エッセイである。あふれる知性、にじみ出る考察、
日常や自然界に潜む悪意や悪質なあれこれに迫る。
感銘を受けたホラーやSF小説に対して鋭い視点で切り込む。
そこから垣間見えるのは、あくなき探究心と理解の深さ。
そして、莫大な読書量が血となり肉となり、
そのまま貴志先生が残した名作の下地になっている。
作中には「怖い絵」のような名画や美術品に対する
アプローチ、考察もされていてこれも楽しめた。
中には阪神タイガースへの強力な愛情を感じる話や
グロテスクだが生命力あふれるスッポンを食べる話、
なぜか意欲的に早口言葉を創作する話、
こどものときにバターコーヒーにはまった話など
あえて他愛のないことや言葉遊びに興ずる回もある。
バラエティーに富んだ内容である。文春文庫