2015年01月18日

小説『風の中のマリア』百田尚樹

疾風のマリアは、オオスズメバチのワーカーとして

生きる誇り高き戦士。高度な社会性、役割分担がなされた

「帝国」(巣)の中でエサを待つ妹たちのために

多くのエサを狩り、肉団子にして巣に持ち帰り与える。

時には危険な相手である敵対するスズメバチ、オオカマキリ、

オニヤンマとの死闘や、鳥などの襲撃を受ける

死と隣り合わせの日々。交尾をし、子孫を残すために

生まれてきた他の虫たちと異なり、ただただ狩りをし、

女王バチや妹、巣を守り、繁栄させるためだけに生きるのは

ハチとアリくらいだが、それ故に強固で一枚岩な組織づくり、

種の保存(ゲノム)を可能とする。

(要約すると、自分の妹を育てた方が自らの遺伝子が

後世に語り継がれる可能性、割合が増えるのである)。

狩りに出かけるワーカーたちはどんなに生きても

一ヶ月ほどで命を落としてしまう。

またその多くは狩りによって亡くなる。

その非情なまでの戦いの日々という宿命を背負ったハチ、

そして多くのムシたちを擬人化させて描いたファンタジー。

しかし、同時に強力なバックアップメンバーである

「ハチ」の権威も加わり科学的要素もふんだんに

盛り込まれ、スズメバチの生態、形成される社会、

彼らと敵対するハチなどの存在、

種の保存など生命の大命題も絶妙に描かれ、

ストーリーに引き込まれる。

作中に登場する虫たちは教養を持ち、思想を持ち、

思考することもできる生命体である。

一寸の虫にも五分の魂どころか、思わず感嘆せずいられぬ

まさに魂を震わせる名著に仕上がっている。

解説は養老先生であり、また豪華である。

講談社文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 08:37| Comment(0) | TrackBack(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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