2017年04月05日

小説『きりこについて』西加奈子

きりこと賢い猫ラムセス2世による強い絆と
再生の物語を描いた心温まる物語。
この一冊で多くの人が救われますように。

美男美女の両親であるパァパとマァマ、祖父や祖母の
悪い所ばかりが遺伝してしまったぶすのきりこ。
親から世界で一番かわいい子として育てられ、
うちって世界一かわいいこやねん!と自信満々。
周囲の大人も同情心と優しさからきりこを取り立てる
発言を繰り返したためこどもたちから尊敬を集める。
遊びにおいても「きりこルール」(彼女による鬼指名)や
きりこに都合のよいルールがまかり通っていた。
賢く超然とした存在として、こどもたちをうっとりと
陶酔させるきりこの快進撃は小学校でも通用。
そんなある日きりこは体育館裏で黒猫と出会う。
かわいいと言われることを嫌い、賢いと言われることを
望む黒猫はラムセス2世という立派な名前を頂戴した。
驚異的な知能を誇るラムセス2世は人語を解し、
きりこは猫に耳を傾ける度量の持ち主だった。
2人はお互いを尊重し、毎日を過ごすうちに会話できる
ようになっていった。

初恋の相手だったこうた君にラブレターを渡した結果
「ぶす」という言葉を投げつけられた。
強いショックを受けたきりこであったが、
なぜという疑問がぬぐえない。両親や猫たちから
容姿を褒められる自分がなぜぶすなのだろう?
魔法がとけたかのように周囲のきりこへの扱いは
変わっていった。11歳になった小学生たちは
かわいいという容姿に対して敏感となり、
おばさん化していた同級生だけがきりこの友達に。
でもきりこは自分がぶすだと思っていなかった。

中学生になり、ますますかわいい女子がモテる。
ある日、友達の書いていた少女漫画のヒロインから
きりこは自分の顔が彼女の顔と対極にあると気付く。
学年の美少女ともてはやされる子たちは、なるほど
漫画の美少女と呼ばれる容姿をしていた。
自分はぶすであり、心ない同級生からぶすと
呼ばれても仕方のない存在と打ちのめされたきりこ。
ひきこもって、彼女のことを強く尊重してくれる
猫にあこがれるようになり夜型の生活をするように。
きりこがひきこもっても、ただそこにいるだけでよいと
両親の愛情は揺るがなかった。

猫が至上の喜びと考える睡眠に没頭していたきりこ。
ある日夢の中で泣いている女の子と出会う。
きりこは自分にSOSを出している存在に気付き、
外の世界に歩み出す。ひとりの人間、一匹の猫の
運命的な出会いによって、助けられる者たち。
やさしさを忘れそうになったとき読んでほしい
極上の一冊。価値観は人の数だけあって
自分にとって大切なことは他人が決めることではない。
角川文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 08:20| Comment(0) | TrackBack(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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