2008年11月10日

小説「恋愛中毒」山本文緒


第5夫人として、小説家と恋愛関係の泥沼に陥っていく、

謎多き女性水無月の悲しき恋愛体験を綴った傑作恋愛小説。

吉川英治文学新人賞。導入部もうまく、ぐいぐいひき込まれる。


恋愛関係のごたごたから転職した青年。心のバランスを失って

しまった元恋人は、出版を営む職場にまで押しかける始末。

現状から逃げようと青年は、「今日だけはお願いします」と

電話の取次ぎを事務員の水無月に任せた。

水無月はその後、会社に押しかけてきた女性を説得して

一旦引き下がらせた。妙に貫禄があり、事務所の書籍の5%がなぜか

水無月に振り込まれているということを知った青年は、水無月の

秘密を知ることになる。水無月は語りだす。


水無月は、離婚経験のあるさえない30過ぎのおばさんだ。

英語に堪能なので、ちょっとだが訳書をしたり、弁当屋のパートを

しながら生計を立てていた。水無月は、ある日自分が学生の頃から

ずっとファンだった芸能人にして小説家創路と出会う。

過去の悲しい体験から

「これから先の人生、他人を愛しすぎないように。

 他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように」

と思っていた水無月だったが、人の心に土足であがることに

何のためらいもみせない創路によって結局つきあうことになった。


創路は、妻と3人の愛人がいる(わかっているだけで)こどもっぽい

わがままな男であり、水無月はことごとく創路に振り回される。

しかし、そんな生活であっても水無月は彼に必要とされていると

いう想いから奮闘。創路の愛を独占しようと、姦計を企てる。


登場人物のほとんどが、ひとくせもふたくせもある人々であるが、

水無月自身も言動から「普通ではないな」と思わせる所があり、

後半に謎多き彼女の悲しい過去が語られ、構成とかも含めて

唸らされた。恋愛小説なんてとバカにしていたが、いわゆるべたべた

感もないし、登場人物に対する著者の突き放し方とかがよかった。


私の本の好き嫌いは、登場人物の言動に同調できるか、

反対に全く自分と違うからこそ魅力を感じるのだが、

この本の場合は明らかに後者だ。400ページ。
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 18:04| Comment(0) | TrackBack(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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