2015年07月23日

小説【深紅】野沢尚

凄惨な殺人事件の被害者の娘、加害者の娘が
乗り越えた8年の歳月と命の重みとは?

修学旅行を楽しんでいた奏子だったが深夜突然の呼び出し。
家族四人が事故に遭ったと先生から伝えられた。
違う。これはもっとひどいことが起こったに違いない。
実家に戻る途中、奏子は確信した。
家族に出会うまでの4時間の迫力満点の描写。
そして家族との対面。変わり果てた姿に愕然とする。
彼女には伏せられていたが、家族はハンマーで襲撃された。

犯人はあっさり捕まった。仕事上の知り合いだった。
奏子の父によって詐欺に遭い不誠実な対応をされ、
妻の死を踏みにじる言動が引きがねとなった。
詳細に語られる供述であったが、奏子の幼い弟たちが
被害に遭った部分だけはあいまいな供述であった。

それから8年。大学に入学した奏子は表面上はまともに
成長していた。善良な叔母家族と実の家族がもたらした
保険金により生活に不自由することはなかった。
ただ事件の痛みが完全に癒えることはなく、
ときに悪夢の4時間を追体験することがある。
そんな奏子の耳に届いたのはあの犯人の死刑が確定した
というニュースであった。奏子の中で事件は終わらなかった。
奏子は、犯人に自分と同い年の娘未歩がいることを知る。
未歩に会ってみよう。
奏子は偽名を名乗り正体を隠し、未歩に会うことにした。

絶対あってはならない事件によって
絶対会ってはならない二人がうまれた。
法が守ってはくれない被害者家族の実態と苦しみや怒り。
偽らざる加害者の心情。加害者家族の想い。
フィクションでありながら、リアルで真実に迫る。
普通に生きられない道を歩くことになった普通の二人の
魂の咆哮。生きろ!思わず叫んでしまう会心の傑作。
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 06:46| Comment(0) | TrackBack(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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