一家。(蝿取紙)などを収録。

蝿取紙(はえとりがみ)
 黄色っぽい粘着質のある、ビニール状の道具。
 吊るしておくと、蝿などの虫が取れる。
 レストランの厨房(ちゅうぼう)などで重宝。
 頭に貼り付くと、嫌な気持ちになるだけでなく、
 取るのに難儀する

1960年頃の活気があった高円寺の商店街を舞台にした、
下町情緒あふれる物語。ほのぼの系の小説。

続編は「本日開店」
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2007年12月17日

長編「魂萌え たまもえ」桐野夏生



夫の突然の死によって、敏子は目の前が真っ暗になる。

いつも家族を気遣って、的外れと言われようと、心配することを
やめられなかった。それが妻であり、母親である自分の日常だった。

大人しくて、我慢強い来年還暦を迎える女性が、夫の死によって、
想像した以上に騒がしい毎日を過ごす物語。読み応えがある長編。
文庫で上・下巻あわせて約600ページ。

・敏子の今後の選択は……。
  
・夫の死によって、8年ぶりに長男がアメリカから帰国。
 既婚、こども(孫)がいる。敏子に「同居しないか」?と迫る。
 又、法定相続の問題や、長男夫婦の未来などの課題が見えてくる。

・長女は、長男と同様に頼りない。未だに主人公の家に遊びに
 やってくるし、30過ぎてもフリーターだ。前途多難。彼氏がいる。

・夫には、愛人がいた。
 愛人との対決、怒りと哀しみ、面倒くさい問題が次々と浮上。

・恋をする。

・高校時代からの友達との関係。

・カプセルホテルで垣間見た「人生劇場」。
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2007年12月15日

ミステリー「puzzle パズル」恩田陸


コンクリートの堤防に囲まれた無機質な
廃墟の島で、3体の変死体が見つかった。

・学校の体育館で発見された餓死死体。

・高層アパートの屋上には、墜落した結果
 全身打撲となり亡くなったと考えられる死体。

・映画館の座席には、感電死体。

同時に、彼らの死亡時刻はほぼ同じ。

彼らは共通して、意味不明な「紙」を持っていた。

不可思議なこの謎に挑むのは、志土(しど)と春。
検事である彼らが導き出す、「真相」とは?
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2007年12月14日

小説「ゴッドブレイス物語」花村萬月

ロックシンガーの朝子は、人気バンドと一緒に「好条件」で京都に。

だが、騙されたことに後に気付く。

絡み合う感情、恋心、複雑な関係の中で、朝子は、何を感じるのか。

バンドメンバー同士の恋(男と男)の行方は?

なんとか、出演に漕ぎつけたライブ会場。熱狂の中、朝子たち
「ゴッドブレイス」を祝福するかのように、雨が降り始める。

気持ちいいだけ、なんて嘘。いつだって痛みがいっしょで、
だからあたしたちはいっしょにいるんだ(本文より)

扇情的で、スピード感溢れる小説。180ページ。

他に、モンスターマシンに乗って、立川基地を疾走
する姉弟を描いた「タチカワベース・ドラッグスター」を収録。
ラベル:小説 読書
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2007年12月02日

名作ミステリー「点と線」松本清張

1958年発表の社会派ミステリー。ミステリーブームの火付け役となった名作ミステリー。

九州博多付近の海岸に、男女の死体が並んで横たわっていた。
男は、最近の汚職事件が取り沙汰されている××省の課長補佐佐山、女は「小雪」の女中時子。

彼らは一週間前に、知り合いの商人安田、女中仲間八重子、とみ子によって仲睦まじく話している所を駅のホームで目撃されていた。

一度は、「心中事件」として処理されたが、鳥飼刑事は疑念を抱き
捜査を行う。後に、彼と考えを同じくする警視庁の三原も独自の
捜査を決行。「犯行時刻に、北海道にいた」という鉄壁のアリバイを
持つ容疑者との対決をスリリングに描いた推理小説。約250ページ。

キーワード
・「先入観」と「思い込み」
・「点と線」
ラベル:名作 ミステリー
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2007年12月01日

