2020年07月02日

小説『銀河に口笛』朱川湊人

昭和40年代、小学3年生の僕たちは不思議な力やアイテム、
浮世離れした家に住むリンダをともだちになった。
「ウルトラマリン隊」のメンバーは、多分宇宙人と思われる
彫刻顔のリンダを仲間に加え、人助けをはじめた。

性同一性障害に悩む美少年ミハルもメンバーに加わり、
こどもたちから寄せられる依頼を引き受けていく。
過去を追想していく僕らの思い出は温かくて愛しい。
成長を遂げる僕らだったが、別れは突然訪れた。

個性的な仲間たちがそれぞれを尊重した結果、
うまくいくこともうまくいかないこともある。
遭遇した事件を解決する達成感、
もっと自分にできたことはないのかという反省や後悔、
他社に対する思いやり、前に歩いていくという意思、
大人になり、病気と直面した僕の前に現れたのは
昔と変わらぬ親友の姿だった。

少年の日の美しい思い出は色あせない。
みんなで吹いた口笛の音色。宇宙を超えた友情。
やはり朱川先生はUMA的な話に秀逸な作品が多い。
角川文庫
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2020年06月25日

小説『神様ゲーム』麻耶雄嵩

自称神様鈴木君により真実は浮き彫りに。
新感覚ミステリー。

連続猫殺害事件が発生し、少年探偵団の僕は
メンバー計5人と共に秘密基地で推理に花を咲かす。
そんな僕は引っ越してきた鈴木君と話すようになる。
自分は神様と言い出し、何でも知っていると豪語する
鈴木君は猫殺しの犯人も知っているらしく、
具体的な名前を口にする。

自分の両親は違う人、誕生日も違う、
そして発生した殺人事件の犯人も知っている。
それは推理ではなく、真実であると断言する鈴木君。
自称神様は世界中どこにでもいっぱいあふれているが
この物語の中の神様はどうもホンモノのようで…。

「真実」に近づいていくこと、本当のことを知ったり
隠されていた秘密が暴かれていくのは必ずしも幸せに
直結しない。理不尽で無慈悲な物語に、
やるせない気持ちになるイヤミス要素が強い。
しかし構成力や伏線の張り方は見事で読みやすい。
鈴木君に天誅をお願いする僕の正義感は
どんな結末を迎えるのか。講談社文庫 約200ページ
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2020年06月18日

小説『ぼくのメジャースプーン』辻村深月

大切にしていた人が心を失った。
彼女の心を取り戻したい。
犯人は絶対に許せない。
小学生の僕は「洗脳」とも言える超能力を持ち、
数少ない能力者である先生と会話を重ねていく。
これは僕の戦いだ。誰にも止められない。

親同士が仲がよかったこともあり、僕は同級生の
ふみちゃんと知り合う。大人びていて、読書家で
そして誰よりもやさしい心を持ったふみちゃん。
彼女の力になりたいという思いが通じたのか。
特別な力が発動したのだが、母はこの力を危惧し
絶対に使ってはいけないと釘を刺した。

うさぎが大好きなふみちゃんは、犯人の悪意により
心を失ってしまい、学校に来なくなってしまう。
毎日必死になって彼女に呼びかける主人公の僕。
しかし自分の無力さを痛感する。僕はあの力を使い、
犯人の罪に対し罰を与えようと考えた。同じ力を持ち、
相談相手になってくれた先生に諭される僕。

正義感、罪悪感、矜持…こどもだからこそ持つ純粋さから
突き進む主人公、そして物語のヒロインふみちゃんも
きっと心の中で戦っているんだろうな。
本来出会わなくていいはずの「悪意」に遭遇したり、
被害者になってしまったとき、人はどうやって折り合いを
つけたり、それを乗り越えていくのか。講談社文庫
ラベル:小説 辻村深月
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2020年05月20日

『君たちに明日はない』垣根涼介

ジャニーズ崩れの一見チャラい容姿の村上真介は
頭の回転が速く、弁が立つ、脳天気キャラで
特殊な人生観、生い立ちを持っている。
(マツコの隣でしゃべっているアイツを連想させる)彼は
いわゆるリストラ請負会社で働いている。

様々な業種で働いていた社員たちが、会社の再構築、
リストラの犠牲で退職勧告をされる。
法律の建前上、正社員は強制的に辞めさせられない。
通常の退職金に条件上乗せ、再就職期間中の3ヶ月間は
その会社に籍を置いていられるなど好条件を提示され、
退職するという選択肢もアリですよね?と誘導される。
もし会社に残っても、業績の悪化などを理由に
給料や年収の大幅な減俸や部署替えなどを命じられ、
窓際に追いやられる。

会社に見切りをつける者、目先の好条件につられる者、
涙を飲んでこれを受け入れる者が登場し、
被害者面をして激高する者と反応は人それぞれ。
その仕事の性質上、心情を吐露されたり、重い相談や
選択を迫られる者も多い。物語は、面接者である真介、
そして被面接者たちを描きながら進められる。

そもそも人は何で働くのだろう?仕事ってなんだろう?
このシリーズにおける大きなテーマである。
報酬(賃金)以外にもどんな要素が絡んでくるのか?
仕事に対するやりがいやライフワーク、
派生する人間関係、社会情勢に変化、将来を見据えて…。
人生観やその人そのものの生き方にも大いに関わる問題だ。
そういった深い話にもズバスバ切り込んでくる。

真介たちにクビ勧告を丸投げしてくる依頼会社的には、
あくまで退職勧告する内の何割かが退職してくれればいい。
中には、会社的にリストラ候補に挙がってはいるが、
本音としては辞めてほしくない者もいる。
そういう人には、依頼会社側からやんわりと軽めの
退社勧告をしてほしいと頼まれる。あくまで条件提示として。
苦笑モノである。

きっとこいつらは自分たちの手を汚さず自分たちは
善人のままでいたい悪人なのだろう。噴飯物である。
現に経営者側のそういった姿勢に対して、従業員の中には
強い不信感を抱き、優秀な人材が流出することもある。
まぁリストラ候補に入れられた時点で、会社に対して
悪感情を持つのは当然なのである。自業自得。

そうは言っても仕事だからと割り切りながら、
一見何も考えていなそうで、その実ある意味利口な
白痴美人と共に真介は仕事をこなしていく。
ときに面談者から罵倒され、お茶をぶっかけられ、
泣き出され、ツラい思いをしながらも、なぜかこの仕事に
不思議な魅力を感じ続けているのはなぜだろう?
独自の感性、バックボーンを持つ主人公が面接者と
対話・会話し、そのことが彼女、彼らにどんな選択を
させるのか。大手企業ですら終身雇用が崩壊したり、
倒産したり、大手リストラを敢行するようになった
社会構造の中で本当身につまされるよ。
真介が入社したリストラ請負会社はそんな社会情勢、
ニッチ(隙間)なニーズ産業であり、高橋社長自体も
「先細りして需要がなくなっていく」ことは予見している。

例えば、自分が貰ってる賃金が少ないと感じても、
会社側からしてみたら雇用までに至る費用や
その後もその人を雇うための必要経費が派生する。
ある大手企業がひとりの人間を雇うまでに400万円かかり、
その従業員に賃金他を払いながら、その人がまともに
働いてくれて諸々の費用を回収するのに3年かかるという。
つまり3年以内に辞められたらマイナスなのである。
社員を教育したり、関わったりした数値化できない
労力を考えたら…。

もちろん雇用者側にも従業員側にも言い分はあるし、
複雑な人間関係や会社の都合、社会情勢…諸々の要素も
関わってくる。作中でも語られるように、
がんばっていれば報われる終身雇用が約束された
時代は終わり、社会は流動的でどんな優秀な人材でも
絶対安泰と言うような時代ではない。
でも明日はないと言っても生きているかぎり明日は来る。
地続きの明日はやってくる。そのときそのときで、
最良と思えるような選択を死ぬまで続けるしかない。
新潮文庫 全5巻 君たちに明日はない、借金取りの皇子、
張り込み姫、永遠のディーバ、迷子の王様
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2020年04月15日

小説『ナミヤ雑貨店の奇蹟』東野圭吾

ケチなドロボウ3人組が訪れたのは時空を超えた
悩みを解決する奇蹟の雑貨店だった。
郵便箱に投函した手紙(書簡)の主は過去の人物?
そして、感情的に悩みの主に本音をぶつける3人組。

他人の悩みを手紙によって知り、善意から解決を図る
老店主ナミヤ氏。
彼に悩みを提示し、問題解決を図る相談人たちの
その後の人生とは?
そして不思議な奇縁によってナミヤ雑貨店で
人生相談に応じることになった3人組。

児童養護施設「丸光園」と深い関係を持つ雑貨店の謎、
秘密や人間関係が徐々に明かされていくという
かなり凝った構成で描かれているミステリーファンタジー。
読後感、爽快感は東野作品屈指の傑作。角川文庫
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2020年04月08日

小説『去年の冬、きみと別れ』中村文則

死刑囚木原坂雄大を取材し、本を出すことを編集者から
命じられた僕は面会に出かける。女性二人を焼死させた
猟奇殺人犯の彼は有名な写真家であった
怪物のような存在と思われた木原坂だが、他人からの
影響を受けやすく、特に姉に対する執着が強いという
印象を受けた。僕は思う。木原坂は犯人ではないのでは?

父からの虐待、母の失踪、養護施設で育ったという
姉弟はよくも悪くも強い結びつきがある。
写真の被写体に対し病的な強い執着心を抱く弟。
そして、どこか人生投げやりでアンニュイな雰囲気の姉。

姉は弟の犯罪を真っ向から否定したが、状況証拠から
木原坂は猟奇的な連続殺人犯として死刑確定し服役中。
蠱惑的な姉の誘惑もあり、思わず口づけを交わす僕。
「私を助けて」
姉のつぶやきが印象的だ。

僕は本を出すことを断念し編集者に失望される。
この物語には多くの謎や伏線がちりばめられている。
一読しただけで納得できずわからない箇所も多い、
200ページ弱なので読み返したくなるダークミステリー。
芥川龍之介の「地獄変」が引用され木原坂の犯行動機に
迫っているが、この話自体が暗喩なのではないか。
幻冬舎文庫
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2020年03月26日

【名著 名言集・迷言集】

あなたの地図は、まだ白紙なのです。
白紙なのだから、どんな地図だって描けます。
すべてがあなた次第なのです。
何もかもが自由で、可能性は無限に広がっています。

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』東野圭吾

シャトルを宇宙に飛ばす技術と、
用便のたびに肛門を洗浄する技術とは、
いったいどちらが人類にとっての偉大な発明なのか

世界一速いアヒル。
空気抵抗を研究しつくした結果、
その顔が鷲でもチーターでもなくアヒルになった
というのは、なんとも皮肉な話だ。(新幹線)

女性アナウンサーは借り着のようなブラウスを着ていて、
男性のネクタイは趣味が悪い。
音声や画像の質よりも、彼らのファッション・センスに
よって、これが国営放送(NHK)だとわかる。

『わが心のジェニファー』浅田次郎

朝日新聞の良識を私は疑う。おそらく、声は聞いても
それを正しく解析する能力を持たぬのであろう。
ここにもまた、ちがう階層からホームレスを見くだす、
無責任な施しの目を感ずる。

人は、もはやこれまでと思えば石に蹴つまずいても死ぬ。
自分の力で踏みこたえていなければ、どこまででも堕ちて行く。
死なぬように堕ちぬように懸命の努力をすることこそ、
人の人たる所以なのである。

『勇気凜々ルリの色 四十肩と恋愛』浅田次郎

失敗や破綻がどんな不可抗力であるにせよ、
理不尽な原因があるにせよ、
結果はおのれの責任として負わねばならない。
他人にわびるより先に身内をかばうなど言語道断、
ましてや上司のせいにし、おのれの痛みを公言するなど、
稚気も甚だしい。(山一証券は)潰れるべくして潰れた

『勇気凜々ルリの色 満天の星』浅田次郎

どんなときも、決まってる、何て言ってはいけないよ。
物事を決めつけてしまったら、発明も、発見も、発想も、
新しいものは何にも生まれてこないよ。

『安達ヶ原の鬼密室』歌野晶午

立ち直らせてくれたのは子供たちである。
どこに行ってもエチオピアの子供たちは走っていた。
市場の狭い石畳を、荒れた大地を、緑の草原を、
明日に向かって、夕日を浴び、飽くことなく駆け回っていた。

『ジェシカが駆け抜けた七年間について』歌野晶午

「取り調べとは、全人格を賭けた戦いだ」。
取り調べられる方は、狭い部屋の中で
今後の人生を賭けて刑事に対する。
刑事の側にも全てをさらけ出す覚悟が必要だ。

『アナザーフェイス9 闇の叫び』堂場瞬一

戦争の取材で一番大事なことが何か、分かるかね?
生きて帰ることだ。死んでしまったら記事は書けない。

『ラストライン』堂場瞬一

怒るから、その人がどういう人間なのか、
何が許せない人なのかって、わかる

アイドルから一歩踏み出そうとした途端、
不幸を見たいっていう視線が増える気はする
でも、武道館は人は、人の幸せを見たいんだって、
そう思わせてくれる場所だよ

『武道館』朝井リョウ

お前は今、ここに確かにいるってことだよ。
それなら、お前は、もっと色んなことを知るべきだ。
お前は知らなかったんだ。色々なことを。
どれだけ素晴らしいものがあるのか、どれだけ奇麗なものが、
ここにあるのか。お前は知るべきだ。命は使うものなんだ。

『何もかも憂鬱な夜に』中村文則

強くなるしかないね。
そう在りたいと思うなら、そうなるしかない。
自分で、そう在ろうと、努力するしかない。

『三橋春人は花束を捨てない』織森きょうや

「かならずしもそうじゃないよ」というのは、
一方では「そうだよ」ということを意味していた。

『化人幻戯』江戸川乱歩

俺を裁くことができるのは、
俺の目の前に横たわる、患者という現実だけだ

医者には古いも新しいもない。
みな、自分の姿勢で誠意を尽くして
患者に相対しているだけだ

行動には危険がつきまとう。
行動しない口舌の輩がよってたかって
行動する人間を批判する。
いつからこの国はそんな腰抜けばかりに
なってしまったんだ?

『ジェネラル・ルージュの凱旋』海堂尊

鼻血が出るほど充実した週末が過ごせますように

どんとこい。公私混同

『聖なる怠け者の冒険』森見登美彦

第一条。人間は金銭に危害を加えてはならない。
また、その事態を看過してもならない。
第二条。人間は金銭の命に従わなければならない。
ただし、前条に反する場合を除く。
第三条。人間は全二条に反しない限り、
自己を守らなければならない。
あなただって、この三原則にほぼ従って
おいでのことだろう

※ 「ロボット三原則」をもじっています。

『天国からの道』「つまらぬ現実」星新一

企業とは、気づいていない人も多いだろうが、
もともと共犯者の集まりみたいなものだ。
やましさみたいなものを
誰もが感じているのではなかろうか。

『未来いそっぷ』「いい上役」星新一

良心なんてものは、持っていても使わないのなら、
ないのと同じことです

『ボンボンと悪夢』「組織」星新一

家族という言葉の意味を、まだ考えたこともなくて、
考えずにいられるのが幸せだということに
気づいてもいなかった。

『透明カメレオン』道尾秀介

本物は、自らが本物であることを
他人に認めてもらう必要などない。
自分だけが知っていればそれで充分である。

『最後のトリック』深水黎一郎

探偵小説の美学は、強いて言えば、
文学の美学ではなく、建築の美学ではないか

佐野洋

清少納言によると春はあけぼのだそうだが、
恋もはじまりの時が一番だ。
ステージに上がるときのような
緊張感と高揚感がたまらない。

「散る花、咲く花」歌野晶午

学ぶこととは自分で学ぶことだ。
自分で学ぶには、自分でやるしかない。
そうすると間違える。だから覚える。
間違えるのを嫌うと、安全に学べることしか学べない。
学問だけは安全第一では成り立たない。

『脳とシワ』養老孟司

実現可能か不可能かは、
やってみてはじめてわかることだ。
頭で考えただけで結論を出してしまうやつは、
結局その程度の人間でしかない。
俺は生きているかぎり挑戦するよ。

桜の花は本当に散ったのか?
俺の中ではまだ満開だ。

『葉桜の舞う季節に君を想うということ』

人間としてまっとうに生きるには、
目標がなければいけない
それはけっしてぼんやりとした夢で
あってはならず、たしかな目標でなければ

『天切り松闇がたり 第五巻』浅田次郎

(一億総評論家?)
あんなもん、なにが「評論」ですねん。
ただの感想や。今は「感想」が「評論」になる。
そのうち悪口も評論なら愚痴も自慢も評論になります

『結構なファミリー』佐藤愛子

神さまはこの人間を天国に召そうとして
引っ張っておられる。
その脚をお医者さんが下から引っぱる。
私は神さまとお医者さんの
綱引きの綱になるのはごめんです

『まだ生きている』佐藤愛子

自分が好きなものにさえ
金を払いたくない人間がいるんだよ。
本人がよっぽど安い人間なんだろうな

『本と謎の日々』有栖川有栖

まっすぐ行っても、外れって言われることもあれば、
外れだと思ってた人生をまっすぐだと、言ってくれた

『疑いの車中』日下圭介

たとえどんな死に方をしても、
魂が汚れることは決してない。
それは、形を変えて絶対に続いていくはず。
遺していく力の重みこそが、きっと人間が唯一
このどうしようもなくたまらない世界の中に
置いていける何かなのよ。

『ハゴロモ』(抜粋)よしもとばなな

死者にも名誉があります。
ただしそれが汚されても、回復する手段はない。
死者は喋れませんからね。でも、僕は諦めない。
喋れない死者の代わりに、必要ならば声を上げます。

『アナザーフェイス2』堂場瞬一

外に出れば出会いがあるっていうのは、
あなたの幻想だから
つきあう気持ちがない人は、
部屋にこもってても大勢のなかにいても、
所詮は一人のままなの

『あの家に暮らす四人の女』三浦しをん

おいしく食べて元気になってもらうために、
食べ手の体にも心にも気づかって調理する。
それが作り手の良心だから

『佳代のキッチン』原宏一

全体を考えてあくせくすることなく、
一つ一つ着実に試練を乗り越えたい、
自分の心と時間に誠実でありたいと願うことはできる。

『ネオカル日和』辻村深月

人間の人格を形成するについて大事なことは、
他からあたえられる恩恵だけでなく、
他からうける信頼だ

『迷路荘の惨劇』横溝正史

近頃は経済力と軍事力を振りかざして、
高飛車な主張をしているが、
彼らは何故ああも自己中心的で、反日的なのかな?
自己中心的な国だから、中国というのです。

『虚人の星』島田雅彦

ゆっくりでええから、坂上ろう。
きっと綺麗な通天閣が、見えるから。
ほんでチーフも、いつか、この高みから、
いつかの自分を、見下ろせる日が来るから。
頑張ったなぁ、て褒めてあげる日が、くるから。

『通天閣』西加奈子

その気になればね、
砂漠にだって雪を降らすことだって、
余裕でできる

『砂漠』伊坂幸太郎

人生なんていつ終わってしまうか分からないんだから、
話は交わせる時にしておくべきだ。
不躾だろうが何だろうが。

『死神の精度』伊坂幸太郎

見ることには愛があるが、見られることには憎悪がある。
見られる傷みに耐えようとして、人は歯をむくのだ。
しかし誰もが見るだけの人間になるわけにはいかない。
見られた者が見返せば、こんどは見ていた者が、
見られる側にまわってしまうのだ。

