2020年04月08日

小説『去年の冬、きみと別れ』中村文則

死刑囚木原坂雄大を取材し、本を出すことを編集者から
命じられた僕は面会に出かける。女性二人を焼死させた
猟奇殺人犯の彼は有名な写真家であった
怪物のような存在と思われた木原坂だが、他人からの
影響を受けやすく、特に姉に対する執着が強いという
印象を受けた。僕は思う。木原坂は犯人ではないのでは?

父からの虐待、母の失踪、養護施設で育ったという
姉弟はよくも悪くも強い結びつきがある。
写真の被写体に対し病的な強い執着心を抱く弟。
そして、どこか人生投げやりでアンニュイな雰囲気の姉。

姉は弟の犯罪を真っ向から否定したが、状況証拠から
木原坂は猟奇的な連続殺人犯として死刑確定し服役中。
蠱惑的な姉の誘惑もあり、思わず口づけを交わす僕。
「私を助けて」
姉のつぶやきが印象的だ。

僕は本を出すことを断念し編集者に失望される。
この物語には多くの謎や伏線がちりばめられている。
一読しただけで納得できずわからない箇所も多い、
200ページ弱なので読み返したくなるダークミステリー。
芥川龍之介の「地獄変」が引用され木原坂の犯行動機に
迫っているが、この話自体が暗喩なのではないか。
幻冬舎文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:33| Comment(0) | おすすめの長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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