芥川賞「海峡の光」辻仁成


芥川賞。145ページ、短編。

陸に上がった後も海のことがいつまでも忘れられない。

青函連絡船の客室係を辞め、函館にある刑務所の看守に
なった私の前に、あいつは現われた。受刑者として。

少年時代、教師やクラスメイトの絶対的な信頼を勝ち取り、
「優等生」として君臨しながら、その裏で残酷なまでに
私を苦しめ続けたあいつが。

私は、ある日「優等生」として振舞うあいつの仮面の下を
覗いてしまったのだ……。悪魔のようなあいつの姿を……。

順調で、何不自由ない生活を送っていたはずのあいつは、
傷害罪を犯し、私と18年ぶりに再開した。

私は監視役に、あいつは監視される側になった。

あいつは、模範的な態度で刑務所生活、船舶訓練を
行うが、私の中では「疑問」と「疑惑」が消えることは
ないし、常に不安がつきまとう。逆に、監視されている
気がするのは気のせいだろうか?

あいつの、一挙手一投足に目が離せなくなる私。
同時に、あいつの仮面の下を再び覗いてみたいという
不思議な欲求が主人公を包むのだった。


小説の持つおもしろさを、ふんだんに詰め込んだ傑作。
あいつの「人心掌握力」の高さには、脱帽させられます。

主人公の「複雑な心情」を巧みに表現しています。
人物描写、海などの風景の描写もすてきです。あえて、
あいつの心情、背景を描いていないのも流石だと思います。
ラベル:芥川賞
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2007年11月26日

小説「ブエナ・ビスタ 王国記U」花村萬月




芥川賞「ゲルマニウムの夜」の続編。

修道院を「卒業」することにした、赤羽修道士。
雪の降る町を朧(ろう)と一緒に歩き、アパートにたどり着く。

和やかな雰囲気で、昔話をしていた二人だったが、朧の告白で一転。
朧のかねてからの計画通り、シスターテレジアが妊娠した。さらに、脅迫するように言葉を紡ぐ朧。テレジアを引き取ってはくれないか?

ゆがんだ倫理観、暴力と性衝動を持つ朧との対話から、修道士赤羽は何を思い、どんな答えを見出すのか。

聖職者と崇められる一方で、「禁欲」の誓いを破り、滑稽なほど欲望に支配される赤羽親子の、人間脆さが興味深い。(ブエナ・ビスタ)


農場の責任者であった赤羽修道士が去ったことによって、
朧、宇川の農場での仕事は峻烈を極める。

一段と寒さが、身体に応えるようになったある朝に、
鶏舎に訪れた朧が見た凄惨な光景。

その光景を連想させるような、牧草刈りの描写は秀逸。

朧を恋い慕う愛人ジャンと、恋人教子との微妙な関係。

消えない傷を作りながら、朧と宇川に生まれた不思議な友情。

そして、「処女懐胎」。

皮肉屋、不器用、暴君、臆病、残酷な朧のめざす王とは?
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芥川賞「ゲルマニウムの夜 王国記T」花村萬月




自分が育った修道院に舞い戻った危険な青年、朧(ろう)が主人公。

殺伐とした心を持つ彼は、暴力的な衝動を抑えられず、

修道員仲間(彼は、「虫」と捉えているが)を凶悪な方法で

殴りつけ、その危険なにおいと圧倒的な強さによって、

修道院の少年たちの中である種の尊敬を集めます。


又、彼のフェチを刺激する修道女が登場し、導かれるようにして、

肉体関係を持ってしまいます。

シスターは、性交を固く禁じられていますが、彼はあえてそれを

断行し続け。別の女性とも交わります。


彼は、神父に「罪の告白」をすることで、神父に深い後悔の念を

抱かせようと画策するなど、神や教義を冒涜する道を選びます


目指すのは、僕の王国!

キリスト教の持つ矛盾、人間の抱える矛盾にメスを入れた問題作。

119回芥川賞受賞作品。

花村萬月作品に共通していることですが、エグい内容の物語で、

難解な内容です。

同著としては、「笑う山崎」がおすすめです。
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