転校生を繰り返す孤独な僕は、僕にしか見えない
「ヒカル」という少年を作り出す。底なしに明るいヒカルは、
僕の支えであり、殺伐とした転向先での唯一のオアシスだ。
冷たい視線や、悪意にみちあふれた教室、家庭は崩壊寸前。
僕は居場所を求めて、ヒカルといっしょに街を歩く。
ぼろぼろになりながら、「ヒーロー」という名の偶像に
追いすがる少年が、自立と成長をめざす切ない物語。
その姿は、とても痛々しくて心を打つ。そして、心の荒廃が
彼の転機をうむ。
読んでいて、「楽しい」と感じる作品ではありませんが、
芥川賞的な文章のうまさ、透明感を感じる作品です。
伝言ダイヤルで知り合ったサキは、今ならネットでの出会い
になるのでしょう。初めて読んだのが中学生の時だから、
思えば時代が大きく動いたのだと改めて感じます。
第13回すばる文学賞受賞作。
同著として、「海峡の光」もおすすめです。