2008年09月19日

小説「雷桜」宇江佐真理


雷雨の日に連れ去られた庄屋の娘遊は、十五年ぶりに女傑の「狼娘」

として機関を果たし、数奇な運命をたどる。370ページ。


紀州の山奥の瀬田村の庄屋助左衛門は、村人から慕われる好人物

だったが隣の藩の逆恨みを受け、雷雨の日に赤ん坊だった遊を

連れ去られる。地元の者も恐れて近づかない山で生きているのでは

ないか?という一縷の望みを信じ、一家は日々の生活を送る。


遊は生きていると信じる次男の助次郎は、ある日馬に跨った不思議な

少年に出会う。少年は、誰もが恐れて近づかない山道を助次郎と

ともに名馬で駆け抜ける。助次郎は、あれは少年ではなく妹の遊

だったのではないか……と考える。


助次郎は後に、御三卿清水家の中臣として百姓としては異例の出世を

遂げるのだが、清水家の当主である斉道(将軍家斉の息子)は、

心の病を抱えた癇癪持ちの乱暴狼藉を繰り返す絵に書いたような

暴君であった。助次郎は、斉道の家臣である榎戸の手助けになれば

と思い、心を砕き、いつしか斉道と心を通わせるようになる。

そんな折、ついに遊が帰還を果たし、斉道は助次郎から聞いていた

遊の噂を知り、彼の母親と同じ名前を持つ遊に会ってみたいと

言い出すのだった。


雷桜…らいおう

遊が生まれた頃に、イチョウの樹に雷が落ち、

桜が生えてきたことに由来する不思議な桜である。
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 19:18| Comment(0) | TrackBack(0) | おすすめの長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする