権謀術数、裏切り、見えない絆、暗躍する影……
殺人事件の被害者の息子桐原亮司と容疑者の娘西本雪穂の
壮大で物悲しい白夜行は次々の不幸を巻き起こす。
基本的に物語りは暗く、ハードな内容を含む。850ページ。
1973年、大阪の廃墟ビルで質屋を営む桐原亮司の父が殺された。
質屋であり、評判のよくない男でもあったため、容疑者は次々と
浮かび上がっていった。西本雪穂の母もそのひとり。
事故死か、自殺か、殺人か不確かなまま事件は迷宮入りした。
物語はその後の、桐原亮司と西本雪穂のそれぞれの「成長」を描く。
彼らの近くでは、次々と事件が巻き起こり、そこにはお互いの影が
見え隠れするのだが、不気味なベールに包まれたまま証拠はない。
誰も信じない陰気で影の多い少年と、貴族然とした薄幸の美少女の
瞳に映る未来は?
物語は、「オイルショック」「V9ナイン」「阪神優勝」
「インベーダーブーム」「マリオブーム」「宮崎勤事件」
などの歴史的事件も扱って、19年という大きな舞台を描いた傑作。
暗い魅力に溢れた作品であり、ダーティーな二人の主人公がなぜ
人々の魂を掌握・翻弄することに長け、また魅了するのか?
絶望の淵から這い上がろうとする魂の叫びを感じる作品。
桐原亮司
金に汚い。それは「金」の力を知るゆえ。
謎の多い秘密主義の男で、コンピュータの知識や犯罪にも積極的に
関わる。コンプレックスを抱えている。権謀術数に長けている。
「俺の人生は、白夜の中を歩いているようなものやからな」
西本雪穂
はっとするような美貌の持ち主。黒い薔薇、フランス人形などに
喩えられるが、それは酷薄なイメージとも繋がる。
高い演技力と向上心の塊であり、人々を掌で転がす悪女。