2016年08月20日

小説『笹の舟で海をわたる』角田光代

戦争中に疎開先で知り合った左織と風美子。
激動の時代を生きた性格の全く異なる二人が
どのように出会い、どのように生き、老後を見据えるのかを
時代背景や当時の流行、事件を織り交ぜながら描く。

戦争が終わり、左織は22歳の時風美子と再会した。
思い出深く懐かしがる彼女に対し、左織には彼女に対する
はっきりとした記憶がない。聞けば疎開先で苦しんでいた
自分に左織がとても優しくしてくれたのだと言うが。
保守的で常識的な左織は、進歩的で派手な風美子と
長い付き合いをすることになる。

大学教授の夫と結婚した左織はこどもを授かり主婦となり、
夫の弟と結婚した風美子は仕事に才覚を発揮し、
新聞やテレビに登場し活躍。場を明るくし、歯に衣着せぬ
発言の彼女は話題の中心になることも多く、人気者。
母親の左織になつかず気難しい娘百々子も彼女には心を開く。
清濁併せ呑む彼女のメンタルの強さ、度胸のよさは、
すべてを失った戦争孤児という不幸の産物だったのだろうか。
そして、一見しあわせな家庭を築き、子宝にも恵まれた左織。
だが家族との関わりの中で、強く満たされぬものを感じる。
風美子の持つ圧倒的なパワー、吸引力はときに左織を脅かし、
新鮮な体験を与えるが、同時に心をざわつかせる。
そんな左織は彼女に出会わなかった自分を想像してしまう。
あのとき出会わなけば…。 毎日新聞社
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 06:16| Comment(0) | TrackBack(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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