2017年05月17日

小説『炎上する君』西加奈子

【炎上する君】
学徒動員、火垂るの墓というひどいあだ名を
つけられ灰色の学生時代をすごした二人の女性。
恋愛にうつつをぬかさず、強い意志で学業に打ち込み、
豊かなで盤石の暮らしを手に入れた。
あえて、自分たちのキャラクターと真逆のことを
してみないか?と勇ましくロックバンドを結成。
たくましい才女たちは銭湯で不思議な話をはじめる。
足元が炎上する男がいて目撃した者は幸運に恵まれる。
ロックな自分たちを演じることに疲れていた二人は
この不思議な男と出会い、二人とも燃え上がる。

【私のお尻】
容姿こそ恵まれなかった私だが、お尻だけは一級品。
お尻のパーツモデルとして大活躍し称賛を浴びる。
報酬も破格の待遇でぜいたくな暮らしも手に入れた。
でも心は満たされない。人は私のお尻ばかり見て、
お尻ばかり評価している。お尻が人格を有している。
愛しかったお尻に嫌悪感すら覚えた私は、
自分のお尻を「置いていく」ことにした。
芥川の『鼻』では主人公が自らの醜い鼻を切り離したが
この作品では誇るべき部分を切り離す。人って不思議。

【ある風船の落下】
自分の身体が浮かび上がり、最終的に空高く
舞い上がってしまう「風船病」が世界中で発生。
原因はストレスを抱え込み、この世に絶望した者が
地球の重力から解き放たれるとされる。
つまり形を変えた「自殺」であると言われている。
家で、学校で迫害され、愛を信じられない私も
風船病にかかり、母の心ない言葉で悲しみのない空に。
そこには地上に絶望し、このやさしい空にただよう
世界中の人たちが浮かんでいた。

など8編を収録した短編集。ずば抜けた発想力、
作品に流れるユーモアと愛情、
苦界で戦うことを辞さない潔さなどが光る。角川文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:25| Comment(0) | TrackBack(0) | すごくおすすめの短編・短編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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