2018年09月18日

小説『だから荒野』桐野夏生

46歳主婦の朋美は誕生日に怒りを爆発させた。
身勝手な言動を繰り返す夫と二人の息子による
長年の蓄積は消化されなかった。
衝動的に自動車で出奔した彼女は、
高速道路で長崎めざして走り出した。

家族やしがらみとの決別、さみしさや孤独の中にある
解放感、新しい世界を切り開こうと荒野を駆ける。
捨てられた夫は懲りも反省もせず愚行に及ぶ。

元々思いやりや家族の絆が希薄だった森村家は
空中分解し、問題が浮き彫りになる。
足りなかったあれこれ、失って気づくこと、
新しい人間関係を構築したり、事件に遭遇。

思い切りのよい主人公が決断をした結果、
超然とした大人物山岡に出会う。
山岡はボランティアで戦争体験を語る
90歳過ぎの老人。最終章人間の魂では
この山岡さんの説諭によって涙がとまらない。

荒野に生きる覚悟、現実と向き合う覚悟、
人と向き合う覚悟、他者への愛、罪を許す心…
家族間の係争という身近で個人レベルの問題。
そして絶対的かつ理不尽な暴力や災害に対する怒り、
悲憤という大きな問題もからめた描かれている。
文春文庫 440ページ
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:14| Comment(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント