2017年07月23日

小説『悪人』吉田修一

九州で殺人事件が発生。殺人者と被害者が提示され、
その事件に至った経緯、そして現在が描かれていく。
悲しい過去を持つ殺人者。事件に関わる人々が
描かれていく過程で読者に疑問を投げかけるのは
タイトル「悪人」の意味。どうやら殺人者清水祐一
そのひとを指しているわけではなさそうだと気付く。

被害者でありながら、貶められる人権。
無罪放免こそされても決して人道的に許せないヒト。
大切な人の命を奪われた家族の失意。
予期せぬ形で人を殺めてしまった好青年
だったはずの犯人が取っていた謎の行為と真意。
彼に寄り添う人々…。
事件をめぐり、人々の心がどのように動き、
行動に駆り立てられたのかを描く。後半よい。
朝日新聞出版 上・下巻
ラベル:吉田修一
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2017年07月17日

小説『ドS刑事 風が吹けば桶屋が儲かる事件』七尾与史

静岡県浜松市で発生した連続放火殺人事件を追う
猟奇的な美魔女黒井マヤと代官山はコンビを組み事件を追う。
美しいが毒ばかり吐くマヤに翻弄される部下の代官山。
通常と異なる精神回路を持つマヤは殺人現場に漂う
酸鼻な状況を心から愉しんでいる。病んでいる…。
しかも彼女、たちの悪いことに警察のおエライさん
(ナンバーツー)を父に持つ。
家族におエライさんがいるなんて浅見光彦みたいだ。
彼女の機嫌を損ない僻地に飛ばされた者もいるという。

絶対的な権力の庇護の下、やる気を見せず仕事を
サボろうとする彼女であったが抜群の推理力を持つ。
事件を追ううちにコンビを組む代官山は疑問を抱く。
彼女すでに事件の真相にたどりついてないか?
でもなぜか捜査に対して積極的な進言しないし、
推理を披露してもくれない。
代官山はクセのあるアニメオタクの先輩の助言などから
彼女の推理を推理することを選択した。

殺人の動機を持つ容疑者が次々と出てくるが
その容疑者たちが次々と焼死体となり発見される。
負の連鎖、悪意のバトン渡しのリレー。
犯行の動機(因果関係)を追っていくこのミステリーは
設定上一見イロモノ感があるが緻密に計算されていて
エンターテインメントとしては一級品。幻冬舎文庫
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2017年07月11日

小説「ラスト・コード」堂場瞬一

渡米した天才少女美咲が告げられたのは唯一の肉親である
父が殺人事件に巻き込まれたというものだった。
羽田空港に来てほしいと言われた彼女は
数学オリンピック金メダルの理系女子でまだ14歳だった。
2年前の母の死により、元々うまくいっていなかった
親子の仲は余計にこじれ、心は離れてしまっていた。

過去の「事件」をきっかけに警察内部で腫れ物に触るように
扱われている刑事筒井は被害者の娘である美咲を迎えに行く。
父の死を悲しんでいないような少女に当惑する筒井は
署をめざすのだが、何者かから襲撃を受ける。
戸惑う筒井、なぜか冷静な美咲。
応援を要請する筒井であったが、上層部の思惑、
謎の圧力がかかり、人手不足を理由に援助を受けられない。
移動する度に襲撃を受け、おまけに警察内部で
誰が味方かわからない筒井は元警察官の探偵小野寺冴
に助けを求めることにした。

徐々に明らかになっていく美咲の父の行動。
警察内部で発生した政治的駆け引き。大義なき行動。
刑事である筒井、そして警察内部の核弾頭鳴沢了、
小野寺冴が抱える正義感の功罪。
孤高の存在であることの難しさと、
組織で生きることのジレンマ。
人間の心は数字化できるものじゃないから
解き明かせない。決して…。中央文庫
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2017年07月04日

小説『逸脱 捜査一課・沢村慶司』堂場瞬一

県警捜査一課澤村は優秀だがスタンドプレーが
めだつ男で上司と対立を繰り返す。
過去に目の前で人質にされたこどもを刺殺された
過ちを償うために自らに課したのは完璧な刑事。
澤村をかばう課長谷口、コンビを組んだ初美、
プロファイリングを駆使する変人橋詰らと共に
連続殺人事件を追う。捜査陣をあざ笑うかのような
大胆かつ冷静な犯行の手口から警察関係者が疑われる。
自分の犯行、行動に関して絶対的な自信をのぞかせる
犯人は尻尾を掴ませない。ねじまがった正義感から
犯行を繰り返す犯人を追ううちに澤村はある一人の
人物に行き着く。性質の悪いことにその姿は自分を
映す鏡のような人物。悪(悪人)に近い位置に立つ
人間は悪に毒されやすい。皮肉にも犯人は…。
角川文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:33| Comment(0) | TrackBack(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする