2017年06月07日

小説『月と雷』角田光代

親切な人の家を転々とするというでたらめな生き方の
母親に育てられた東原智。如才なく女性にモテる悟。
だがいざ結婚しようとしても、相手からはあっさり
断られ、首をかしげながら30代半ばを迎えた。
飯は外食ばかり、お菓子で済ませることも多い自分。
金が尽きればバイトするという根無し草体質。
女性の母性本能をくすぐるも、結婚相手とは捉えられない。
原因は生い立ちか…。

智はかうて母と共に転がり込んだ家庭で、
小学校にも行かず、裸になって自堕落に自由に
すごした同世代の女の子(泰子)のことを思い出す。
その子のことが運命の相手かもと思い込んで
会いに行くことに。泰子は智、そしてその母直子が
家に転がり込んだことがきっかけで父と母の関係が悪化。
家庭が崩壊したと思っていた。しかし、思い返すと
その怠惰で不思議な生活は幸せだったような気すらする。

仕事を通じて知り合った太郎と婚約も決まり、
しあわせをつかむはずだった泰子。
でもどうやら過去の不幸が追いかけてきたと直感した。
屈託なく話す智を泊める羽目になり…。

智の母親は60を過ぎても、未だに親切な人に
捨て猫のように拾われて面倒を見てもらっている。
究極の才能かもしれない。しかし、放浪の民のように
ひとところに留まらず思い出したように家をなくす。

泰子は音信不通となってしまった自分の母の消息を
捜してほしいと智に依頼した。智はテレビの
失踪人捜索番組の手を借りることを思いつく。

ある種の腐れ縁が、そして偶然の選択が関わる人の
人生を大きく変えてしまう。しかし不思議と人と
いうものは納まる所に落ち着くものなのかもしれない。
中公文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 08:12| Comment(0) | TrackBack(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

この記事へのトラックバック