2010年06月01日

小説『タッチ』ダニエル・キイス

放射能漏れによって、バーニーとカレン夫妻が

被る一連の騒動と葛藤を描いた闘争劇。


結婚4年目。芸術家であり気難し屋のバーニーと

夢見がちな所のあるカレン夫妻は、

こどもがほしいのだが授からず不妊に悩んでいた。


元々バーニーは学生時代、カレンの姉である

マイラに首ったけだったのだが、

マイラは突然助教授と駆け落ちし姿をくらませた。

マイラの妹だったカレンはバーニーに好意を抱き

彼らは結婚。そういった背景や不妊もあり

二人の関係はぎくしゃくとしたものに。


そんなある日のこと。

バーニーは自分が勤めている会社で放射能事故が

起こったことを知る。

そして、自動車をいっしょに乗っていた同僚が

被爆し、自分と妻カレンもその被害者であることを

知らされる。


市民をパニックにしたくない(もちろん詭弁)

という配慮から口外無用を命じられ、

彼らが触れた場所は放射能ちりが拡散している

ということで市内に同行を求められる。

被害者でありながら、投げつけられる市民からの

心ない言葉に傷つく二人。


ささくれだっていくカレンとバーニーは

身体だけでなく精神的に蝕まれていく二人。


会社から提示された非良心的な損害賠償。

そして本来被害者であるはずの二人が

市民から向けられる非人道的な扱いと暴力。

圧倒的悪意。


そんな折、カレンは妊娠したことを知る。

複雑な想いを抱きながら、この子を産むべきか

どうかに葛藤するカレン。

味方が主治医と近所の老夫婦くらいしかいない。

彼らの両親でさえも、何の助けにもならない。

そんな過酷な状況の中で、暴力的な衝動にかられる 

バーニーに相談できずに悩むカレン。


そして、宗教に傾倒したマイラが登場。


自分の怒りを芸術にぶつけるかのように

没頭していくバーニー。母性に目覚め、

命を育てていこうとするカレン。

失ったかに思われた夫婦の愛情が蘇生するまでの

軌跡を「悪夢」や回想を用いながら、

グロテスクに鋭く描く。


被爆や放射能事故、放射能盗難などの事象が

起こった際に政府や会社がとる一般的な選択は

ほぼ「隠蔽」及び「公表の先延ばし」である。

本書はその非人道的・無責任な事実を鋭く描く。

角川書房。 約300ページ。 秋津和子訳

タッチ

タッチ

  • 作者: ダニエル キイス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 単行本



ラベル:小説
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 18:22| Comment(0) | TrackBack(0) | おすすめの長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする