2013年01月22日

小説『死神の精度』伊坂幸太郎

【死神】

本編の「死神」とは不幸な事故(災害を含む)や

殺人事件などによって命を落としてしまう人間に対し

調査部の「死神」がその対象者の前に姿を現し

一週間観察することで

その人間の死を「可」とするか「延長」(延命)するかを

決めることを仕事としている存在である。

どちらを選択しても死神に特に功績やペナルティーが

あるわけではなく、「可」とした場合

死神に出会ってから8日目に命を落とすことになる。

ちなみに自殺や病死などは死神の仕業ではない。

死神に共通していることはジャンルを問わず音楽好き。

また、対象者に合わせて、姿かたちを変えて

対象者の前に現れることができる。

食事や睡眠などは全く不要であり、それで体力などが

損なわれることはない。ちなみに味覚はない。

暴力などによる打撃に対するダメージはない。

人間の持つ心の機微などの類は基本的に理解していない。

死神に直接触れられると気絶してしまい、

寿命が1年縮むらしい。


本作における主人公の死神は千葉と名乗る存在で

性別はとりあえず男。

死神の中にはろくな調査もせず対象者を「可」とし

ずっと音楽を聴き続けているだけの死神が多いが

千葉は仕事に対してまじめなので調査に比較的熱心。

よって対象者と行動を共にする時間も長く

おかしくも奇妙な人間?ドラマが展開される。

彼は人間界のことに疎いので対象者と行動を共にする間

すっかり変わり者扱いされてしまう。


死を連れてくる「死神」という存在の千葉だが

恐怖や畏怖の対象とはほど遠い。

彼が行くところ雨が降り、

未だに晴れた空を見たことがないという。

物語は千葉に遭うことで起こる対象者の激動の一週間を

コミカルにかつ卓抜な文章で描いた傑作小説である。

千葉と関わる対象者の6つの人生を垣間見るとき

「生」と「死」が地続きの存在であると再認識する。

また人に対して愛おしさがこみあげてくる。


『ACCURACY OF DEATH』

文春文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 21:28| Comment(0) | TrackBack(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする