2019年06月25日

小説『百瀬、こっちを向いて。』中田永一

「百瀬、こっちを向いて。」

人間レベル2の学校カースト底辺を自負する僕は、
百瀬陽という美少女とつきあうことに。
そこにはこんないきさつがあった。

幼なじみにして年上のヒーローイケメンの宮崎先輩は
学校を代表するご令嬢の神林先輩とつきあっている。
(資産家の神林先輩は県知事とも知り合いなのだ)
誰もがうらやむ美男美女のカップル。
しかし、宮崎先輩は百瀬というタイプの異なる美少女
ともつきあっていた。デートを目撃してしまった僕は、
神林先輩の疑念を晴らすために百瀬と恋人のフリを
してほしいと宮崎先輩から頼まれてしまう。
命の恩人である宮崎先輩の頼みは絶対に断れない。

豆電球のような学校生活を同レベルの親友田辺と
すごしていた僕だったがきら星のような恋人ができた。
そして先輩たちカップルとのダブルデート。
神林先輩への罪悪感と百瀬への切なく苦しい想いや
秘密を抱えきれなくなった僕は田辺に心情を吐露する。

作品において印象的なのはキャラクターたち
ひとりひとりの秘密や感受性豊かなセリフだ。
恋愛物語の蚊帳の外に置かれていた田辺が吐き出した
飾りのない主人公へのメッセージに心打たれた。

「なみうちぎわ」

5年間の間、意識を失っていた私の目の前に
現われたのは成長したかつての教え子だった。

海辺の田舎町の女子高生姫子は小学六年生の
灰谷小太郎の家庭教師になる。不登校になった
小太郎は生意気な口をたたくが徐々に打ち解ける。
そして事件が起こる。

溺れていた小太郎を助けようと海に飛び込んだ
姫子は重体となり遷延性意識障害と診断される。
意識を取り戻した姫子は徐々に回復し、
杖をつきながら大検をめざして歩き出した。
しかし自分のせいで姫子の人生を大きく変えて
しまったという自責の念にかられる小太郎は
まだあの日の波に翻弄されていたのだった。
寄せては返す波のように起こった恋愛感情、
ふたりの恋の行方は…

「キャベツ畑に彼の声」

本田先生は国語教師、発生がよく黒いセルフレームの
眼鏡がよく似合い女子生徒から人気がある。
わたしこと小林も心惹かれるひとりだが、
結婚間近な恋人がいるという噂。ざんねんである。

わたしは作家の「テープおこし」という高額バイトを
頼まれて録音素材から入力作業を行っていた。
あれ、この声どこかで聞いたような…。
覆面作家(正体、写真などを公にしていない作家)
北川誠二は本田先生なのではないか?

こうなると北川誠二の作品が俄然気になり
読んでみると、黒いセルフレームの国語教師が
登場する本大先生をモデルにしたような内容だ。
確信を強めた私は提出課題時のノートに
あの小説を書いたのは本田先生ですか?と問いかけた。

「小梅が通る」

引っ越しを機に私は周囲をあざむくブスメイクを
はじめた。女優をしていた母、その遺伝を強く受けた
わたしは自覚はないが美少女で周囲をザワつかせる。
頼まれて子役モデルの仕事をしていたことがあるが
ヤバイ自称ファンの出現に心配した親は
引っ越しを決めわたしはモデルを引退した。
誰もがうらやむ容姿は同性からの強いやっかみもあり
苦い過去をつくりもした。

めだたない方が穏やかな生活を送ることができる。
という強い人生訓を持つ母、いろいろ学んだわたしは
平素からブスメイクをし偽装をし日々を送る。
めだたないよう心の友である二人と共に教室の隅で
ひっそりと生きることを選択したわたし。
しかし、お調子者の山本寛太の出現によって
春日井柚木は架空の妹小梅を名乗ることに。
油断して焼き肉店で素顔をさらしてしまい、
とっさにモデル時代の名前を言ってしまったのだ。

小梅にひとめぼれした山本寛太は彼女に会わせろと
わたしをせっつく。めんどくさい奴だ、
数学70点取ったら会わせてやる、でもムリだろ。
と思っていたのだが…。
嘘からはじまる恋もあるんだね。いとしいね。

乙一先生別名義の傑作短編集。すさまじい完成度。
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2019年02月25日

小説『少女地獄』夢野久作

飛び込み面接により看護婦となった姫草ユリ子は
虚構に生きる人たらしの天才美少女。
その天真爛漫な言動や献身的な態度は
老若男女問わず好意を抱かせ夢中にさせる。
しかしそんな彼女には全く別の裏の顔があった。
人並み外れた虚言癖である。
嘘を嘘で塗り固める…。現代のキラキラ女子のような
妄想、仮想、幻想に生きる儚い存在。
彼女の自尊心を満足させ、成立させるためには
もはや自殺し遺書を残すという手段しかなかったのか。

6つの手紙から構成された短編「殺人リレー」。

火星人と呼ばれた女学生甘川歌枝の戦いとは?
小学生の頃から飛び抜けた身長、身体能力を持ち
異彩を放つ歌枝は周囲から疎まれ生きてきた。
唯一無二の親友であるアイ子嬢を除けば味方はない。
物語はいわゆる暴投より新聞沙汰になった
不可思議な事件の謎が提示される。
歌枝がアイ子に向けた手紙により全容が語られていく
という書簡形式によって物語が展開される。
聖人君子として世間から高く評価されている
校長は真逆の裏の顔を持っていた。
彼もある意味、虚構に生きる二重人格者。
端的に言えば「ひとでなし」だった。

1934〜1936年に発表された3篇による
表題作『少女地獄』は書簡体による傑作集。
当時の女性が男性優位の社会において生きることの
息苦しさや難しさを描いている。

「地獄」と明言される現世の世界において
逃避的に自殺という道を選択する者もいるだろう。
作品としては、小娘ユリ子に手玉に取られる
子気味よさがあるのが第一部。
ユリ子に嘘をつかれ、だまされたとわかっても
仕方ないなぁと笑って許せてしまう。
憎みきれないキャラクターだ。
同時に彼女は自分が気に入っている今の立場を
守るために脅しをかける裏番的な怖い顔も見せる。

第三部の歌枝は基本的におひとよしの善人だが
両親からも疎まれ邪魔にされていることを知る。
信頼していた人物から裏切られる。
そういった人の持つ醜い部分を見てしまい
事件を起こす悲劇的なヒロインである。
この行動力に優れた全く異なる魅力的なヒロインが
登場する少女地獄。蓋し名作と言えよう。

上流階級の人間相手に恐喝を行う男が
的にかけた相手が告白する驚愕の事実とは?
「けむりを吐かぬ煙突」など4編を収録。角川文庫

同著代表作として名作『ドグラ・マグラ』があるが
難解でかつ長編なので、読みやすく理解しやすい。
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2018年01月06日

小説『憤死』綿矢りさ

「トイレの懺悔室」
小学生の時、ちょっかいを出してくるおっさん(親父)がいた。
ともだち4人で遊んでいると、訳知り顔で説教を垂れる。
どこにでもいがちな少々やっかいな親父だ。
そんなエピソードは誰もが経験するものだろう。

ある日、おっさんが洗礼なるものをすると宣言した。
トイレで今までにした罪を告白しろと言うのだ。
少年たちは成長し、久しぶりに故郷に帰ってきたおれは
親父のことを思い出す。ともだちの一人であるゆうすけは
親父の近況をよく知っているようで…。
少年時代の回想からはじまる物語は新境地的作品に。

「憤死」
小中学校の同級生が自殺未遂したというので興味本位で
見舞いに行くことにした。という書き出しからはじまる物語。
お金持ちの彼女は気前がいいが、お金持ちの子だからか
わがままで友達が少ない。
私と彼女は教室でのカーストが底辺同士上辺ではともだち。
でもいっしょのときは彼女はお姫様のようにふるまう。
ある日、彼女の怒り狂うさまに目の当たりにする事件があって…。

「人生ゲーム」
人生ゲームに興じていたら、ともだちの兄の友達と思しき青年に会った。
人生ゲームに落書きをしていき、本当に困ったときは相談に来い。
というセリフを残し、去っていった。
すっかりそんなことを忘れ、大人になった俺だったが…。

河出文庫
ラベル:綿矢りさ
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2017年11月19日

ミステリー傑作選『ジャンクション 運命の分岐点』湊かなえ 米澤穂信 両角長彦 杉井光 長岡弘樹 詠坂雄二

「オンブタイ」長岡弘樹

苦労知らずのとっちゃんぼーや西条の軽率な行為により
自動車事故が発生。運転手の部下が命を落とし、
西条自身も視力を失ったが、父が経営する会社での
地位を失うこともなく、生活は安泰。
そんな中、謎の女が訪問し…。
タイトルが示す「オンブタイ」とは?
この作品の造詣の深さに触れた時、思わず叫んでしまった。

「残響ばよえ〜ん」詠坂雄二

中学生当時のつかみ所のない初恋のような思い出のきっかけは
ゲームだった。頑固である種孤高の存在であり、
おかしなエピソードに事欠かない同級生のミズシロ。
格闘ゲームに負けたことから始まった二人の妙な縁。
名作ゲーム「ぷよぷよ」を交えて語られる淡い恋。
提示された謎かけに迫るとき、知的好奇心が刺激される。
まさにのーみそこねこねだ。ふざけたタイトルからは
想像できないような深い考察と推理が展開される。

「超越数トッカータ」杉井光

音楽で生計を立てているシュンは動画サイトに
アップした「ロンド・アイジェリコ」が話題となる。
ヒットチャートをにぎわす歌姫からも称賛され、
順風満帆かと思われた。
だが、大御所歌手から盗作疑惑をかけられる。
シュンは盗作を完全に否定するが…。
芸術の世界に提示された奇跡の法則とは?

など完成度の高い良作6編収録。講談社文庫。
日本推理作家協会編
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2017年08月08日

小説『賢者の贈り物』石持浅海

提示された謎をはらんだ問題から最適解をめざす
おすすめ知的パズル的短編集。
人が死なない極上ミステリー。
作者からのとっておきの10個のプレゼント。
PHP文芸文庫

伝統的にカンニングを推奨しているかのような
不思議な校風を持つ高校。カンニングの用意
(テスト範囲の要点をコンパクトにまとめる作業)
自体が既に勉強につながっているからか。
カンニングペーパーにオブラートを使うことを
思いついたが、思わぬ形で手紙を受け取り、
読まずに飲み込んでしまい…。「可食性手紙」

ワインにはまり、多額の出費を繰り返す後輩を心配した
磯風は元上司と共に一計を案じる。頭から否定しても
かえって意固地になる。奇策を思いついた二人だったが…
「経文を書く」

失恋をしたことからやけ食いに走るわたし。
彼のいる漫画研究会から足は遠のき、体重は増える一方。
そんな私を心配する磯風はなぜか居酒屋に私を誘う。
「最後のひと目盛り」

自分の所有する会社の株がやばいかもしれない。
そんな情報を入手した僕は早々に売り抜けることにした。
しかし自分はいいとして、同期で気心の知れた村田も
僕以上に大量の株を所有している。教えてやりたいが
ボリビア(時差12時間)にいてすぐ連絡が取れない。
奔走する僕だったが…「気に登る」
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2017年05月17日

小説『炎上する君』西加奈子

【炎上する君】
学徒動員、火垂るの墓というひどいあだ名を
つけられ灰色の学生時代をすごした二人の女性。
恋愛にうつつをぬかさず、強い意志で学業に打ち込み、
豊かなで盤石の暮らしを手に入れた。
あえて、自分たちのキャラクターと真逆のことを
してみないか?と勇ましくロックバンドを結成。
たくましい才女たちは銭湯で不思議な話をはじめる。
足元が炎上する男がいて目撃した者は幸運に恵まれる。
ロックな自分たちを演じることに疲れていた二人は
この不思議な男と出会い、二人とも燃え上がる。

【私のお尻】
容姿こそ恵まれなかった私だが、お尻だけは一級品。
お尻のパーツモデルとして大活躍し称賛を浴びる。
報酬も破格の待遇でぜいたくな暮らしも手に入れた。
でも心は満たされない。人は私のお尻ばかり見て、
お尻ばかり評価している。お尻が人格を有している。
愛しかったお尻に嫌悪感すら覚えた私は、
自分のお尻を「置いていく」ことにした。
芥川の『鼻』では主人公が自らの醜い鼻を切り離したが
この作品では誇るべき部分を切り離す。人って不思議。

【ある風船の落下】
自分の身体が浮かび上がり、最終的に空高く
舞い上がってしまう「風船病」が世界中で発生。
原因はストレスを抱え込み、この世に絶望した者が
地球の重力から解き放たれるとされる。
つまり形を変えた「自殺」であると言われている。
家で、学校で迫害され、愛を信じられない私も
風船病にかかり、母の心ない言葉で悲しみのない空に。
そこには地上に絶望し、このやさしい空にただよう
世界中の人たちが浮かんでいた。

など8編を収録した短編集。ずば抜けた発想力、
作品に流れるユーモアと愛情、
苦界で戦うことを辞さない潔さなどが光る。角川文庫
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2017年05月07日

小説『或る「小倉日記」伝』松本清張

森鷗外の研究を生涯の目標とした身体が不自由な耕作。
鷗外全集を編纂する際に見つからなかった「小倉日記」
に代わる研究をしようと苦労しながら鷗外の足跡を辿る。
表題作、芥川賞受賞作

結婚相手の父親が失踪宣告により除籍されていた。
頼子は秦雄から事の顛末を告白される。
そこに隠されていた謎を解くのは妹頼子から
このことを相談された兄貞一だった。「火の記憶」

戦地で繰り広げられる恋のさや当て。
魂までも敗北者となり果てた二人の男は
浅ましい事件をきっかけに暴走し…「赤いくじ」

浮気をしていた北沢は旅館で盗難に遭い途方に暮れる。
そして小役人北沢が思い浮かべたのは赤堀という
男の顔であった。事なきを北沢であったが、
大方の予想通りただでは済まないのだった。「弱味」

など12編を収録した傑作短編集。新潮文庫
人の転落、狂気、業、思考、心理描写、人生…
時代は変わっても共感、納得できる名作ずらり。
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2017年03月07日

小説『D坂の殺人事件』江戸川乱歩

夢遊病に苦しむ男の苦悩、
退屈に苦しむ男は悪魔的頭脳で連続殺人を犯すが捕まらず、
堕胎を促す植物を知った妊婦は、
妻に裏切られた男の苦悩、
戦火の街で出会った美女、
顔を柘榴のように潰された死体から類推される真相、
人間嫌いの男が愛した女に抱いた憎しみと情念は
グロテスクで酸鼻を極める物語を作り出す。

密室状況下に起こった事件。目撃者二人の証言は
真っ二つに分かれ、犯人像が見えてこない。
名探偵明智小五郎は思わぬ視点から真相をあぶり出す。
挿絵を交えた本格派推理短編集。暗い時代背景、
人の持つ暗部や弱さを描かせたら随一。創元推理文庫
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2016年08月14日

小説『満願』米澤穂信

刑事に向かない者がいる。川藤はそんな男だった。
殉職により二階級特進。勇敢にも刃物を振り回す男に立ち向かい
発砲により加害者を射殺したが命を落とした。
彼を指導していた柳岡は違和感を感じていた。
臆病でつまらないミスをし、それを隠そうとする川藤は
かつて自分が罵倒し、辞めさせた男同様にあやうさを感じさせた。
「夜警」

この宿に泊まった者は自殺することが多い。
二年ぶりに見つけ出した恋人佐和子が勤めていたのは「死人宿」と
呼ばれる縁起でもない場所だった。
二年前自分を助けてくれなかった男に出されたのは、
自殺が疑われる宿泊客を見つけ出し、説得することだった。

容姿に自信のある女は、稀代の女たらしを獲得し、結婚。
あいつはやめておけという父の忠告を聞かなかった女は
ろくに家にも寄り付かず、生活費にも困る日々。
そんな彼女の心の支えは、月子と夕子、二人の愛娘だったのだが…
「柘榴」

バングラデシュに赴任し、資源獲得をめざす私。
賄賂、熱波によって失明をもたらすサイクロン、洪水、
現地の人間による暴力。
苦境にめげず、私の前に立ちはだかったのは理想に燃える男だった。
そんな私は、恐ろしい提案を受け…。「万灯」

先輩によってもたらされた都市伝説を調べにやってきたルポライター。
毎年のように人が命を落とす「死を呼ぶ峠」の聞き込みをしようと
ドライブインのおばあさんに話を聞く内に本当の恐怖が…「関守」

かつて大変お世話になった下宿先のおかみさんが殺人を犯した。
弁護士になった私は、彼女の刑を軽くしようと奮闘。
過去を回想しながら、この事件を検証するうちに「真実」が
見えてきて…「満願」

新潮社 ホラーミステリー 珠玉の短編集
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2016年07月16日

小説『ハッピーエンドにさよならを』歌野晶午

挑戦的なタイトルが示す通り、無慈悲な話が次々と展開される。
一流の小説的技巧が光る内容。
努力が必ずしも報われない悲しい結末。
殺人事件が起こり、もし真相にたどりつけても
そこには決して素直に喜べない「裏」の顔が待っている。
切り離したはずの男はしつこく喰らいついてきて、
平穏な生活に影を落とす。
禁忌を犯し、あの部屋に入ってしまった私は…。
掲げた高い目標、「夢」はいつしか「悪夢」に変わり…。
内容は非常に優れていて、一気に楽しめた。
アイディアを惜しげもなく詰め込んだ短編集。角川文庫
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2016年06月25日

小説『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信

誰もが羨む華やかな生活を送るお嬢様による読書サークル
「バベルの会」。しかし、そこに集うお嬢様、彼女たちに
関わる者たちには、みなそれぞれ邪悪な秘密があった。

至らない兄を持つ彼女ことご令嬢は次期当主という期待から
常に抑圧を受け、自分の好きなミステリーを隠れて読む。

豪邸にやってきた彼女に与えられた仕事は北の館に住む
長男を監視、世話することだった。

山荘を管理する彼女はこのすばらしい山荘を自慢したくて
たまらない。

自分のために徹してくれる召使いの存在が彼女に与えたのは
絶望かそれとも希望だったのか。

絶品の料理を出してくれるが、その代償は計り知れない。
日記につづられた想いとは。

5つの事件によるブラックユーモアあふれる暗黒ミステリー。
グロテスクだが甘美。
優雅さと華やかさの裏に隠された狂気な真実。
生きることはまさにきれいごとだけではないサバイバル。
新潮文庫 
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2016年03月26日

小説『おしまいのデート』瀬尾まいこ

【おしまいのデート】
両親が離婚し、月に一度父と会っていた彗子だったが
父が再婚するということで会うのも気まずいなぁ。
そんな話を祖父にしたら、じゃあ代わりにワシとデート
しようと言い出した。ひょうひょうとした祖父は
彗子とのデートにいつも遅れてくるしいい加減なことばかり。
母も再婚をすることになり、新しい家族を得た彗子に
祖父は今度のデートが最後だと言い出す。

【ランクアップ丼】
なんちゃって不良だった高校生三好は、なぜか毎月一回
上じいと共に玉子丼を食べる関係だ。上じいは高校の教師で
担任でもないし、そんなに接点もないのに。
ささくれだった心を上じいと食がほぐしてくれたのか
この交流は三好が勤め人になってからも続いている。
終わるはずだったこの交流は今度は三好が上じいに飯を
おごることで続いているのだ。さわやかで切ない心に残る傑作。

【ファーストラブ】
なぜか接点のない同級生の同性からデートに誘われた俺は
多くの疑問を持ちながら待ち合わせ場所にやってきた。
相手の真意はわからないが、こいつこんな奴だったんだ。

などを描いた5作の短編集。リズミよく心地よく読める。
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2015年07月11日

小説【傍聞き かたえぎき】長岡弘樹

【迷走】

救急車が患者を乗せて走る。しかし、なぜか病院への
搬送を避けるかのような指示が飛ぶ。緊迫の車内。
患者は救急隊員たちと知り合いであった。
そして、電話先の相手医者とも。
客観的に恨まれて当然の相手という特段の事情があった。

【傍聞き】

なぜ心を通わせることができないのか。
女性刑事は娘の行動に悩んでいた。
どんなにがんばっても理解されない。
そんな仕事もあるかもしれない。
だからと言って手は抜けないじゃない。
主人公が娘の意図に気付くとき爽やかな風が吹く。

【899】

想いを寄せる女性の自宅が火事になった。
屋内には赤ん坊が取り残されているという。
煙が充満する屋内に救出に向かう男たち。
だが赤ん坊は見つからない。
焦る主人公だったが、悼みを抱える同僚が
赤ん坊を助けだし事なきを得た。だがしかし…

【迷い箱】

捨てようか迷ったら一旦この迷い箱に入れればいい。
受刑者たちを見守る結子は、過失によって子供を
殺してしまった碓井が自殺しないか危惧していた。
双葉文庫。珠玉の短編集。
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2015年01月10日

小説『本日、サービスデー』朱川湊人

【本日、サービスデー】

のらりくらりと日々を送っていたサラリーマン

俺こと鶴ケ崎雄一郎だったが、

会社から突き付けられたのは非情な退職勧告であった。

せめて大好きなビデオでも観て憂さを晴らそうとしたが

ビデオの中から変な女が呼びかけてきた。

今日、五月十六日はサービスデーなのよ。

発泡酒に酔ってしまったのか?と困惑する彼だったが

その日、味気なくそっけない日々と異なり

出会う人みな変にやさしく、つきまくる。

一体、これはどういうことなのか?

そして悪魔と名乗る変な女と天使と名乗る変な男が現れ…。


【東京しあわせクラブ】

殺人、自殺など事件が発生した際に存在する

想いがこもった「残留物」を持ち寄り、

批評しあう。そんな不謹慎な秘密の会合があった。


【あおぞら怪談】

先輩日下部さんのアパートには出るんです。

幽霊が。しかし、その実態は右手だけ。

しかも、なぜか日下部さんの身の回りを

かいがいしくせっせと掃除するので先輩は

愛着をもってしまっているようなのですが

僕は心配です。


【気合入門】

いばり散らす兄をぎゃふんと言わせたい弟は

ザリガニ釣りによって何を学びとるのか。

どんなことでも気合いだ。気合いだ。気合だぁ。


【蒼い窓辺にて】

目を覚ました早織が乗っていたのは三途の川を

渡る船の上だった。自殺によって未来を手放した

彼女だったが、渡し守が語るのは自分が本来

受けられるはずだった「ありがたい」未来だった。

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2014年05月05日

小説『漱石先生の事件簿 猫の巻』柳広司

100年前の傑作小説を新たな切り口で描いた

ミステリー小説。変人にして癇癪持ち、非常識な

「先生」こと夏目漱石の書生となった

探偵小説好きの「僕」を通して描く。

ちなみに名前がまだない猫も登場するが、

漱石先生他家族などからはあまり大事にされていない。

奇妙奇天烈摩訶不思議な「変人先生」と

その仲間たちとの非日常的「事件」を

ユーモアたっぷりに情感たっぷりに

当時の世相や流行を踏まえて

漱石先生張りの皮肉も交えて書生が解決していく。


角川文庫 

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2012年12月02日

小説【勝手にふるえてろ】綿矢りさ

長くあこがれ続け想い続けてきたイチ。

自分のことを好きだと言ってくれるニ。

26歳の江藤は、二人の「恋人」(妄想含む)を天秤にかけ

不安定な日々を送りながら

常人ではかんがえつかない行動を起こすのだった。



地味な学生時代、アニメオタクを経て東京の会社の経理課で

勤める主人公の江藤。中学生時代から好意を持ち続けるイチと

再会するため、ズルをして同窓会を開く。

かまわれ(いじられ)キャラだったイチとの数少ない想い出と

新たにはじまる関係を築こうと意気込む江藤。

絶滅した動物の話で盛り上がる二人だったが、

イチへの想いはあくまで一方通行でしかない。


同じ会社の営業課の体育会系のニからは

情熱的なアプローチを受けつきあうことに。

しかし、心の中では繊細なイチへの想いを断ち切れないし、

ニに対して必ずしも心を許しているわけではない。

簡単に言ってしまえば、好きではない。

唯一同期で心を許しているはずの同僚来留美によって

心をかき乱された江藤は驚きの行動をとることに。


江藤の心情の変化とキラリと光る文章のセンスが

おもしろいユニークな恋愛小説。170ページ。



【仲良くしようか】

不安定な女優のはかなく崩れそうな日常を描いた短編。

表現が難解でその雰囲気を楽しむ感じ。


文春文庫
勝手にふるえてろ (文春文庫) [文庫] / 綿矢 りさ (著); 文藝春秋 (刊)

ラベル:綿矢りさ
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2010年05月16日

『第三の時効』

「常勝軍団」。F県警部捜査課には

タイプの異なる優秀な三人の班長が在籍。

凶悪犯の検挙率はほぼ100%誇る。


だが、あくの強い彼らの競争心を煽る目的で

配置されたその人事は

確かに高い検挙率を出す一方で

彼らのボスである田畑をときに苦しめる。


署内には、ライバル心むきだしの殺伐とした

空気が生まれ、チームワークは崩壊。

だが優秀な刑事たちは、真犯人を暴き、

ときにトリックプレーで犯人逮捕を勝ち取る。


かつて子供時代に誘拐犯人に利用された

苦い過去を持つ矢代や、班長・田畑たちの

葛藤や活躍を描いた本格ミステリーであり、

大満足の傑作。表面的なことばと裏腹に

垣間見せる正義感が実に心地よいのだ。




第三の時効 (集英社文庫)

第三の時効 (集英社文庫)

  • 作者: 横山 秀夫
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2006/03/17
  • メディア: 文庫


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2008年07月03日

短編集「動機」横山秀夫


署内で、警察手帳が紛失した。その数30冊。

内部犯か?外部犯か?犯人の目的は?

表題作「動機」。日本推理作家協会賞。



「逆転の夏」

順風満帆の人生を歩んでいた男が、事件を機に転落。

元女子高生殺人犯の彼の元に、匿名で殺人依頼の電話が舞い込む。

はじめは、相手にしなかった彼だが、通帳にお金が振り込まれる

たびに、少しずつ相手の話を聞いてやり、いつしか離れてしまった

妻の心をお金でつなぐために……。


「ネタ元」

地方新聞の女性記者であるヒロインは、上昇志向の強い人間。

「認められていない」という想いを胸に、特ダネ探しに奔走。

「弱者を助けたい」という、若き日の信念はどこかに置き去りにし、

いつしか被害者を見ても、涙も流さなくなっていた。


そんな折、全国新聞から引き抜きの話しが舞い込む。自己分析を

したヒロインは、自分が持つネタ元(ネタ提供者)を理由に

引き抜かれたのでは?と思い当たる。


「密室の人」

裁判官が公判中に居眠り。しかも、妻の名を呼んでしまった。

瑣末なはずの事件が、内部の都合や私的なことも加わって、

主人公の磐石なはずの基盤を一気に瓦解する。



4編の社会派ミステリーを収録。290ページ。

いわゆる、笑える作品ではなく、唸らされるタイプの名作。

おすすめ同著として「半落ち」がある。
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2008年06月11日

小説「陰陽師」夢枕獏


まだ、人が闇や鬼といっしょに暮らしていた平安時代の話。

「しきがみ」と呼ばれる不思議な超能力や、陰陽道に通じ、
和歌の才に溢れた不思議な男がいた。その名を安倍清明。

清明には、気のおけない唯一無二の親友がいた。

天才的な音楽の才能を持ち、醍醐天皇の孫にして、
誰からも慕われる少年的なやさしさを持った武士。
その名を博雅。

彼らを頼って、都に現われる鬼や不思議な物の怪、
あやかしなどの退治の依頼がなされる。

「今昔物語」などを下地に描かれる世界観は独特で、
その内容に惹きこまれれば、シリーズ化されている
その後の作品も存分に楽しめる。古典に通じていれば、
そのおもしろさは、一層引き立つこと請け合いの作品。

妖怪退治と、二人の会話の掛け合い、言葉遊びなどが
おもしろい。


「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」

羅城門に、美しい音色を奏でる鬼が現われた。
鬼は、一級品の琵琶と交換に女性を要求。
清明と、博雅は鬼を退治せんと出かける。


「梔子の女」(くちなしの女)

口のない女が、現われた。何故か?

言葉には、文字には力があると語る清明の
言葉が生かされた傑作。
有名な歌合せの逸話も収録。


「黒川主」

ある日のことだった。もののけに見初められた孫娘が
夜中に自宅の鯉や鮎を、生でバリバリと食べている
ではないか。そして、現われた生臭い化け物。

二人は、もののけ退治を頼まれ、この奇妙な怪物と対決。


「蟇」(ひき)

封じ込められた妖怪。清明は、完全に妖怪の怨念を
封じ込めない方がよい。と説く。逃げられなければ、
多少その歪みが封じ込めた場所に現われても、それは
仕方がないことだと説く。


「鬼のみちゆき」

「迎えに来る」という約束を信じ、待ち続けた女は
男に会えぬまま非業の死を遂げた。恨みは募り、
新たにひとりの鬼が生まれた。悲しみは癒えるのか?


「白比丘尼」

人魚の肉を食らったばかりに、悲しい人生を宿命
づけられた女がいた。博雅のやさしさが溢れた作品。
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2008年04月29日

小説「姫椿」浅田次郎


「懈 シエ(xie)」

顔は麒麟、角は鹿、足は牛、尾は虎、体は鱗に被われている。
そして、善人と悪人の判別ができる不思議な動物……「シエ」。

愛猫が、死んでしまった「ひとりぼっち」の主人公は、
ペットショップで不思議な動物シエに出会います。

人が聞いたら「不幸」だという人生を歩みながら、決して悲観
せず、生きてきた主人公。しあわせになってほしい。号泣。

「不幸の分だけ、ちゃんと幸せになれるよ。ほんとだよ。」


「姫椿」

死ぬことしか考えていなかった主人公。
一時の隆盛はどこへやら。
今は、自分に生命保険をかけて、死ぬ場所を探していた。

そんな主人公が、夢か幻か、若かりし頃元恋人、現奥さんと
訪れた「銭湯」にたどり着く。神田川をほうふつとさせる世界観と、
「生きる」っていう意味を考えさせられる物語。


「再会」

私たちは、久しぶりに再会を果たした。しかし、成功者と思って
いた旧友から奇妙キテレツ、摩訶不思議な話を聞かされた。

同じ人間の、違う人生を垣間見た。ホラー色を帯びた傑作。


「マダムの咽仏」

マダムは完璧だった。
完璧な男であり、女であり、そして完璧な人間だった。

そんなマダムが死んだ。私たちは、マダムのすごさを再認識する。


「トラブル・メーカー」

会社のお荷物的な部署に回された、まじめだけが取り柄のような
平凡な中年男性。彼は、飛行機で乗り合わせた私にひとりごとを
つぶやくように語りだした。自分に起こった、事件とその顛末を。


「オリンポスの聖女」

かつて本気で愛した女性を、私は自分の都合で捨ててしまった。
彼女は、本物のパフォーマーであり、芸の道を邁進し続けていた。

私は、立ち尽くす……。


「零下の災厄」

本当にふとしたきっかけて、最悪の災厄に巻き込まれることがある。
それこそ、現実は小説より奇なりって具合に。彼は語りだした。

雑誌社の帰宅は遅い。深夜を回ることなんてザラだ。彼は、自宅の
マンションの近くで泥酔している、変な美女を見つけ、介抱する
ことになってしまう。氏素性のわからない女の正体は?


「永遠の緑」

競馬が大好きな大学の教授は、今日も競馬に出かける。
彼は、競馬場において「先生」と呼ばれ、何人かの競馬仲間と
競馬を堪能していた。彼には、気がかりがあった。愛娘のことだ。

教授のかつての恋愛と、愛娘の恋愛をからめた感動の物語。
美しすぎる珠玉の恋愛小説であり、ほろりと泣かされた。感動。


以上8編を収録した短編集。おすすめ度は、同著「鉄道員」と並ぶ
最高評価。再読したが、やはりすばらしかった。

http://blog.with2.net/link.php?598626
大学生人気ブログランキングへ。 おすすめは、
「セイジ」「肉欲企画。」「伝説のきりかぶ」「多重人格」。
押してくださると、私がしあわせな気持ちになります。
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2008年04月20日

小説「天きり松闇がたり 闇の花道」浅田次郎


夜の留置場に現われた謎の老人「天きり松」。

彼は、何を隠そう天下の大泥棒にして義賊として
尊敬を集めた「目細の安吉」一家にいた。

六尺に四方にしか聞こえないという夜盗の特技
闇がたりによって、今夜も大正ロマンの幕があがる。


「闇の花道」

9歳の松蔵は、ある日父のてびきによって「安吉」一家
と出会い、その一員となった。安吉は、極道界の大親分
銀次が、拘留中に留守を任せられるほどの器量の
持ち主であり、その実力は「官」ですらお墨つきを
与えていた。銀次が、放免となったその日事件が起こった。

筋を曲げない、潔い安吉の器の大きさに注目。

安吉……親分。中抜きが得意。
       →財布から現金のみを抜き取り、財布を戻す。

銀次……大親分。2000人の手下がいて、大時代的。古い任侠。


「槍の小輔」

山県有朋卿のお宝の「金時計」を盗んだ安吉一家のおこん。
蛇蝎のごとく嫌われていた有朋卿の悲哀と、おこんとの
「恋愛」をからめて描いた物語。盗んだつもりが盗まれて。

「盗みは小手先でするもんじゃござんせん。心意気で盗るもんだ」

おこん……美女。啖呵を切る姿がかっこいい。振り袖おこん。
     ゲンノマエが得意→正面から盗み取る。
     

「百万石の甍(いらか)」

百万石の家の妾の子英治は、松蔵が目標にしている兄貴分。
英治は、貧乏長屋の一本木な棟梁の息子として育てられ、
現在は安吉一家にいる。そんな英治に、100万石の花清から
「家に戻ってくれないか」という勝手な了見が告げられる。
英治は、見事な意趣返しを行い、この世には血よりも濃くて
大切なものがあることを知らしめる。

英治……筋を通す一本木の性格は、血よりも濃い父譲りの職人気質。
    人に媚びず、へつらわず、口数少なく、嘘はつかない。
    シャツの袖口、足袋の裏が常に真っ白という男の中の男。
    黄不動の異名を持つ。得意技は、「天切り」である。
    →瓦をおっぱずし、天上裏から忍びこむ。

「白縫華魁(しらぬいおいらん)」「衣紋坂(いもんざか)から」も
収録。一作50ページほどで、計250ページ。心意気、粋、いなせ。
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2008年04月07日

芥川賞「蹴りたい背中」綿矢りさ

クラスで「孤立」した女子高生の私ハルは、やはりクラスで

孤立している男子にな川(蜷川)の物語。


理科の実験中、暇を持て余していた私はプリントを切ることで

空白を埋めようとしていた。にな川は、熱心にファッション雑誌を

読みふけっていた。ひきながらも、「負けたな」と感じた私は、

表紙を飾っている女性がどこかで見たことがあることに気付く。


「この人に会ったことがある」

と言った私に対して、にな川は

「ウチに来てくれ」

と、恐ろしい情熱で懇願してきた。


モデルの女性(オリチャン)に対して、暗い情熱を傾けるにな川に

嫌悪感と同時に心魅かれてしまう私。その背中を蹴りたい。

しいたげたい。なんなんだ、この感情は?


乱読家の私だが、もう三回読んでしまった。何がすごいって

表現力とか描写力とかがすごい。そして、135ページと短編で

ありながら、濃縮された内容。最年少で芥川賞になったから

すごいんじゃなくて、この小説は作家が生涯に一冊残せるか

どうかっていうレベルの作品だと思う。また読みたくなる一冊。

最高におすすめの作品。

〜本文より抜粋〜

私の表情は私の知らないうちに、私の知らない気持ちを映し出して

いるのかもしれない。


近づいていったあの時に、おれ、あの人を今までで一番遠くに感じた


最高におすすめの同著「夢を与える」↓
http://book0001.seesaa.net/article/76190887.html
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2008年03月21日

恋愛短編集「姫君」山田詠美


「姫君」イチオシ

誇り高いわたくしは、ホームレス。でも、心は錦。まさに姫。

わたくしは、ひとりの男と出会った。


青臭い曲を奏でる摩周は、事故で自分の家族をいっぺんに失った

過去がある。誰も自分のことなんて、注目していない。

だが、姫子に出会った。そして二人の「主従関係」暮らしが始まる。


この作品は、コミカルでありながらほろ苦くて大好きです。

変にべたべたしていないのがよいです。ラストも好きです。

抱きたいのでも、抱きしめられたいのでもなく抱き合いたい。



「フェイスタ」

これは、コメディータッチの作品。いわゆる欲望まるだしの

「本能」が語り手という異色の作品なのですが、これがおもしろい。

「本能」の主は、容姿に恵まれず、職場の男性に恋をしているわけ

ですが、旧時代的な「待つ」女に徹し、その自らの姿を「純愛」と

捉えているわけです。で、「本能」は辛らつにこれをこきおろす。

こういう発想ができるのはすごいなぁと思うし、やはり文章が

うまいからできることです。



「MENU」

母が首をつった。ぼくが五歳の時だ。そして、叔父の家で

次男として迎え入れられ、現在に至る。ぼくは、20歳になった。


ぼくには、「ひとの幸せを願う」聖一兄と、やたら僕にからんで

くる聖子という妹がいる。ぼくは、基本的にシニカルで、

淡々としている。聖子は、ぼくが実の兄でないことに気付いていて

何かとからんでくる。ぼくは、ぼくのことを本当の意味で知っている

聖子を愛しいと思う。悲劇か、喜劇かは本人が決めることだ。



いわゆる恋愛小説の中では、もっともおもしろい作品だと思う。

山田さんは、直木賞も受賞しているが私はこの短編集の方が好き。


恋に対して皮肉っぽくて、でもやっぱり恋をしたくて、傷ついて

傷つけて……。そんな恋の物語を、透明感溢れる文章でユーモアも

交えながら描いていておすすめです。5つの短編集。官能的。

解説は、金原ひとみ。表紙は、新垣仁絵と豪華。
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2008年02月23日

おすすめ「夏と花火と私の死体」乙一




新感覚ホラー。ふとしたきっかけで、殺されてしまった9歳の私。

殺したのは同級生の弥生ちゃん。弥生ちゃんは、11歳の兄健君と

いっしょに私の死体を隠すことにした。田舎町の夏を舞台に、

私は「魂」になって二人の大冒険を見守る。長くスリリングな

四日間が始まる。


童謡「かごめかごめ」の挿入や、死体隠しを平然と行う健君と

それを手伝う弥生ちゃんが不気味で怖い。犯罪者予備軍的な

素質を持ったこどもたちを描いた傑作であり、文章も巧み。

改めて読んで、こんなに上手かったのかと唸った。

17歳当時の作品でありながら、独創性や作品に漂う雰囲気は

すでに乙一作品をほうふつとさせていて、おすすめ。☆☆☆。


「優子」

鳥越家に家政婦としてやってきた清音。

端正な人形を思わせる主人に淡い感情を持ちながら、仕事に励む。

清音には、気になることがあった。

主人の奥さんである優子を、清音は見たことがない。

ふすまを通して、主人との会話を聞くことはあるのだが、

主人は優子に会わせてくれない。


村の人たちと疎遠な鳥越家の秘密、漠然とした不安と好奇心を

抑えきれなくなった清音は、開けてはいけないと言われていた

扉(ふすま)を開けてしまう。そこで見たものは、人形だった。

夥しい数の人形だった。イチオシホラー作品。


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2008年02月03日

短編集「雪が降る」藤原伊織


「雪が降る」イチオシ

「母を殺したのは、志村さん、あなたですね」

親友であり、かつての恋敵である高橋の息子から届いた

メールによって、志村は20年前の恋とあの日のほろ苦い

出来事を思い出す。そうかつて本気で愛した陽子はまるで

妖精のようで、あの日志村は、今まで「空白の疾走」を

続けていたことに気付いてしまった。

クレームマニアを煙に巻いたり、会社で起こる大騒動など

どこ吹く風だった志村だが、高橋の息子に対しては嘘を

つけない。そして、自分の気持ちにも。読後感がよい作品。


「台風」おすすめ

人を殺した人間には、かつて一度しかあったことはない。

という文章から始まる。切なくて、やさしい物語。

人を殺したり、人に殺されるきっかけなんて些細なこと

なのかもしれない。だからこそ、言動には注意が必要。


「トマト」

「わたしはね、人魚なのよ」彼女はそういった。

もちろん、僕は人魚に会ったのは初めてだった。

彼女はトマトを丸かじりしながら、他愛のない

話をし、大物政治家の末端秘書である僕も自分の

しょぼい身の上話をするという8ページの短編。


「紅の樹」おすすめ

主人公は、銃撃事件を起こしたことのある元ヤクザ。

知り合いになった母娘のために、拳銃片手に暴力団と

闘うことに……。かつて、拳銃を用いた時とは全く

別の理由から。信頼してくれた人との約束を守る為に。

ハードボイルド作家である著者の約100ページの中篇。


など、全6編を収録したおすすめの短編集。

「テロリストのパラソル」で直木賞・江戸川乱歩賞を
ダブル受賞した藤原伊織さんの珠玉の短編集。

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2008年01月17日

短編集「つめたいよるに」江国香織


江国さんのおすすめ短編集で、21作品を収録。SFものも含む。

〜作品紹介〜

「僕はジャングルに住みたい」

小学校の卒業を前にして、僕は不思議とものさびしい気持ちに
なったんだ。好きな野村さんとも、ちょっとなじめない大島先生
とも別れちゃうくらいなら僕はジャングルに野村さんと住みたい。

素直になれない少年の繊細な感情と、「寄せ書き」を通して
語られる言葉にできない思いが愛しい。


「桃子」

住職は、語る。19歳の修行僧と7歳の少女との恋を。

住職は、当時19歳だった修行僧天隆がなぜ呆けたようになって
しまったのか。

芥川作品をほうふつとさせる不思議な物語。


「鬼ばばあ」

こども達の間では、その養老院は敬遠されていた。

ボケてしまった人たちがいっぱいいて、子供たちをハンバーグに
しているとか、血を吸うとか怖いうわさがいっぱいあったからだ。

小学生の主人公は、ボールを取りにやってきた際に自分と似た
名前のおばあさんと友達になった。

少年は、そういったうわさが嘘であるとわかり、日に日に養老院に
通うことが多くなった。でも……。

短編集の中で最も長い16ページ。他の作品は4〜9ページ程度で
構成されていて、電車などでもさくっと読める短編集。
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2008年01月08日

大抒情詩「レ・ミゼラブル」ユゴー


題名を日本語訳すると、「あぁ、無情」。ぴったりの訳。

主人公ジャンバルジャンは、弟たちの飢えを満たす為にパンを
盗み、捕まってしまう。長い刑期を終え、出所したジャンは、
再び盗みをはたらくが真心に触れ、人間らしさを取り戻していく
というストーリー。

「銀の食器」のエピソードは有名。また、演劇の題材としても
人気・評価が高い作品。

世の中の無常さと、人間の生きる意味を問いかける一大抒情詩。
市長になり、過酷な運命の少女を譲り受けたジャンだったが…。

ものすごく長い本なので、「本の虫」を自称する方に挑戦して
ほしい作品。期待を裏切らない名作。

小説で読むと、2000ページを超える大長編。
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2007年12月24日

感動「フランダースの犬」ウィーダ 訳者村岡花子

小説「フランダースの犬」ウィーダ
約60ページ 新潮文庫 訳者村岡花子氏

過酷な労働を強いられていた犬のパトラッシュ。
(原作ではパトラシエ)は、フランダース生まれ。

衰弱し死にかけていたが、彼に近寄ってきた人たち
がいた。天使のようなネロ少年とおじいさんである。

献身的な看護と、愛情によりパトラシエは息を吹き返す。

清貧を絵に描いたような、二人との出会いによって、

パトラシエの胸に大きな愛が目ざめた。
それは命あるかぎり一度もゆるがなかった。(本文より)

パトラッシュは、貧しい二人の手助けをしようと、
牛乳配達の手綱を、自らの意思で引っ張る。

老人の力では、決して楽ではなかったその仕事は、
パトラッシュのおかげで随分と助けられた。

貧しく寄る辺のない3人は、助け合って生きる。

やがて、年老いたおじいさんに代わって、成長した
ネロ少年と共にパトラッシュは仕事をするようになった。

パトラッシュは、ネロ少年が協会の中で熱心に何かを
見ているのが気になる。犬である自分は教会に入れない。
ネロは、大画家ルーベンスの描くキリストの絵に夢中だ。
 
でもその名画にはおおいがされていて、貧乏なネロには
見られない。(拝観料が必要なので、金持ちしか見られない)
ネロは故に、余計に恋焦がれる。ネロは、絵に魅せられ
ゆくゆくは画家になりたいと考えていた。
 
ネロとパトラッシュには、友達がいた。この地方の名士の
娘であるアロアだ。ネロは、アロアを描いた。それは、
大変優れていた。ネロのアロアに対する想いが垣間見える
ようだ。アロアの父は、この絵を買ってもいいと銅貨を
渡そうとするが、ネロは固辞する。アロアの絵で、お金を
もらいたくなかったからだ。アロアの父は、ネロがアロアと
親しくなるのを警戒するあまり、ネロに対して冷たく接する。

誤解や、偏見によってネロとパトラッシュは村の人々から
冷たい仕打ちを受ける。絶望の中で、ネロは画家になって
見返してみせるとパトラッシュに強く誓う。

立派な画家になれば、みんな幸せになれるはずだ。

王の権力よりも不滅な偉大なもの、それは「未来」だ。(本文より)

その小さな希望と野心を胸に、彼は熱心に絵を描く。

絵のコンクールがあって、偉大な画家たちが審査をする。

その結果次第では、前途に輝くような未来が開かれる…。

しかし結果を見る前に、おじいさんは亡くなる。

因業(いんごう)な家主によって、家を立ち退かなくては
いけなくなったネロとパトラッシュは、思い出の家を出て
寒い道を行く。

そして、運命のクリスマスイブの日。
彼の絵は入選していなかった。

失意の中で、パトラッシュと雪の町を歩くネロは大金を拾う。
それは、アロアの父が落としたものだった。

正直なネロは、アロアの家にそれを届け、パトラッシュを
引き取ってくれることを乞い願い、再び雪の町に飛び出す。

ネロを追いかけようとする、パトラッシュ。しかし、
アロアに引き止められていて、中々彼の後を追えない。

やっとドアが開き、ネロを必死で追いかけるパトラッシュ。

ネロが行く場所は、ルーベンスの絵がかけられている
協会に決まっている。パトラッシュは協会にひた走る。

感動的な名作小説。これは、泣けます。訳者の表現力も巧み。
パトラッシュの視点で、小説が書かれているのが斬新です。

また、小説に留まらず、絵本、アニメ化、映画化されている
作品なので、人によってパトラッシュのイメージは無数に
存在すると思います。余談ですが、生前陽の目をみることが
なかった天才画家は無数にいます。

有名な人では、ゴッホとかがそうです。ネロとパトラッシュの
カリスマ性、人気はやはりその悲劇的な要素に起因する気がします。
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2007年12月20日

短編集「終末のフール」伊坂幸太郎


「8年後に巨大な隕石が地球に衝突し、人類が滅亡する」
というSF小説。人々は、暴動を起こしたり、自殺したり、
秩序が崩壊するも、あと3年で隕石が衝突という
カウントダウンを前にして、不思議と街は一定の秩序を
取り戻した。太鼓判を押す、おすすめの8つの短編集。
「容疑者Xの献身」と並んで、イチオシの本。280ページ。


「篭城のビール」イチオシ

報道の自由によって、妹と母を殺された兄弟は、
彼らの幸せを奪った男を殺す為にアパートに篭城する。

事件の被害者家族を襲う悲劇と、ギリギリの攻防、
罪の意識を描いた傑作。号泣、感動系の物語。


「鋼鉄のウール」イチオシ

キックボクシングにまい進する、二人の男の姿を描く。
かっこいい物語。世界が、混乱している今こそ強くなる
チャンスだと言い切る男の愚直さとあり方とは。
潔い生き方は、やはり胸を打つという好例の物語。

名言:「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」
   「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの
                 生き方なんですか?」


「演劇のオール」イチオシ

私は演じる。おばあさんの娘を。妹の姉を。
二人の子供のお母さんを。犬の飼い主を。

家族って元々、他人なんだしいっそみんなで
家族になろうかっていう物語。


同著「重力ピエロ」がおもしろかったので、読んでみたの
ですが、期待以上の内容でした。印象に残るフレーズとか
言葉を紡ぐのに長けた作家だと思います。
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2007年12月18日

芥川賞「猛スピードで母は」長嶋有


私は久しぶりに会った弟と、麦チョコをかじりながら振り返る。

あの穏やかな、夏の思い出を。

ふいに母は家出をした。そして、母の代わりのように、
父の恋人洋子さんは、やってきた。

自由奔放で、かっこいい自転車に乗って、颯爽としている
洋子さんと私はともだちになった。不思議と母に対して、
後ろめたい気持ちは起こらなかった。「サイドカーに犬」


たくましく、豪快な母と暮らす慎。母は「結婚するかもしれない」
と恋人慎一を連れてくる。小学生の僕には、なす術がない。
アクセルを踏み込んだ母は、もう誰にも止められない。

あんたはなんでもやりな。私はなにも反対しないから

若い時はね、こんな風に(手を大きく広げて)可能性がね……
 大きく広がっているんだ」


表題作「猛スピードで母は」の2編。芥川賞受賞作。
さくっと読めちゃうおすすめの快作。スピード感あり。
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2007年12月09日

直木賞「鉄道員 ぽっぽや」浅田次郎

鉄道員として、愚直に乗客を、
駅を見守り続けてきた乙松。
そんな乙松の下に少女が尋ねて来て。
切なくて泣けます。(鉄道員)

家の中に入り込んできた悪魔を
追い出す話。(悪魔)

孫娘のピンチに、死んだはずの祖父が
幽霊として登場する(うらぼんえ)
など多彩な全8編収録。
短編集としては、最高のおすすめ作品。

同著のおすすめとして
「天国までの100参る」(長編)
「椿山課長の七日間」(長編)
「勇気凛々ルリの色」(エッセイ)などがあります。
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「かたみ歌」朱川湊人(しゅかわみなと)

直木賞「花まんま」がすごくよかったですが、この短編集もいいです。

1970年頃の東京の下町を舞台に、7つの物語が展開され、どの物語も
おすすめです。220ページ。かつての名曲を引用しつつ、語られる
どこか切なく、愛しいストーリー。特にイチオシ作品は、「栞の恋」。

「栞の恋」(しおりの恋)
タイガースのサリー似の男に恋をした主人公。彼が、古本屋で熱心に
本を読んでいることに気付く。どんな本を読んでいるのだろう…と
感じた彼女は、彼が読んでいた本を開いてみた。そこで彼女は、
小さなしおりを見つけ、自分のメッセージを書こうと思いつく。

まだ、ケータイ電話がなかった時代に、行き交うしおりのやりとりと
ひとひねり加えられたストーリーに驚嘆。

名言
 泣いて死んだ者が帰ってくるなら、いくらでも泣けばいい。
 けれど実際、過ぎた涙は何の役にも立たない。 
 涙は、その味を噛み締めて立ち上がらせるためのものだ。「おんなごころ」より引用


名調子の歌
 「森とんかつ 泉ニンニク かーこんにゃく まれてんぷら」

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2007年12月06日

名作短編集「我らが隣人の犯罪」宮部みゆき


願のタウンハウスに引っ越してきた三田村一家。
しかし、隣人の女性が飼う犬のスピッツミリーの
鳴き声に、多大な迷惑を被っていた。しかも、
飼い主が言ってわかるような人物ではなかった。
中学生の誠は、妹智子と毅彦おじさんと組んで
ミリーの誘拐を決断。思わぬ「副産物」を獲得する。(表題作より)


突如、赤ちゃんと共に家に上がりこんできた女。
僕に、この赤ちゃんはあなたのお父さんと私の
子だから、あなたの妹よと、とんでもないことを
言い出した。予想外の展開と、感動的なラスト。(この子誰の子)


6年1組の小学校の卒業研究の課題は
「サボテンがテレパシーによって
 人間との会話が成り立つのか」という
奇怪な内容。彼らを温かい目で見守ってきた教頭と、
生徒たちの奇行に隠された「真実」に号泣。(サボテンの花)

他2編を含む全5編。約230ページ。
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2007年11月25日

直木賞「花まんま」朱川湊人(しゅかわみなと)




約255ページ。全6編の短編集。舞台は、一昔前の大阪。

主人公は小学生だが、内容は完全に大人向けの内容。本格派。


「トカビの夜」 ホラー

幼くしてチェンホは死んだ。朝鮮人だったチェンホを、仲間外れに

してしまったことが悔やまれる。チェンホは、「トカビ」(幽霊)に

なって現われる。切なさの中に、温かさを感じる物語。


「妖精生物」甘美、恋愛

「妖精生物」は、ビンの中でクラゲのようにたゆたっている。

うさんくさいおっちゃんから買ったこの代物は、「幸せ」を

運んでくれると言う。そっと指先に乗せてみると、何とも

言えないような不思議な感覚が自分の中で駆け巡る。

「誰かが幸せになると、他の誰かが不幸せになる」という

悲しすぎる物語。読後感はちょっと悪いが、納得できる内容。


「まか不思議」コメディー

調子のよいおっちゃん(叔父)が、死んでしまった。霊柩車で

見送る際に、なぜか霊柩車が動かなくなってしまう。きっと

おっちゃんは、愛人であるカオルさんに見送ってもらいたいんや。


「花まんま」ヒューマンドラマ

フミ子は、俺の妹だ。だが、変に大人びているし、度を越した

わがままなので、俺はうんざりしている。ある日、フミ子は

自分が「生まれかわり」だと言い始めた。妹に懇願されて、

俺はかつてのフミ子の親達の所に連れて行く。だって俺は、

フミ子の兄なのだから……。感動的な名作。


「送りん婆」ホラー

送りん婆は、「言霊」(ことだま)を使って、人を死に至らす。

私は、送りん婆と一緒に人の生き死にに関わる。怖いです。


「凍蝶」ヒューマンドラマ イチオシ

いわれのない「差別」によって、孤独を強いられる主人公。

ひとりぼっちでは、一日は長すぎる。墓地に訪れた主人公は、

美しいミワという女性と出会い友達になった。水曜日が、

待ち遠しい。彼女に会えるのは、決まって水曜日だった。

鮮烈な思い出と、悲しすぎる運命。号泣。ほろ苦い。


凍蝶……………リュウキュウアサギマダラ

いてちょう  一本の木に、何百何千という蝶が群がる様は、 
       まるで花が咲いているようだと言われる。
       そうすることで、冬を越すことができる。
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 20:32| Comment(0) | TrackBack(0) | すごくおすすめの短編・短編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする