2008年03月21日

恋愛短編集「姫君」山田詠美


「姫君」イチオシ

誇り高いわたくしは、ホームレス。でも、心は錦。まさに姫。

わたくしは、ひとりの男と出会った。


青臭い曲を奏でる摩周は、事故で自分の家族をいっぺんに失った

過去がある。誰も自分のことなんて、注目していない。

だが、姫子に出会った。そして二人の「主従関係」暮らしが始まる。


この作品は、コミカルでありながらほろ苦くて大好きです。

変にべたべたしていないのがよいです。ラストも好きです。

抱きたいのでも、抱きしめられたいのでもなく抱き合いたい。



「フェイスタ」

これは、コメディータッチの作品。いわゆる欲望まるだしの

「本能」が語り手という異色の作品なのですが、これがおもしろい。

「本能」の主は、容姿に恵まれず、職場の男性に恋をしているわけ

ですが、旧時代的な「待つ」女に徹し、その自らの姿を「純愛」と

捉えているわけです。で、「本能」は辛らつにこれをこきおろす。

こういう発想ができるのはすごいなぁと思うし、やはり文章が

うまいからできることです。



「MENU」

母が首をつった。ぼくが五歳の時だ。そして、叔父の家で

次男として迎え入れられ、現在に至る。ぼくは、20歳になった。


ぼくには、「ひとの幸せを願う」聖一兄と、やたら僕にからんで

くる聖子という妹がいる。ぼくは、基本的にシニカルで、

淡々としている。聖子は、ぼくが実の兄でないことに気付いていて

何かとからんでくる。ぼくは、ぼくのことを本当の意味で知っている

聖子を愛しいと思う。悲劇か、喜劇かは本人が決めることだ。



いわゆる恋愛小説の中では、もっともおもしろい作品だと思う。

山田さんは、直木賞も受賞しているが私はこの短編集の方が好き。


恋に対して皮肉っぽくて、でもやっぱり恋をしたくて、傷ついて

傷つけて……。そんな恋の物語を、透明感溢れる文章でユーモアも

交えながら描いていておすすめです。5つの短編集。官能的。

解説は、金原ひとみ。表紙は、新垣仁絵と豪華。
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 19:26| Comment(0) | TrackBack(0) | すごくおすすめの短編・短編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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