2018年08月04日

小説『ひらいて』綿矢りさ

おかえり。
『インストール』、『蹴りたい背中』以降物足りなさを
感じていた綿矢りさファンとしてはこの作品は
そう言いたくなる傑作長編だ。主人公である
女子高生愛がエゴむき出しの恋愛感情によって
突き進み壊れていく様は狂気そのもの。
主人公愛の必死さ、ダメさに心を揺さぶられる。
先の名作2つと比肩する作品に仕上がっている。

綿矢りさ先生は『夢を与える』で正攻法でない
やり方でかりそめの愛を獲得した人物を描いている。
本作でもアンフェアの誹りを免れない主人公が登場し、
身勝手な言動を繰り返す。
主人公に共感できない部分も多々あるが、
恋は盲目であり、作中に登場する聖書に隠喩される
ように有史以来人間は罪深い存在。
あがき、もがき苦しむ姿は青春そのもの。

モテ女子愛はクラスメイトで地味男子である
たとえに惹かれ、人知れず注目している。
彼が机に忍ばせている手紙に興味を抱き、
同級生たちと共に深夜の学校に忍び込む。
手紙を盗み見た愛は、たとえが同級生の
美雪とやりとりしている事実に驚愕する。
糖尿病であることを公言し、注射する姿を
披露したかつてのクラスメイト美雪。
その行為から疎遠になり、教室でも浮いた
存在となった彼女とたとえが付き合っている?

合理的なリアリストだったはずの愛は
恋愛感情をこじらせてしまう。
修行僧のような男子高校生たとえ、
健気な薄幸の美少女美雪。
正しい、正しくないかはさておき、
精神的なつながりを重視する恋人たちに対し、
主人公はアンフェアなアプローチで対抗する。
エゴが表のテーマで贖罪と許しが裏のテーマ。
新潮文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 08:00| Comment(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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