第100回直木賞受賞作。305ページ。下町情緒あふれる粋な作品。
小林清親は、江戸に居を構える小役人。たくさんの兄弟がいるものの
母といっしょにかつかつの生活をしていた。時代は幕末。
「幕族」薩長の侵攻によって、江戸の町は「明治維新」を余儀なく
され、江戸っ子や武士たちは蔑ろにされる。清親は、年老いた母と
ともに江戸を離れた。絵を描くことが好きだった清親は、それを機に
自分の画帳を燃やしていたが、母の頼みもあり江戸の景色を描いた
1冊だけは手元に残った。
転居先で身体を動かす仕事をし、生計を立てていた清親は
退屈さを感じ、親友である圭次郎らと共に、昔取った杵柄で
斬り合いを見せるショーに参加することにした。しかし、
限界を感じ、これを機に江戸にふたたび舞い戻ることにした。
その後、清親は自己流で描いていた絵を見込まれ、「光線画」や
漫画のような「ポンチ絵」、新政府の風刺絵などを描き好評を博す。
絵師として成功を収めながらも、大切な人と離別をしたり、
殺害現場に居合わせたり、結婚をするも妻と心が離れたり、
いいことばかりではないが、絵師仲間の芳年と切磋琢磨しながら
また自分を取り立ててくれたパトロンや自分の絵や成功を喜ぶ人
のために清親は筆を取るのだった。
変わっていく世の中、変わっていく町々、変わっていく人々……。
でも変わらないものもあるんじゃないか。
変えてはいけないこともあるんじゃないか。
