2015年07月29日

小説【世界の終わり、あるいは始まり】歌野晶午

連続誘拐殺人事件の犯人は息子の雄介ではないか?
富樫修は小学六年生でありながら妙に大人びた雄介が
世間をにぎわせる残虐な事件と関わりがあると疑う。
息子を信じたい。だが調べれば調べるほど、
不都合な真実が見えてきてしまう。
身近に被害者がいても、それが実の子供でなければ
どこか他人事として捉えていた主人公であった。
自分の子供が殺人犯の毒牙にかかるとも思えない。
冷血漢と言われようと、楽観的と思われようと
わが身にふりかかなければそんなものかもしれない。
だがよりにもよって自分のこどもが犯人だなんて。
しあわせな家庭はみせかけの虚像だったのか?
ほころびはいつからはじまっていたのか?
警察の捜査はどこまで進んでいるのか?
絶望的な状況に対する打開策は?
事件が発覚したら、一体どんな事態に陥るのか?
そこに希望はあるのか?
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2015年07月23日

小説【深紅】野沢尚

凄惨な殺人事件の被害者の娘、加害者の娘が
乗り越えた8年の歳月と命の重みとは?

修学旅行を楽しんでいた奏子だったが深夜突然の呼び出し。
家族四人が事故に遭ったと先生から伝えられた。
違う。これはもっとひどいことが起こったに違いない。
実家に戻る途中、奏子は確信した。
家族に出会うまでの4時間の迫力満点の描写。
そして家族との対面。変わり果てた姿に愕然とする。
彼女には伏せられていたが、家族はハンマーで襲撃された。

犯人はあっさり捕まった。仕事上の知り合いだった。
奏子の父によって詐欺に遭い不誠実な対応をされ、
妻の死を踏みにじる言動が引きがねとなった。
詳細に語られる供述であったが、奏子の幼い弟たちが
被害に遭った部分だけはあいまいな供述であった。

それから8年。大学に入学した奏子は表面上はまともに
成長していた。善良な叔母家族と実の家族がもたらした
保険金により生活に不自由することはなかった。
ただ事件の痛みが完全に癒えることはなく、
ときに悪夢の4時間を追体験することがある。
そんな奏子の耳に届いたのはあの犯人の死刑が確定した
というニュースであった。奏子の中で事件は終わらなかった。
奏子は、犯人に自分と同い年の娘未歩がいることを知る。
未歩に会ってみよう。
奏子は偽名を名乗り正体を隠し、未歩に会うことにした。

絶対あってはならない事件によって
絶対会ってはならない二人がうまれた。
法が守ってはくれない被害者家族の実態と苦しみや怒り。
偽らざる加害者の心情。加害者家族の想い。
フィクションでありながら、リアルで真実に迫る。
普通に生きられない道を歩くことになった普通の二人の
魂の咆哮。生きろ!思わず叫んでしまう会心の傑作。
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2015年07月19日

小説【てふてふ荘へようこそ】乾ルカ

幽霊とシェアハウス?
敷金礼金なしで家賃はわずか13000円。
破格のアパートはワケあり物件だった。
はっきりくっきり見える幽霊と同居する住人たちは
いつしか本音を吐き、魂(心)を通わせる。
恋をした女性を急死させてしまう高橋の同居人は
愛らしい陽気な幽霊さやかであった。
傷心癒えぬ高橋は部屋を変えてほしいと申し出るが…。

なんだかんだで同居人同士うまくいっている部屋と
いつまで経ってもうまらない幽霊だけが住む部屋。
美声で世話焼きの大家によって生まれた不思議な空間
てふてふ荘でのヒューマンドラマは切なくて愛しい。
角川文庫
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2015年07月15日

小説【影法師】百田尚樹

下級武士でありながら家老に大出世した勘一は
唯一無二の親友にして「恩人」彦四郎の死を知る。
剣は達人、塾では最高の成績でありながらおごらない。
誰もが認める豪傑だったが、ある日を境に
奇矯な振る舞いをとるようになった。
不遇や不幸なめぐりあわせが彼を変えてしまったのか。
勘一は過去を回想しながら、彦四郎の姿を追う。
そこには、かつて友と交わした約束を破らせるだけの
男の生き様があった。

江戸時代。封建的で閉鎖的な階級制度の社会。
下級武士の子であった勘一は幼くして父を亡くす。
ヨゴレ上級武士によりこどもが斬られそうになり
これをかばったからである。涙を流す勘一に
「武士の子が泣くものではない」と言われた。
彦四郎であった。その言葉を支えに勘一は精進。
誰もが認める天賦の才を持つ彦四郎と共に勘一は
成長していき、藩の抱える問題に直面していく。
米の不作により生活が逼迫した農民が直訴、
受け入れられなければ一揆を起こすという。
武士だけでなく農民も命懸けでやってきた。

藩の窮状を知った勘一は財政再建のために
干拓事業の夢を彦四郎に語る。今の立場で進言すれば
不敬であり最悪切腹を申し渡されると止められた。
私腹を肥やし暗躍する家老や上級武士、
藩主に逆らった不穏分子を殺害せよ。
手練との戦いにより二人の明暗は分かれてしまった。
藩主に気にいられ重用されていく勘一、
逆に彦四郎は背中に傷を負い不遇の日々を送る。
竹馬の友から聞こえてくる彦四郎の近況は耳を疑う
よくないものばかりだった。
不幸なめぐりあわせが、自分のとった言動が彦四郎の
悪循環を引き起こしたのではないか。
かつてお互いを自分以上に高く評価しながら、
全く違う道を歩んだ二人が「信じた」こととは。
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2015年07月11日

小説【傍聞き かたえぎき】長岡弘樹

【迷走】

救急車が患者を乗せて走る。しかし、なぜか病院への
搬送を避けるかのような指示が飛ぶ。緊迫の車内。
患者は救急隊員たちと知り合いであった。
そして、電話先の相手医者とも。
客観的に恨まれて当然の相手という特段の事情があった。

【傍聞き】

なぜ心を通わせることができないのか。
女性刑事は娘の行動に悩んでいた。
どんなにがんばっても理解されない。
そんな仕事もあるかもしれない。
だからと言って手は抜けないじゃない。
主人公が娘の意図に気付くとき爽やかな風が吹く。

【899】

想いを寄せる女性の自宅が火事になった。
屋内には赤ん坊が取り残されているという。
煙が充満する屋内に救出に向かう男たち。
だが赤ん坊は見つからない。
焦る主人公だったが、悼みを抱える同僚が
赤ん坊を助けだし事なきを得た。だがしかし…

【迷い箱】

捨てようか迷ったら一旦この迷い箱に入れればいい。
受刑者たちを見守る結子は、過失によって子供を
殺してしまった碓井が自殺しないか危惧していた。
双葉文庫。珠玉の短編集。
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2015年07月05日

小説【銀行仕置人】池井戸潤

500億円融資が焦げ付き、その責任を押しつけられ
黒部に銀行員としての出世の道は閉ざされた。
人事部付の新しい職場は座敷牢と揶揄される左遷先。
最速でエリートコースをたどっていたのに、
詰腹を切らされた形の彼は下っ端にもなめられ
苦汁の日々を送る羽目に。
人事部長によって彼に与えられたのは、
銀行員たち身内が行っている不正を暴くことだった。
行く先々で犯罪者どもが登場し、かつての出世頭を罵る。
しかし、黒部は数少ない味方と共に身内の恥をあばき
迷惑をかけた関係者たちに頭を下げてまわる。
彼の熱意は人の心を動かし、
自分を罠にはめてご満悦な奴らに肉薄していく。
だがその行為はある者にとっては自分の破滅となるので
妨害工作を受けることもしばしば。
エリートでありながらやたら打たれ強い黒部は
銀行員としての矜持を胸に困難に立ち向かっていく。
ハードボイルド路線。「花咲舞が黙ってない」原作。
でも花咲舞は出てこない。双葉文庫。
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2015年07月01日

小説【有頂天家族】森見登美彦

京都を舞台に狸の名門下鴨家とライバルのヨゴレ
夷川家が火花を散らす。
かつて大天狗と恐れられていたが、弟子の弁天に
骨抜きにされた赤玉先生も巻き込んで大騒動。
笑いあり、涙ありの毛玉ファンタジー。

父は偉大だった。狸の大親分であった。
残念ながら狸鍋にされ喰われてしまった。
彼には4人の息子があった。
まじめ、のんき、阿呆、気弱の4人は残念な
息子たちと言われたが母は笑い飛ばした。
息子たちを信じていたからだ。母もまた偉大だった。

新たな狸の大親分を決めようと下鴨家は長男が
夷川家は家長がそれぞれ名乗りを上げた。
親戚でありながら、過去の因縁から仲の悪い両家。
特に夷川家は何かと底意地の悪い態度をとる。
阿呆の三男矢三郎と夷川家の娘は許嫁でありながら
夷川家によって一方的に結婚を破談された。
しかし矢三郎はそのことを気にしていない。
実力伯仲と言われる大親分の取り決めとなると
ヨゴレの夷川家が何もしないわけがない。
下鴨家が大ピンチに陥る。幻冬舎文庫
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