筋金入りの頑固親父も、自分らしさの檻の中でもがく人間だった。
異常なまでに厳格、異性との付き合いに過剰に反応し、こどもたちに
干渉し続けた父が亡くなった。20歳のときに家を飛び出し、
その日暮らしの生活をしていた私野々は、5年ぶりに家に戻り、
同様に家を飛び出したちゃらんぽらんな兄や、父の影響をもろに
受けた妹といっしょに、父がどうしてあんなに厳格になったのかを
考える。そんな折、どうやら父が不倫をしていたということがわかり
私たち兄妹は裏切られたような気持ちにとらわれる。
あれだけ私たちに潔癖を強いり、自分も潔癖な生活を貫いていた
父の過去に見え隠れする「暗い血」の秘密とは何なのか?
父を知ることで、自分たちが父の呪縛から逃れられるかもしれないと
私たちは父が生まれ育ち、その後二度と父が訪れることがなかった
佐渡島にやってくる。そして、私たち同様に父も
あるがままの心で生きようともがく一人の人間にすぎず、
また私自信も、自分自信と向き合って生きていかなくちゃ
いけないということだった。「名もなき詩」を連想する小説。
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