2018年10月08日

小説『砂の女』安部公房

平凡な教師が砂の多い海沿いの集落を訪れる。
昆虫採集が目的で、砂を研究する彼は
新種が発見されやすいハエやハンミョウに着目。
砂地という特異性のあるこの地域では
まだ未発見の生物が見つかるかもしれない。
砂の着眼点は当たり、男は美しいハンミョウを
発見するが逃げられてしまう。
彼は、近隣のおじさんに助言に従い、
集落の家に泊めてもらうことにした。
そこは妙齢の女性(寡婦)がひとりだけいる家。

一日だけ泊めてもらうつもりだった
その家は異常なほど砂まみれになる家だった。
砂を掻き出すために精力的に動かなければ
そのまま人間が埋まってしまうような。
家の中から脱出方法できない量の砂が
家の中に侵食してくる恐ろしい地獄のような場所。

まるで、アリじごくに捕らえられたアリのようだ。
男は、3日分の休暇して申告しておらず
ここから出たいと懇願する。
だが女や集落に住む人間はそれを許してくれない。
集落の者たちの協力ではしごをおろして
もらわなければ家の外にも出られない。
男同様に奸計にはまり、脱出を試みた者は失敗し
命を落とした者もいるという。
集落の民は彼をここに住まわせ住民にしようと
目論んでいた。

彼は女を説得したり、脅したり、時に暴力をふるったりし、
なんとか脱出を試みるのだが……。

どんな過酷な環境でも人は生きられる。
そこには妥協やある種の諦観があっても
人は希望を見いだしそれでも生きていける。

人間の精神性とか、社会に対する批判とか、
マイノリティーの悲哀とか、村社会のこととか、
人間の持つ生臭さとか、あきらめとか…。

もがいたり足掻いた所で足下から世界が崩れ
自分よりももっと巨大な存在にやりこめられる。
やるせなさと共にある種の開き直りによって
生きていこうとする生き物の強さを感じた。
哲学的で難解なので読むたびに新しい発見がある
タイプの名作 新潮文庫
ラベル:安部公房
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 10:35| Comment(0) | 日本の 世界の名作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント