2017年03月27日

小説『黒い福音』松本清張

戦後の日本で暗躍したキリスト教団体の腐敗、隠蔽体質。
そして及び腰になってしまった捜査関係者の哀愁を
見事に描いたミステリー。実際の事件ベルギー人神父を
容疑者とする日本人スチュワーデス殺人事件を題材に、
迷宮入りした未解決事件のアンサーを投げかける。

戦前から日本に布教目的で存在したバジリオ会は
表向きは敬虔で戒律を重んじる清貧な宗教団体。
だがその裏では海外からの救援物資である砂糖などを
横流ししたり、麻薬の密輸に手を染める邪心団体である。
穏やかで明るい笑顔に隠された神父たちは裏では
日本人を侮り、汚い言葉を吐く悪魔たちである。
悪魔たちは勢力拡大のために悪事の限りを尽くし、
豊富な資金を作り、破戒僧となり愛人を囲う。

物語は、某宗教の信者でありかつての英雄的行為から
物資の貧しい時代でありながら贅沢な暮らしをしている
ヤス子という女性。そこに足しげく通うビリエ神父の
秘密の暮らしを描くところからはじまる。その家には
人目を忍ぶかのように自動車が次々と止まるのである。
穏やかで尊敬を集める神父の裏の顔は悪徳商人。
彼は信者であり優秀で素直な少年トルベックに目をかける。
期待通り好青年に成長したトルベックは女性信者たちの
中でアイドル的存在になる。そうすると自然の摂理で
トルベックは女性と親しくなり、戒律を破るようになる。
それこそ神に祈ることを忘れ、女性に溺れる。
しかしそのしあわせは長くは続かなかったのです。
そう教会は裏の顔を持っていて、トルベック神父に
会計係という教会の暗部とも言える悪の片棒を担がせる。
トルベックは自分の恋人を麻薬の運び屋にするように
圧力をかけられる。
閉鎖的な組織の中で絶対的な権威主義がまかり通る世界。
その中で悪魔のささやきにより犯罪に手を染めてしまう。

事件を追う警察関係者、事件記者たちは宗教団体が
事件の鍵を握ることに行き着く。
容疑者が宗教団体の神父だったことから捜査は難航。
犯罪集団は宗教的立場や、日本での強い立場を悪用。
また政治的駆け引きから彼らを追う警察に上(外部)
から強い圧力がかかる。必死の捜査は実を結ぶのか?
新潮文庫 
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:48| Comment(0) | TrackBack(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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