高校生の櫛森秀一は昏い情熱を燃やし、
完全犯罪を目論むのだが…。
現代版『罪と罰』開幕。
母と妹と暮らす秀一は湘南の高校に自転車で通う。
十年も前に母と離婚した三拍子揃ったダメな元父親が
強引に居座り恐怖を感じていた。
酒を飲み勝手に振る舞い目障り極まりない。
特に妹に危害を加えないかと危惧する秀一は
離婚の際にお世話になった弁護士に相談する。
しかし母の態度が定まらずいらだちを募らせる。
現状では警察も弁護士も事態を解決してくれない。
精神的に追い詰められ苦悩。
あんな人間のクズいっそ処刑してしまえば。
自分は『罪と罰』の主人公のように罪悪感に
とらわれず、疑われなければ捕らわれない。
不審を抱かれないような自然死に見える殺人。
計画を練り、少しずつ見えていく解決の手段。
もう後戻りできない…。
しあわせを守るために
犯罪に手を染める孤独で悲しい戦い。
手の中にあったはずの確かなしあわせが
こぼれ落ちていく。
彼を想う家族や同級生の気持ちを偽りながら
廻り始めた車輪はノンストップで止まらない。
物語は回転数を上げ続け終末へ。
角川文庫