2018年09月26日

小説『絶望ノート』歌野晶午

中2の太刀川照音は立ちションというあだ名を
つけられる小柄なネズミ顔の生徒。
ジョンレノンの熱狂的なファンで働かず
ファッションだけを真似する薄ぺっらいダメ父と
働き者のヨーコという名の母を持つ。
貧しい生活なのでいろんな我慢を強いられ、
趣味は図書館で借りてきた本を読むことだ。
彼は自宅の机の奥底に「絶望ノート」と名付けた
日記帳を書き連ね、そのノートの内容によって
いじめの様相が語られていく。

学年の人気者でありながら、いじめグループの
リーダーである是永は狡猾な男。日記の中で
直接いじめを行う是永や見て見ぬフリをする者、
担任、父に強い恨みを抱いていることが語られる。

追い詰められた照音は、偶然自分を助けてくれた石に
救いを見いだし神としてあがめることに。
願いは聞き入れられ…。

日記を目撃した母は息子照音のために興信所へ赴く。
能天気な父の謎の行動は?
なぜか自分のことを気にかけてくれる副担任の来宮。
照音のあこがれの人国府田さんの来訪。
登場人物たちの言動ひとつひとつに意味があり
読者を驚かせる仕掛けが施されている。
『葉桜の季節に君を想うということ』にも
鳥肌が立ったがこの作品も比肩するほどの名作。
人の心は一筋縄ではいかない。
幻冬舎文庫 630ページ
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:32| Comment(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月18日

小説『だから荒野』桐野夏生

46歳主婦の朋美は誕生日に怒りを爆発させた。
身勝手な言動を繰り返す夫と二人の息子による
長年の蓄積は消化されなかった。
衝動的に自動車で出奔した彼女は、
高速道路で長崎めざして走り出した。

家族やしがらみとの決別、さみしさや孤独の中にある
解放感、新しい世界を切り開こうと荒野を駆ける。
捨てられた夫は懲りも反省もせず愚行に及ぶ。

元々思いやりや家族の絆が希薄だった森村家は
空中分解し、問題が浮き彫りになる。
足りなかったあれこれ、失って気づくこと、
新しい人間関係を構築したり、事件に遭遇。

思い切りのよい主人公が決断をした結果、
超然とした大人物山岡に出会う。
山岡はボランティアで戦争体験を語る
90歳過ぎの老人。最終章人間の魂では
この山岡さんの説諭によって涙がとまらない。

荒野に生きる覚悟、現実と向き合う覚悟、
人と向き合う覚悟、他者への愛、罪を許す心…
家族間の係争という身近で個人レベルの問題。
そして絶対的かつ理不尽な暴力や災害に対する怒り、
悲憤という大きな問題もからめた描かれている。
文春文庫 440ページ
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:14| Comment(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月12日

小説『あと少し、もう少し』瀬尾まいこ



中学駅伝に情熱をかける部長の桝井。
しかし、怖いが信頼の厚い顧問が異動し
陸上門外漢の元美術部の上原先生が顧問に。
部の空気もだらけ、十数年に及ぶ県大会への通過も
危険信号。そもそもメンバーが足りない。
桝井、設楽、俊介といった陸上長距離部員は三人。
例年はバスケ部員などを招集し、メンバーを選んで
いたのだが桝井は意外な勧誘をはじめるのだった。

桝井は不良の大田、吹奏楽部員の渡部という
めんどくさいが走力が高い二人に声をかける。
ムードメイカーとしてジローも引き込み、
なんとか六人そろえた。前途多難かと思われた
チームは成長を遂げるが桝井がスランプに。
六人のメンバーがどのように集まり、
どんな考えを持ち、レースに臨むのか。
あえて同じ場面をそれぞれの登場人物たち視点で
描き直すことで物語に厚みを加える。
選手ひとりひとりが抱える葛藤や思春期特有の
もやもや。悩みや目標を達成していく爽快さ。
勘違いや思い込み、誤解が解ける瞬間。
チームのためにあと少し、もう少しがんばろうと
する前向きな気持ち。
物語の軸となる六人の中学生たちと上原先生たちの
奮闘を描いた青春小説。新潮文庫 350ページ。
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:24| Comment(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月02日

小説『硝子のハンマー』貴志祐介

密室殺人の不可能犯罪に挑むのは弁護士青砥純子と
手癖の悪い防犯コンサルタント榎本径。
ホラー小説の大家として知られる作家が手がけた
日本推理作家協会賞受賞の人気シリーズ第一弾。

介護サービス会社を展開するオフィスビル内で
社長が撲殺死体という形で発見される。
いわゆる密室殺人ということで、
現場の状況から専務が逮捕されてしまう。
弁護士青砥純子は、専務を弁護することになり
防犯に詳しい榎本と共に事件解決に挑む。

介護ロボット、介護ザルといったこの職種ならではの
「飛び道具」的存在が登場し、物語を盛り上げる。
1部では、青砥・榎本が可能性を模索していき、
犯人、そしてトリックについて言及。
2部は犯人の生い立ち、犯行に至った経緯が示される。
トンデモ推理を披露する青砥。
そしてそれを修正していく探偵役との榎本と
犯人との直接対決が描かれる。うならされた。
角川文庫 580ページ。
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:42| Comment(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする