新感覚ホラー。ふとしたきっかけで、殺されてしまった9歳の私。
殺したのは同級生の弥生ちゃん。弥生ちゃんは、11歳の兄健君と
いっしょに私の死体を隠すことにした。田舎町の夏を舞台に、
私は「魂」になって二人の大冒険を見守る。長くスリリングな
四日間が始まる。
童謡「かごめかごめ」の挿入や、死体隠しを平然と行う健君と
それを手伝う弥生ちゃんが不気味で怖い。犯罪者予備軍的な
素質を持ったこどもたちを描いた傑作であり、文章も巧み。
改めて読んで、こんなに上手かったのかと唸った。
17歳当時の作品でありながら、独創性や作品に漂う雰囲気は
すでに乙一作品をほうふつとさせていて、おすすめ。☆☆☆。
「優子」
鳥越家に家政婦としてやってきた清音。
端正な人形を思わせる主人に淡い感情を持ちながら、仕事に励む。
清音には、気になることがあった。
主人の奥さんである優子を、清音は見たことがない。
ふすまを通して、主人との会話を聞くことはあるのだが、
主人は優子に会わせてくれない。
村の人たちと疎遠な鳥越家の秘密、漠然とした不安と好奇心を
抑えきれなくなった清音は、開けてはいけないと言われていた
扉(ふすま)を開けてしまう。そこで見たものは、人形だった。
夥しい数の人形だった。イチオシホラー作品。