2017年06月10日

小説『犯人に告ぐ』雫井脩介

児童誘拐事件が発生し、身代金を要求する犯人を追う
神奈川県警は警視庁との合同捜査を決行。
しかし、手柄をめざす巻島史彦警視を提言により
神奈川県警が主導をめぐる捜査となった。
事件性及び注目の集まるこの事件は、最悪の結果に終わる。
記者会見で矢面に立たされた巻島は裕次郎の兄ばりの
大失態を演じ、非難を浴び事件は後味の悪い幕引きとなる。
事件後犯人と思しき「ワシ」を名乗る者から手紙が届き、
自己を弁護し、責任を転嫁する身勝手な内容だった。
この事件以降神奈川県警の不祥事が相次ぎ、
それから6年の歳月が流れた。

バッドマンを名乗る児童連続殺人事件が川崎で発生。
捜査は難航し住民の不安と不満は募る一方だった。
人を喰ったかのような犯行声明文に歯噛みする捜査陣。
曽根本部長は低迷する県内での犯罪検挙率に着目。
検挙率を上げている地域に着目し、巻島の名を思い出す。
劇薬とばかりに白羽の矢を立てた巻島を利用。
テレビニュースに現役捜査官として登場させることで
事件の解決を図るという劇場型捜査に乗り出した。
住民から情報を呼びかけることはもちろん、
犯人をあぶり出すことが主たる目的である。

マスコミを利用したこの捜査は一定の効果をあげるが
同時にその手法から警察内部や世間から非難を浴びる。
しかも公私混同に走る獅子身中の虫が捜査情報を漏らす
暴挙に出る始末。バッドマンを騙る模倣犯やいたずらも
相次ぎ、捜査本部を惑わすが思わぬ形で犯人に肉薄する。
この事件は絶対に自分が解決すると闘志を燃やす巻島は
犯人に「勝利宣言」を突きつけた。

過去の過ちとの対峙や警察官のジレンマ。
捜査陣の中に足を引っ張る存在を配置したこと。
報道が捜査の妨害になる可能性の示唆。
被害者家族への配慮。謝罪の難しさ。
多くの要素を内包した警察小説の名作。双葉文庫上下巻
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:10| Comment(0) | TrackBack(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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