2020年07月09日

小説『人格転移の殺人』西澤保彦

人格転移(つまり精神・人格が入れ替わる)
不思議な施設を擁するアメリカのとある研究所。
宇宙人(神)のいたずらなのか?それとも
ハイパーテクノロジーはプレゼントなのか?
2人以上の人間が施設に入ることで発生する
「マスカレード」といわれるこの現象には
ある法則性があるのだが、超越した科学には
多大なる危険がつきもの。一度その現象、
輪の中に入ってしまうと、不定期で肉体と
人格が入れ替わってしまう。禁じ手的な手段として
自分以外を殺してしまい、入れ替わる対象をなくす
ことがある。あぁ恐ろしい。施設内では
不幸な事故が発生し、研究者同士が入れ替わった。

それから歳月が流れて。
ファストフード店の店員、客たちが集まるが
基本的に気が合わないらしく小競り合いがはじまる。
そんな折、大地震が発生した。
店には謎のシェルターと思しき施設があり
彼らはそこに命からがら逃げ込んだ。
しかし、その施設とは前述した例の施設だった。
かくして、彼(彼女)らの中で人格が入れ替わった。

助けられた被災者達は自分たちの姿に大混乱。
なにしろ自分の精神はそのままで別の肉体を有し、
別の人格を持った自分の姿を見たのだから。
こんな不条理なことはないではないか。

自分たちは世間的には事故で亡くなったことにされており、
ここにいる6人で今後の身の振り方を近日中に
決めてほしいとCIA職員から言われてしまう。
もし国籍通りに世界中に散らばってしまったら
何かと不便だし、性別が変わることもある。
まぁ近場に住む方がいいでしょうというありがたい
助言を受ける。あぁなんてこった。

被災によって、日本語だからわからないだろうと
店や居合わせた人間をボロクソ言っていた日本人留学生が
命を落としていた。事故死したとCIAから説明があったが
殺人だったのではないか?という疑問が生まれる。
ある証言も飛び出し、疑惑は高まるばかり。
そんな中、新たな殺人が発生し…。

全体を通すとすばらしい内容だが、序章がとにかく厄介だ。
人格転移という不思議な現象を説明する箇所がとっつきにくく、
難解な観念論的な話も出て、くじけそうになるが、
その後はグッと読みやすくなる。

日本の受験戦争に破れ、仕方なくアメリカに留学し
なしくずし的にアメリカ文化に溶け込む。
コネで大企業に入った33歳の僕は、アメリカに
駆けつけるが恋人に手痛いフラれ方をし傷心。
映画を観てヘンテコなファストフード店に入ったら、
日本オタクともだちの影響で日本語を多少解する黒人の店員
ボビイと会話を弾ませる。そこにハリウッド女優をめざす
見目麗しいが高慢なジャクリーン、
厚かましく下品な中年男性や
初デートに訪れたカップルなどが現れる。
大地震後、カップルの片割れアヤが死亡。
地震のどさくさに乗じ、殺人事件が行われた?
人格が入れ替わった僕たちはそんな理不尽で不安なギリギリの
精神状態の中ですごしていたがマスカレード(人格転移)は
容赦なくやってくる。
そして、減っていく人々…。犯人は誰なのか?
というスリリングな展開となっていく。
SF要素が取り入れられた斬新なミステリー。講談社文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 08:17| Comment(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする