2019年11月29日

小説『美人薄命』深水黎一郎

戦争によって大事な人を失ったカエは
望まぬ結婚をし、姑・旦那から虐げられ、
一方的に離縁されてしまう。
片目を失い生き場所のないカエだったが
親友の存在により繕いの仕事をこなし
御年84歳。現在では冗談によって他人を
笑わせる老婆としてつつましく生きていた。

大学のセミナーで教授から進級できないと
脅された大学生の磯田総司は弁当配達の
ボランティアに参加した。一回でもこなせば
教授も許してくれるだろうと軽い気持ちだった。

だが届けたカエなどの老婆や老爺、
ボランティアスタッフの杉村、
かつてあこがれていた同級生の沙織などの
存在もあり、腹の立つこともあるが続けていた。

物語は普通の若者である総司が
84歳にしてあこがれの人、五十路への
過去の恋に生きるカエの秘密に迫っていく
という極上の純愛ミステリーである。
旧字体で書かれるカエの述懐・回想シーンから
現代の物語につながっていく。

なぜカエは総司に対し、胸襟を開いたのか?
カエが抱いてた淡い恋心の行方は?
総司はどのように考え、どう成長したのか?
そして物語の核心、真実に迫るとき
読者をあっと言わせる演出が心憎い。
『最後のトリック』でもうならされたが
私としてはこちらの方が更におすすめ。
双葉文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 11:35| Comment(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月01日

エッセイ『またたび』さくらももこ

まる子の世界旅行の珍道中のあれこれをつづった
爆笑エッセイ。口語体を交えて飾らない文章で
心情の素直につづる。しっかり者の木村さんや
ろくでもない石井さんら同行者とのくだらなくも
愛しい旅の思い出をあますことなく語っている。
おいしくていくらでも食べられてしまうような
世界のグルメな料理に舌鼓を打ち、
ときにゲテモノにうろたえ、
仙台の寿司屋で感動的な味に出会う。

カジノで一喜一憂し、典型的スリに遭い、
なぜか一度しか来ていないかの地で調子に乗って
イキるくだらない石井さんがおもしろい。
ローマの休日でオードリー・ヘップバーンが
アイス食べていた場所に訪れたり、
美しいベニスを堪能したり、
スリランカで宝石の原石を掘ったり、
父ヒロシとスリランカの大臣と謁見したり、
中国のお茶屋で大量にお茶を買い込む。
人のまごころを感じたり、かの地で世知辛い洗礼を
受けたり、体調を崩したりと大忙し。
旅の醍醐味は行って帰って思い返すこと。
このエッセイを読むと行ってみたい場所が増える。
猫にまたたび、いずれの人もまた旅なり。
お気軽に楽しめるさくらももこの旅エッセイ。
新潮文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:24| Comment(0) | おすすめのエッセイ・私小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする