2019年08月25日

小説『彼女が追ってくる』石持浅海

冷酷で頭脳明晰な才女たちによる
論理的な頭脳ゲーム開幕。最期に笑うのは一体誰だ?

「箱根会」は成功した経営者たちに催される会。
今回はコテージに会のメンバーとゲストとして
火山学者碓氷優佳が参加した。
メンバー間の懇談によって楽しい夜が過ぎていく。
そんな中、中条夏子はかつての親友にして
恋のライバルだった黒羽姫乃殺害を断行した。
用意周到にして計画的な殺人であり、
夏子は完全犯罪を確信していたのだが…

事件は被害者である姫乃が握っていたカフスボタンの
存在によって、思わぬ展開をみせる。
それは姫乃の遺志なのか?殺したはずの相手から
追われているような錯覚を受ける加害者夏子。

容疑者をかばう気鋭や同情心や打算から
警察への通報が遅れ、関係者たちによる
殺人事件に対する考察が行われる。
部外者のはずの碓氷優佳は事件の真相を暴いていく
超然とした存在として異彩を放つ。
読んだあなたが本当に冷たいと感じる女性は誰?
祥伝社文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 18:51| Comment(0) | おすすめの長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月19日

小説『極楽カンパニー』原宏一

定年退職した会社人間須河内、桐峰は本気で
会社ごっこをはじめた。
「絵空事・馬鹿正直・度外視」
という現実の会社ではできなかった理想を掲げ、
邁進する二人は彼らに賛同する喫茶店のマスターの
協力もあって架空の会社を設立。

退職後張り合いをなくし、暇を持て余していた
同じ境遇の者たちが想像以上に集まってきた。
喫茶店をオフィスとした本気の会社ごっこ遊びは
会社人間、モーレツ社員たちにとって最高の時間。
金の介在がないだけで本式の会社と見間違うレベルの
ごっこ遊びに定年退職者達は夢中になる。

100人単位に膨れ上がり、喫茶店だけではキャパ超えと
桐峰は新たに別会社をつくり切磋琢磨しようと張り切る。
商社に勤めていた須河内の息子慎平はそんな父を冷ややかに
見ていた。だが将来の独立を真剣に考えるようになり
父たちの会社ごっこはそのままビジネスに転用できる
可能性に気づく。そして資金を出してくれるという
悪評ばかりの二谷の存在もあって会社との決別を決める。

会社ごっこは会社人間だった多くの定年世代の心を捉え、
全国に広がっていく。そんな中、事件が勃発して。

父と子の確執、母の怒り、働き方や働く意味を
ユーモアを交えて描く。作品の中で、登場人物が
会社って一体何なんだろうね?と考えるシーンがあるが
本当に会社って何なのかね?労働環境自体はどんどん
よくなっているはずなのに、離職率とかは上がっている。
終身雇用が崩壊したことや、転職自体のハードルが
ずっと低くなったことや、家庭の形やあり方や
女性の社会進出など多くの要素がからみあって、
一概には言えないのもかもしれない。

職業選択が自由化したことで、かえって複雑化、
迷う要素が増えたような気もするが、職業を変えられる、
逃げられる環境もできた気もするし。いずれにせよ
天職を見つけられればいいけどこればかりは難しい。
集英社文庫
ラベル:小説 原宏一
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 09:26| Comment(0) | おすすめの長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月02日

小説『白髪鬼』江戸川乱歩

九州の大名を先祖に持つ大牟田子爵は姦夫姦婦
(ゲス不倫、NTR)され、事故を装った殺人未遂
の被害に遭う。旧家の立派な墓に埋められる。
当時土葬だったので彼は仮死状態から復活した。

数日間地中から這い出ようとした地獄体験、
死の恐怖によって白髪となり老人の姿に豹変。
しかし思わぬ形で海賊の宝を手にすることに。

愛する妻瑠璃子と親友川村が自分を裏切り、
殺そうとした真相を知ってしまう。
大牟田俊清は悪女瑠璃子と川村に復讐を果たそう
と強く決意した。
二人の罪を告発しても苦痛の少ない死刑が関の山。
それではこの怒りは修まらないと私刑を選択。
目には目を、歯には歯を、殺意には殺意を。
コノウラミハラサデオクベキカ。

自分の顔の特徴である目を黒眼鏡で隠し、
大牟田家の親類で渡米し正体不明となった
親類里見重之になりすます。
彼は南米で大成功し、成金紳士となって
日本に帰ってきたという筋書きだ。
白髪鬼と化した彼は復讐の心を胸に秘め
瑠璃子と川村に近づいていく。その結果、
二人の犯した新たな罪も露見し、より一層
白髪鬼の仇討ち的ストーリーに拍車がかかる。

ゾクゾクする名作ホラー。人の心に醜さ、
恐ろしさや複雑さを見事に描く。
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:16| Comment(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする