2018年10月18日

小説『握る男』原宏一

留置場の中で自分の人生を決定づけた男の死を知る。
人たらしの天才、稀代の悪党でもある盟友が自殺?
兄弟子でありながらゲソこと徳武光一郎によって
急所をつかまれた金森は激動の過去を想起する。

昭和56年。両国のよくある寿司屋で
一番の下っ端として働いていた金森。
小柄の少年ゲソがやってきて店で働くことに。
よく気が利き、人の懐に入るのがうまく、
努力を惜しまないことで金森を圧倒する。
特に金森を苦しめていた兄弟子をゲソの画策により
追い出したことにより頭が上がらなくなる。
また両国ということもあり、目をかけた力士と
懇意となりゲソはこの人気者も活用することに。

人なつっこい笑顔を浮かべながら時折顔をのぞかせる
野望を秘めた裏の顔。この国の食(食品業界)を牛耳る
という大言壮語かと思われたゲソの言葉。
ピンチをチャンスに変えてしまうこの男は
無謀と思われた夢をどんどん現実味を帯びていく。
ゲソは金森を自分の片腕、番頭にすると宣言した。
彼に掌握され反発しながらもどこかでゲソの夢を
手助けする道を選んでいた金森。

目的のためなら手段を選ばず巨大化していく野望。
そして組織の中で彼に振り回されながら、
時に違法行為に手を染める者も現れ…。
この権力構造は新興宗教組織を思わせるが
急成長を遂げた企業や既存の大企業にも通じる
ものがあるのだろうな。

権力の暴走の怖さもさることながら、この作品は
「人」をしっかり描ききっている所が特筆すべき点。
ゲソと金森の不思議な共存関係や彼らに関わる
人々との情や愛憎、意外な関係を知るとき
物語に厚み、深みが加わりより味わい深い作品に。
角川文庫 420ページ
ラベル:原宏一 おすすめ
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:04| Comment(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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