2019年12月23日

小説『世にも奇妙な君物語』朝井リョウ

「シェアハウさない」

泥酔していた所、介抱してくれた女性により
シェアハウスに運び込まれた主人公浩子。
心に傷を負った過去を持つ彼女はライターとなり
シェアハウスに住む人々を取材したいと思っていた。
男女4人で暮らしていたメンバーの一人がここを
出て行くと知り、勢いで自分が住みたいと提案。
却下されるかと思ったが受諾され、4人に流れる
不思議な空気からある種の秘密を感じ取る。

「リア充裁判」

コミニューケーション能力が異常に尊重される
現代の風潮を皮肉った作品。
リア充裁判と揶揄されるコミニューケーション能力を
図る質疑応答がなされ、この能力が欠けていると
判断されてしまうと、コミュ力の向上を促される。
強制的にバカバカしい格好をさせられ、パーリィ
ピーポーのような振る舞いをすることが善(正解)
という世界なのである。
まともだったはずの姉を変な風に変えてしまった
この裁判に臨むことになった地味子の運命は?

「立て!金次郎」

保育士になった熱血教師だったが、
そこに立ちはだかるのはモンスターペアレント。
理不尽な要求はエスカレートし、
幼稚園で行われる全行事のうちこども全員が
主役になる機会が設けられるようにと口撃される。

こどもを見ずに保護者の顔を見ることを優先した
須永先生の評判はうなぎのぼり。
反対に人なつっこくて評判がよかった主人公の
評判は悪くなり、最近保護者からの反応が悪い。
でもやっぱりこどもの気持ちが大事だよな!
保護者からの外圧になんて屈しないぞ!
と昔からのあだ名が金次郎の主人公は奮起する。

「13・5文字しか集中して読めな」

煽り文句ばかりで真実を映し出していない
ネットニュースの見出しを皮肉った作品。
文章を要約したり、表現者にとって都合のよい部分だけを
抜粋すると、受け手(読者)に与える印象が真逆の
ものになったり、間違って伝わるよねという
ブラックユーモアあふれる物語が展開される。

「脇役バトルロワイアル」

有名な演出家蜷川作品の主役オーディション会場に
やってきた溝淵淳平ら6人の男女たち。
年齢もバラバラだし、性別も違う。
それにしても最近は脇役として活躍するメンバーばかり。
主役なんて柄じゃないよね…
と自虐的に話し合っていたら、審査がスタート。
どうやら脇役らしい振る舞いをすると不合格となり
最後の一人として残れば晴れて主役になれるようだ。
脇役あるあるも交え、本のタイトルが示すような
「世にも奇妙な物語」的演出なユーモア作品。講談社
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:18| Comment(0) | おすすめの短編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月17日

小説『武道館』朝井リョウ

武道館ライブを夢見る6人組アイドルグループ
NEXT YOUのメンバー愛子が主人公。
小さな頃から歌って踊ることが大好きだった
愛子はアイドルになることを選択した。両親が離婚。
父と母、どちらについて行くのか選択を迫られる。
愛子の選択は父の方であったが
幼なじみである大地と離れたくない気持ちが強かった。

NEXT YOUのダブルセンターを務めた主要メンバーが
1年で卒業決定。武道館は12000人規模のライブもできるが
区切れば半分以下の収容人数でもライブができる。
まずは、そのレベルでの武道館ライブをめざそう!
目標を掲げたその子が卒業してしまった。

5人はフォーメーションの変化や徐々に規模を拡大していく
自分たちのアイドル活動にとまどいながら日々を送る。
握手会や特典商法、盗撮、SNSでの炎上や正義の味方面した
書き込みそれに伴うスルースキル…
アイドルに求められるいろんな重圧や抑圧の中で
愛子は日々揺れながらメンバーや大地との学園生活を送る。

自分の中の夢やアイドルとしての人気が増えていくことで
注目を集めるようになるが、電車に乗っても気づかれない。
乗客はみんなスマホを観ている。
本当に自分の選択は正しかったのかな?
私たちのことなんて何も知らない人たちはもちろん
ファン(自称ファン)は私たちの幸せを望んでいるのかな?
というアイドル目線での半信半疑という鋭い視点を持つ。

少しずつだが人気が出てきて、オリコントップ10にも入り、
武道館ライブも現実味を帯びていく。
一喜一憂する日々の中で、それでも満たされず
物思いにふけることが多いヒロイン愛子。

自分たちを売り出すために必死になっている大人たち。
暗黙の了解というか絶対条件とされる恋愛禁止。
でも人間として生きている以上、そういう気持ちや
理不尽な攻撃に対し怒らないことって人として正しいのかな?
自分が本当のアイドルと認めるメンバー碧や他のメンバーと
共に捧げた青春の日々や選択を誇れるようになる日は来るのか?

現実世界のアイドルの不祥事や彼女たちを取り巻く環境も
交えながら最終的に著者が示したかった思いとは?
偶像として語られるアイドルたちを実像(生身の人間)
として描いた挑戦的な作品。文藝春秋

posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 09:15| Comment(0) | おすすめの長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月09日

小説『掏摸 スリ』中村文則

偽名で暮らす天才スリ師の僕は
最悪の男木崎によってある犯罪に参加。
500万円の報酬には見合わなそうな
単純な作業であったが、巨悪事件につながる
一連の犯罪につながっていた。

親友は木崎の指示により消されてしまった。
木崎を恐れて東京をネジロにスリ行為をしていた僕は
母親の命令で万引きをする少年をきまぐれて助けた。
母に見切りをつけていた少年は僕に心を開き、
僕もかつての自分を重ね合わせるように尽力する。

しかし、そんな折木崎と遭遇。
三つの仕事をこなせ。
失敗したらお前を殺す。
逃げれば最近お前と付き合いがあるあの親子を殺す。

裏社会の住人として君臨する木崎からの
理不尽な要求は、裏社会に生きる僕にとって運命。
ドレイを使って、ある男の人生の未来日記を描いた
支配者の寓話。僕の人生にたびたび登場する
不思議な塔の映像は何かのメタファー(暗喩)なのか?
絶望的な状況の中、僕は何に祈るのか?
孤独な主人公の姿を描いたピカレスク小説。河出文庫
ラベル:小説 中村文則
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:20| Comment(0) | おすすめの長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする