2019年02月25日

小説『少女地獄』夢野久作

飛び込み面接により看護婦となった姫草ユリ子は
虚構に生きる人たらしの天才美少女。
その天真爛漫な言動や献身的な態度は
老若男女問わず好意を抱かせ夢中にさせる。
しかしそんな彼女には全く別の裏の顔があった。
人並み外れた虚言癖である。
嘘を嘘で塗り固める…。現代のキラキラ女子のような
妄想、仮想、幻想に生きる儚い存在。
彼女の自尊心を満足させ、成立させるためには
もはや自殺し遺書を残すという手段しかなかったのか。

6つの手紙から構成された短編「殺人リレー」。

火星人と呼ばれた女学生甘川歌枝の戦いとは?
小学生の頃から飛び抜けた身長、身体能力を持ち
異彩を放つ歌枝は周囲から疎まれ生きてきた。
唯一無二の親友であるアイ子嬢を除けば味方はない。
物語はいわゆる暴投より新聞沙汰になった
不可思議な事件の謎が提示される。
歌枝がアイ子に向けた手紙により全容が語られていく
という書簡形式によって物語が展開される。
聖人君子として世間から高く評価されている
校長は真逆の裏の顔を持っていた。
彼もある意味、虚構に生きる二重人格者。
端的に言えば「ひとでなし」だった。

1934〜1936年に発表された3篇による
表題作『少女地獄』は書簡体による傑作集。
当時の女性が男性優位の社会において生きることの
息苦しさや難しさを描いている。

「地獄」と明言される現世の世界において
逃避的に自殺という道を選択する者もいるだろう。
作品としては、小娘ユリ子に手玉に取られる
子気味よさがあるのが第一部。
ユリ子に嘘をつかれ、だまされたとわかっても
仕方ないなぁと笑って許せてしまう。
憎みきれないキャラクターだ。
同時に彼女は自分が気に入っている今の立場を
守るために脅しをかける裏番的な怖い顔も見せる。

第三部の歌枝は基本的におひとよしの善人だが
両親からも疎まれ邪魔にされていることを知る。
信頼していた人物から裏切られる。
そういった人の持つ醜い部分を見てしまい
事件を起こす悲劇的なヒロインである。
この行動力に優れた全く異なる魅力的なヒロインが
登場する少女地獄。蓋し名作と言えよう。

上流階級の人間相手に恐喝を行う男が
的にかけた相手が告白する驚愕の事実とは?
「けむりを吐かぬ煙突」など4編を収録。角川文庫

同著代表作として名作『ドグラ・マグラ』があるが
難解でかつ長編なので、読みやすく理解しやすい。
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:29| Comment(0) | すごくおすすめの短編・短編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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