「読者が犯人」というトリックのアイディアを
買ってほしいというものだった。
香坂誠一という謎の男からの手紙はその後も届き、
「命と引き換えにしても惜しくない一世一代」
のアイディアなので2億ほしいと言う。
不信感を抱きながらも、いつしか男からの手紙を
待ちわびている作家の姿があった。
荒唐無稽の大言壮語かと思われた物語は
意外な展開を遂げて…。
作中でも語られるように意外な犯人の模索は
ミステリー界では数多の作家が挑んできた。本作は
ミステリー界最後の不可能トリックに挑んだ意欲作。
物語の随所に暗喩的伏線が提示されていて、
緻密な計算と説得力で展開される傑作推理小説。
一気読みしたくなる垂涎の一冊。河出文庫