2008年10月01日

小説「砂の器」松本清張



方言、特殊な殺害方法、「カメダ」の謎に、砂の器の示唆するもの

とは?読み応え十分のおすすめミステリー。上・下巻で810ページ。


バーで目撃された、東北訛りの男と連れの男。

東北訛りの男は死体となって見つかり、捜査線上に容疑者として

連れの男が浮かび上がる。被害者の身元がわからないまま、

バーで漏れ聴こえてきた「カメダ」という言葉から、捜査本部は

東北地方の「亀田」姓に聴き込みをするものの、依然被害者が

何者かはわからない。地道な捜査と、温厚な人柄で尊敬を集める

老練刑事今西は、偶然の産物から東北地方に亀田なる地名がある

ことを突き止め、気のおけない若手刑事である吉村らとともに

事件解明に乗り出す。東北地方に訪れた、謎の男の存在、電車で

奇異な行動をした女性……など少ない貴重な事実から今西は、

紆余曲折を経て事件の核心に迫っていく。地道な捜査により今西は、

「ヌーボー・グループ」と言われる先進的であり鼻持ちならない

新進芸術家たちが事件の核心を担うことを確信していく。

題名の示唆する「砂の器」の意味を暗示する文章の演出や、

斬新な殺害方法などもおもしろい。刊行されたのが61年と古いことも

あり、国鉄や100円ホテルなどピンと来ない表記も多いが、あまり

気にならず楽しめるのはやはり名著という感じがした。


愛とは孤独なものに運命づけられているのであろうか。
三年の間、わたしたちの愛はつづいた。
けれども築き上げられたものは何もなかった。
これからも、何もないままにつづけられるであろう。
未来永劫にと彼は言う。
その空疎さにわたしは、自分の指の間から砂がこぼれ落ちる
ような虚しさを味わう(本文より)

これは、犯人の女性の手記だが、同時に、これは「砂の器」の器量

しか持ち得なかった犯人にも当てはまることである。
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 18:06| Comment(0) | TrackBack(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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