2017年03月15日

小説『私のなかの彼女』角田光代

祖母の書いたと思しき小説の発見。
書きたいという気持ちが生まれたことで
変わっていく自分の気持ちと人生。
離れていく恋人仙太郎との距離。
そして自分を縛り付ける母、仙太郎の言葉。
それでも私は書く…。

バブル期に大学卒業を迎えることになった和歌は
同棲相手仙太郎との結婚を望んでいた。
宇都宮からやってきた特別自信もない自分は
出版の世界でちょっと名の知れた存在である仙太郎に
強い影響を受けながらなんとなく生きていた。
保守的な母は和歌の社会進出や進学にいい顔をせず、
常にプレッシャーをかけてくる。
特に母の母である祖母の存在が大きい。
「男と張り合おうとするな」という言葉を残した
祖母は物書きを志し、家出した過去がある。
祖母の行為を恥と捉えていた母は、
祖母を醜女(しこめ)と呼び、忌み嫌っていた。

しかし、何の因果か和歌は祖母の過去を想像し
小説で賞をとってしまう。妄想と現実の中で生きる
和歌はときに心を乱し、ときに寝食を忘れ仕事に没頭。
かつて望んでいたはずの仙太郎との暮らしであったが、
徐々にほころびが見え始め…。

変わっていく自分と環境の中でもがきながら
舟をこぐ和歌。漕ぎ手は誰でもない自分。
失ったものもあるが手にしたものも必ずある。新潮文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:35| Comment(0) | TrackBack(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする