2018年10月25日

小説『Wの悲劇』夏樹静子

雪に囲まれた別荘で正月をすごしていた和辻家で
殺人事件が発生。誰からも愛されていた摩子が
和辻製薬の会長を刺殺してしまったと告白した。
摩子に同情した面々は外部犯の仕業にしようと画策。
現場不在証明(アリバイ)作りのために
口裏を合わせて行動を開始した。
和辻家6人、そこに居合わせた外科医間崎、
摩子の家庭教師の春生は
中里、鶴見警部ら警察の目を欺けるか?
綿密と思われた工作であったが思わぬほころびが生じ…。

タイトルが示す通り、エラリークイーンの『Yの悲劇』
に挑んだミステリー小説である。クイーンもこの作品を
絶賛し解説に参加している。不朽の名作ミステリー。
角川文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:46| Comment(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月18日

小説『握る男』原宏一

留置場の中で自分の人生を決定づけた男の死を知る。
人たらしの天才、稀代の悪党でもある盟友が自殺?
兄弟子でありながらゲソこと徳武光一郎によって
急所をつかまれた金森は激動の過去を想起する。

昭和56年。両国のよくある寿司屋で
一番の下っ端として働いていた金森。
小柄の少年ゲソがやってきて店で働くことに。
よく気が利き、人の懐に入るのがうまく、
努力を惜しまないことで金森を圧倒する。
特に金森を苦しめていた兄弟子をゲソの画策により
追い出したことにより頭が上がらなくなる。
また両国ということもあり、目をかけた力士と
懇意となりゲソはこの人気者も活用することに。

人なつっこい笑顔を浮かべながら時折顔をのぞかせる
野望を秘めた裏の顔。この国の食(食品業界)を牛耳る
という大言壮語かと思われたゲソの言葉。
ピンチをチャンスに変えてしまうこの男は
無謀と思われた夢をどんどん現実味を帯びていく。
ゲソは金森を自分の片腕、番頭にすると宣言した。
彼に掌握され反発しながらもどこかでゲソの夢を
手助けする道を選んでいた金森。

目的のためなら手段を選ばず巨大化していく野望。
そして組織の中で彼に振り回されながら、
時に違法行為に手を染める者も現れ…。
この権力構造は新興宗教組織を思わせるが
急成長を遂げた企業や既存の大企業にも通じる
ものがあるのだろうな。

権力の暴走の怖さもさることながら、この作品は
「人」をしっかり描ききっている所が特筆すべき点。
ゲソと金森の不思議な共存関係や彼らに関わる
人々との情や愛憎、意外な関係を知るとき
物語に厚み、深みが加わりより味わい深い作品に。
角川文庫 420ページ
ラベル:原宏一 おすすめ
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:04| Comment(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月13日

エッセイ『だからこうなるの 我が老後』佐藤愛子

交友の深いKに百万円貸したら返ってこない。
考えてみたら自動車もあげたのに…。
そんな折、違法駐車があったので罰金の催促が。
そういえば、税金払っているの私じゃないか…
さすがに腹を立てた私は夜逃げしたKの家に
赴くのだった。

気づけば自分の家の愛犬になっていたタロ。
無芸大食で鎖につながず奔放に飼っていたが、
十数年前からいたので遂に天寿を全うした。
と思ったら死んでいない。勘違いだった。
でも今までありがとうと娘といっしょに
涙を流すが、驚異的な回復を見せて…
元気なだけで、いや生きているだけで、
なんかもうそれだけで十分なんだよな…
と亡くなった愛犬のことを思い出す。

やたらしつこい迷惑電話の男。
番号を拒否するがわざわざ公衆電話を
はしごしてかけてくる。
なんてしつこくてめんどくさい奴なんだ。
その情熱を仕事にでも向けてほしいものだ。
こいつのせいで長電話大好きの友達サキサンが
電話に出てくれないと苦言を呈してきた。
彼女は彼女でちゃんと電話が通じるか
深夜に確認の電話をかけてくる。
なんてしつこくてめんどくさい友達なんだ。

など笑えてかつ泣ける佐藤節全快のエッセイ。
文藝春秋
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:35| Comment(0) | おすすめのエッセイ・私小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月08日

小説『砂の女』安部公房

平凡な教師が砂の多い海沿いの集落を訪れる。
昆虫採集が目的で、砂を研究する彼は
新種が発見されやすいハエやハンミョウに着目。
砂地という特異性のあるこの地域では
まだ未発見の生物が見つかるかもしれない。
砂の着眼点は当たり、男は美しいハンミョウを
発見するが逃げられてしまう。
彼は、近隣のおじさんに助言に従い、
集落の家に泊めてもらうことにした。
そこは妙齢の女性(寡婦)がひとりだけいる家。

一日だけ泊めてもらうつもりだった
その家は異常なほど砂まみれになる家だった。
砂を掻き出すために精力的に動かなければ
そのまま人間が埋まってしまうような。
家の中から脱出方法できない量の砂が
家の中に侵食してくる恐ろしい地獄のような場所。

まるで、アリじごくに捕らえられたアリのようだ。
男は、3日分の休暇して申告しておらず
ここから出たいと懇願する。
だが女や集落に住む人間はそれを許してくれない。
集落の者たちの協力ではしごをおろして
もらわなければ家の外にも出られない。
男同様に奸計にはまり、脱出を試みた者は失敗し
命を落とした者もいるという。
集落の民は彼をここに住まわせ住民にしようと
目論んでいた。

彼は女を説得したり、脅したり、時に暴力をふるったりし、
なんとか脱出を試みるのだが……。

どんな過酷な環境でも人は生きられる。
そこには妥協やある種の諦観があっても
人は希望を見いだしそれでも生きていける。

人間の精神性とか、社会に対する批判とか、
マイノリティーの悲哀とか、村社会のこととか、
人間の持つ生臭さとか、あきらめとか…。

もがいたり足掻いた所で足下から世界が崩れ
自分よりももっと巨大な存在にやりこめられる。
やるせなさと共にある種の開き直りによって
生きていこうとする生き物の強さを感じた。
哲学的で難解なので読むたびに新しい発見がある
タイプの名作 新潮文庫
ラベル:安部公房
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 10:35| Comment(0) | 日本の 世界の名作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年10月02日

小説『ズッコケ中年組 44歳のズッコケ探検隊』那須正幹

山奥にやってきたズッコケ三人組はツチノコと
思われる不思議な生物を写真におさめて…。
ズッコケ中年組シリーズ第5弾。

飲み友達の誘いから趣味の一つも持とうと
山奥の渓流釣りに出かけたハチベエ。
イワナ、ヤマメ、アマゴは釣れなかったが
そのことが逆にファイトを燃やすことに。
元々好きだったこともあり休みの日の
ひとつの趣味になった。

自由律詩をはじめた母の影響からモーちゃんも
一句ひねるクセがつく。ハチベエの誘いを受け、
元々釣りが上手だった彼も渓流釣りをはじめる。
二人の親友ハカセもカメラを趣味としており、
シャッターチャンスを求めて二人に同行した。

おいしい空気を吸いながら楽しい日々をすごす。
友人が釣り上げた魚をカメラにおさめていたら
そこには不思議な生き物が写っていた。
これって昔話題になったツチノコじゃないのか?
探求熱心なハカセ、お調子者のハチベエは
ツチノコ捜しに乗り出す。モーちゃんも
巻き込まれ、おっかなびっくりついて行く。

ワナをつくり捕獲を試みるがそう簡単にいかない。
自治体によっては億単位の懸賞金を出している
村もあるとか…。童心忘れずバカなことができる
ともだちっていいよね。でも宝探しをしていた
こども時代みたいに三人が同じ情熱を持っている
わけじゃない。ハチベエ、モーちゃんは釣りの方が
気になるようだと察したハカセは荒井陽子に同行を依頼。
ツチノコが縁で二人の仲は進展するのか?
ポプラ文庫
ラベル:那須正幹
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:39| Comment(0) | ズッコケ中年組 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする