江戸の幕末。貧乏御家人彦四郎は、文武を兼ね備えた
ひとかどの人物でありながら、家のしがらみや嫡男(長男)
に生まれなかったことを理由に、こづかいもままならない。
兄の家に厄介になりながら、出世を諦めきれない彦四郎は、
苦しいときの神頼みと三巡稲荷の祠に手を合わせた所、
まさに霊験あらたか、次々と神様が現れた。
もっとも、それらの神様は邪神(貧乏神、厄病神、死神)であり、
彼らの出現によって、彦四郎はつらい決断を迫られる。
武士の持つ「義」と、浅田氏のユーモアが光る時代小説。
激動の時代に、馬鹿正直に生きる彦四郎の潔さが心地よい340ページ。