2016年04月29日

小説『嫌な女』桂望実

石田徹子は母と姉の熱心な働きかけにより勉強に明け暮れ
弁護士に。しかし、常に心は満たされぬ想いを抱えていた。
そんな彼女の遠縁に同い年の小谷夏子という女がいた。
幼少期から大人の心をわしづかみにしわがまま放題。
徹子のひまわりのワンピースをずたずたにした夏子の印象は
もちろん最悪である。

小悪党で人の心の隙間に入り込むことに天性の才能がある
この悪女は詐欺によるトラブルを起こし、
結果徹子はこの厄介な親戚の揉め事の解決に駆り出される。
お金が大好きでまじめに働くことは嫌い。普段の行いも悪い
夏子に眉をひそめていた徹子であったが、年を重ねるごとに
彼女の魅力に気付く。いつしか夏子を応援している徹子。

確かに夏子は人から金を奪うが人を勇気づけたり、夢を見せたり
と与えている部分も多い。つめが甘く、大金をせしめることに
失敗したり、ターゲットに詐欺行為を見破られていることもある。
不思議と愛嬌があるのである。

また本作では弁護士徹子が遺言作成に関わる事案が多いのだが
そのエピソードや弁護士事務所でのやりとりなど秀逸な点も多い。
登場人物たちが年齢を重ね、またどういった人間関係を築いて
いくのかも見ものである。光文社文庫
ラベル:桂望実
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2016年04月23日

小説『平成大家族』中島京子

緋田夫婦は90過ぎの姑と30代ひきこもりの長男と共に
まぁ静かな暮らしを送っていた。
しかし、経営がうまくいかなくなった長女の一家3人と
離婚した次女がやってきたことで8人の大家族に。

両親の勧めにより猛勉強の末に進学校に進学した孫は
公立校への転校を余儀なくされ、物置に閉じこもる。
ひきこもっていた長男には意外な形でロマンスが訪れ
帰ってきた次女は妊娠発覚。そこには秘密があって。
そして祖母は昔の記憶と現在の記憶があいまいになり…。

大所帯になったことで起こる悲喜交々。
よく言えば平穏を愛し、悪く言えば事なかれ主義の当主
龍太郎とその妻春子に安息の日々は訪れるのか?
コミカルでおもしろい。集英社文庫
ラベル:おすすめ
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2016年04月16日

小説『ガソリン生活』伊坂幸太郎

人の暮らしに密接に関わる車は思考し車同士では会話もする。
望月家の愛車緑のデミオはひょんなことから、
元女優荒木翠を乗せることになる。
名家の生まれにして、恋多き女性で仙台ではファンも多い。
そんな彼女だったが、自動車事故を起こして死亡。
目下噂されていた恋人も同乗していた。

ダイアナ妃を思わせるこの悲惨すぎる事故を知り、
望月家とデミオは心を痛めた。
だが情報通の自動車たちはささやき合う。
あの事故には隠されたからくりがあるのではないか?

頼りない長男良夫、恋人ができたらしい長女まどか、
子供らしくない頭脳の持ち主亨とその母とデミオに
危険人物トガリの恐怖にかられた子分たちの魔の手が迫る。

笑いあり、涙あり、バランス感覚抜群の一冊。朝日新聞出版
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2016年04月10日

小説『何者』朝井リョウ

就活を迎えることになった5人の大学生と
劇団員の道を選ぶことにした者。
お互い「内定」の道を得ようと協力し合う彼らだったが
そこに見え隠れする人間の負の感情。
直面する選考落ち。
まだ何者でもなく、直接的な責任を負っていない彼らが
感情をぶつけ合い、現実の自分と向き合う。
誰もが他人を批評することはうまくても
自分を評価することはヘタという事実を鋭くえぐる。
新潮社
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