「薬指の標本」 約80ページ
工場の事故によって、薬指の先を失くしてしまった私。
新しい職場として、「標本室」を選んだ。
楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、3つのキノコ、火傷の傷跡……。
人々の思い出を、「標本」の中に封じ込めていく標本技術士と私。
ある日、私は技術士から素敵な靴を渡された。
「毎日この靴を履いてほしい」という彼の言葉を聞き入れ、
靴を履くと、ぴったりだった。
そして、二人の愛は、ひそやかに進んでいくのだが……。
意味深なラストが印象的な、ちょっと怖くて素敵な小説。
私は、彼の愛を受け入れたのだと解釈しました。
「六角形の小部屋」 約90ページ
スポーツクラブの更衣室で、私はミドリさんと出会った。
そして、六角形の語り小部屋に私は辿り着いた。
小部屋では、自分を見つめ、心を吐露できる。
不思議な空間で、私は自分自身と対峙する。
今日も、背中の痛みが私を襲う。
誰にも言えない自分の気持ちを、吐き出すのが目的の小部屋。
身も蓋もない言い方をすれば、「独り言」なのだが、主人公は
言葉にできないやるせない気持ちや過去に整理をつけてしまい
たかったのだと思う。おすすめの力作です。