人はただ安心するためにニュースを
見ているだけなんだ。
どんな大ニュースを聞かされたところで、
聞いている人間は生きているわけだからな。
本当の大ニュースは、世界の終わりを告げる、
最後のニュースだろう。

『箱男』安部公房

まるでおとなのように静かに泣いているのです。
不思議ですね、人間の魂というものは。
たった五ヶ月の赤ん坊にも、この世を去る悲しみが
わかっていたのでしょう。

あなたの使命はあなたが探すしかない。
誰もが自分で探すのです。
私は荒野にいることを選んだのですから、
それで終わればいいのですよ。

『だから荒野』桐野夏生

教師くらい妬みの虫にとりつかれた存在も珍しい…
生徒たちは、年々、川の水のように自分たちを乗りこえ、
流れ去って行くのに、その流れの底で、
教師だけが、深く埋もれた石のように、
いつも取り残されていなければならないのだ。
希望は、他人に語るものであっても、
自分で夢見るものではない。

納得がいかなかったんだ…
まあいずれ、人生なんて、
納得ずくで行くものじゃないだろうが…
しかし、あの生活や、この生活があって、
向こうの方が、ちょっぴりましに見えたりする…
このまま暮らしていって、それでどうなるんだ
と思うのが、一番たまらない

『砂の女』安部公房

(私は仙人に)なれません。なれませんが、
しかし私はなれなかったとことも、
かえって嬉しい気がするのです

何になっても、人間らしい、
正直な暮しをするつもりです

『杜子春』芥川龍之介

やり直すためには、
罪がまっとうに裁かれなければいけない。
嘘の果てには嘘しかないように、
罪の先には罪しかない。

正義の形は人それぞれ違う。
百人いれば百人の正義がある。
だからこそ、明確な正義が必要だ。それが検察だ。
検察の正義は法だけで裁くものではなく、
人として裁く者でなければならない。
佐方は法と人、両方で罪を裁ける人間だ。

『検事の本懐』柚月裕子

私たちが扱っているのは
単なる紙切れではありません。人の気持ち、心です。

『心を掬う』柚月裕子

自由と独立と己れとに充ちた現代に生まれた我々は、
その犠牲として
みんなこの淋しみを味わわなくてならない

『こころ』夏目漱石

※ 当記事は姉妹ブログ【マンガのソムリエ】に
 掲載したものに加筆したものです。
いわゆる名著には、作者である先生方の
強いメッセージが込められていると思います。
 本を選ぶ際のご参考になれば幸いです。
ラベル:小説 名言
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2020年03月19日

小説『手のひらの京』綿矢りさ

京都に住む姉綾香、次女羽依の恋愛と三女凜の上京をめぐる
いとしい日々を四季折々の行事を交え描いた物語。

「家事を定年する」と宣言した母によって、基本的に
食事の用意は自分たちですることになった。

司書として働き恋愛経験もあるが凪のような生活を送る。
三十路を迎え、周囲が結婚していき、
流石におっとりしていた長女綾香も焦りを感じ始める。
次女の紹介によって前向きに交際をはじめる。

気が強く、モテ女として君臨し京都の伝統芸能いけず
(わざと聞こえる場所で対象者に悪口を言うなど
悪質な行為を働く京女の陰湿さが如実に現れた振る舞い、
1クラスに1人か2人はいるとされている。
きっと吉岡里帆とかもいけずされてきたのだろう)
に遭うことの多い次女羽依、恋のトラブルに巻き込まれる。

大学院に通い、バイオの研究に励む理系女子凜は
密かに上京をめざし、学業に励んでいた。
しかし、京都で生まれ育ち、京都に安住した両親は
これに大反対。波乱の幕開けである。

歴史も文化もあるが、数百年前と同じ空気、
時間が流れているとよくも悪くも言われる京都を舞台に、
三姉妹の見つめる未来とは?新潮文庫
ラベル:小説 綿矢りさ
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2020年03月12日

小説『二十日鼠と人間』スタインベック 訳大門一男

はしっこいジョージと大男のレニーは根無し草の
日雇い労働者コンビ。広大な大地を歩く二人の夢は
土地を買い地主となって牧場を営むことだった。
しかしジョージには懸念があった。
怪力無双で人の倍仕事をするレニーだが、
過去にやっかいな事件を起こしている。
その性質から二人の仕事は長続きせず、資金が貯まらず
多くの労働者のようにその日暮らしの生活に甘んじていた。

ジョージはレニーが余計な言動をして雇用主の前で
ボロを出さないように釘をさす。
しかし動物好きですぐに言われたことを忘れるレニーは
常に危うさを漂わせている。

大麦運びの仕事にありついた二人は牧場で働くスリムや
キャンディと打ち解け心中を吐露する。
信頼できる相手や夢を共有できる相手とも出会い、
仕事も問題なくこなせそう、前途洋々かと思われた。
だがジョージは尻軽な妻とそれに振り回されるくだらない男
カーリーの存在を危惧する。
レニーがなにかしらやらかすのではないか?
不安が拭い去れない。

現在よりも労働者階級や黒人への人種差別が色濃かった
南カリフォルニアを舞台に、夢と現実の狭間で戦う
登場人物たちのやるせなさと葛藤が胸を打つ名作。
新潮社文庫
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2020年03月05日

小説『春、戻る』瀬尾まいこ

36歳和菓子屋に嫁ぐことになったさくらの前に
兄を名乗る一回りは下の謎の青年が現れた。
あまりにもなれなれしく、当たり前のように兄だと
言い張り、憎めない不思議な存在。
母に聞いてもそんなのいるわけないでしょと笑われる始末。

新手の詐欺かと心配するが、どうも悪意とかで接触してきた
感じがしない。おにいさんは度々現れ、
結婚相手の和菓子屋にも現れる。
軽く憎まれ口を叩くがあまりにも邪気がない。
結婚相手の山田さんも胸襟を開きおにいさんと呼び、
その存在に疑問を抱かない。

もはや生活の一部と化し溶け込んでいくおにいさん。
どこかなつかしさを感じるおにいさんにさくらは
記憶を思い出していき…。
まごころあふれるハートフルストーリー。
日常に疲れた人におすすめの一冊。集英社文庫
ラベル:小説 瀬尾まいこ
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2020年02月14日

小説『ニセモノの妻』三崎亜記

「終の筈の住所」

マンションに引っ越してきた夫婦はなぜか住人に全く会わず
不気味なほど静かな新生活を送る。
ようやく荷物も片付き、招待されていた先輩の家に
向かう夫婦が観たものは、自分たちの住むマンションに
反対する巨大な幟(のぼり)を掲げた家々だった。
あれ、先輩のウチの幟が一際大きいような…。

にこやかに夫婦を迎える先輩夫婦。
マンションの存在は大反対だった、住人たちの反対を
押し切って建設されたマンションは憎い。
だが、君たちがあのマンションに住んでいるのは別問題。
この地域の人たちはマンションを目の敵にしていた。

住民自治会にやってきた主人公は異常事態を知る。
マンションに住み、組合員は282名いるのに
自分以外は全員委任状を提出しており、出席者は自分ただ一人。
かつてこの町をジョギングしたときじぶんの部屋以外に
明かりがなかったのは見間違いではなかったのではないか?

「ニセモノの妻」

ある日を境に容姿、能力、記憶、遺伝子情報などが
ホンモノ(本人)と同じニセモノの存在が現れるようになった。
ニセモノの特徴は自らが「ニセモノ」であると自覚している。
ニセモノはホンモノやその家族の前から自発的に姿を消すので、
日常生活に問題が起こらない。彼、彼女を保護する者もいるが、
「人権を有しない」バケモノのような存在として忌避する者もいる。

自分の妻が、ニセモノではないかと言い出し、
なぜかホンモノの妻がいなくなってしまった。
主人公はホンモノの妻を捜すことに熱心なニセモノの妻と共に
ホンモノの妻を見つけることにした。

ニセモノたちが集まる方舟協會という組織があるという。
うさんくさい情報を男から入手した「二人」に待ち受けるのは?

「坂」

坂ブームによって坂愛好者が増える昨今、坂をめぐる争いが
生じるようになった。(乃木坂46、日向坂とかとは無関係)
つまり坂を持つ者、持たざる者、坂愛好家、無関心派、
そして坂愛好家に対抗する階段主義者の対立などが顕著になる。
熱心な坂愛好家である妻は、夫との坂に対する認識の違いから
家を出てしまい、坂を占拠するグループに入ってしまう。
繰り広げられる高度でありながら不毛な屁理屈合戦。
坂の「傾き」が暗示する「価値観」の争いは何を生み出すのか。

「断層」

断層、次元の狭間に突如吸い込まれた人々。
一日に十数分程度、こちらの世界に戻ってくるのだが
自分が異次元に行っていることを認識していない。
もし彼ないし彼女がそれを自覚してしまうと、
世界から消えてしまいもう戻ってくることはない。
原因不明の自体に困惑する人々。
しかし、それ以降起こらない断層現象は次元の狭間に
大切な人を奪われた関係者以外の原因解明への熱意、
保護対象などの救済措置を奪っていく。
そういたみを被る者以外にはしょせん対岸の火事だった。

物語にはある恋愛脳全快のバカ夫婦が登場し、
読者はウザいほど仲がよい姿をみせつけられる。
物語の深刻さと対照的に夫婦は平素のようにイチャイチャし、
限られた時間を過ごすのである。
妻こと希美さんにこのことを知られてはいけない。
だって、事実を知ったら最愛の妻が消えてしまう。
誰もさわれない二人だけの世界、だがそれは夫である
主人公のたった一人の孤独な戦いでもある。

大切な人を理不尽に奪われることは現実の世界にもままある。
「神隠し」的原因が不明な事象によって、妻を失う
恐怖と戦う夫くんの姿に思わず涙を流してしまった。

著者の代表作としては「となり町戦争」がある。
その後も何冊か読んだのだがそれ以来の会心の短編集である。
表題作である「ニセモノの妻」の持つ圧倒的な世界観、
コメディーのようなバカ夫婦による究極の愛の日々を描いた
「断層」。すばらしいの一言に尽きる。新潮文庫
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2020年02月03日

エッセイ『極悪鳥になる夢を見る』貴志祐介

日本ホラー小説界に新ジャンルを起こした著者による
エッセイである。あふれる知性、にじみ出る考察、
日常や自然界に潜む悪意や悪質なあれこれに迫る。

感銘を受けたホラーやSF小説に対して鋭い視点で切り込む。
そこから垣間見えるのは、あくなき探究心と理解の深さ。
そして、莫大な読書量が血となり肉となり、
そのまま貴志先生が残した名作の下地になっている。

作中には「怖い絵」のような名画や美術品に対する
アプローチ、考察もされていてこれも楽しめた。

中には阪神タイガースへの強力な愛情を感じる話や
グロテスクだが生命力あふれるスッポンを食べる話、
なぜか意欲的に早口言葉を創作する話、
こどものときにバターコーヒーにはまった話など
あえて他愛のないことや言葉遊びに興ずる回もある。
バラエティーに富んだ内容である。文春文庫

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2020年01月03日

小説『わが心のジェニファー』浅田次郎

恋人の頼みで日本旅行に訪れたアメリカ人のラリー。
外国人の目から日本を実体験することで
深く理解(誤解も含めて)していく。
日本人、日本の自然、グルメや温泉や文化、宗教観を
知ることは、神秘体験の連続だった。
日本のことをポジティブ・ネガティブに紹介した二種類の
変なガイド書を参考にしながら、各地の名所をめぐる。

なぜか日本びいきの恋人ジェニファーが
日本に行くようにお願いした理由とは?
「日本人は油断のならない奴ら」と断じる退役海軍将校の
祖父を持つラリーは祖父と祖母によって育てられた。
厳格な祖父とやさしい祖母によってアメリカ人にしては
少々内気で巨漢で大食漢なデブ青年は何を見いだすのか?

異国への旅行による新鮮な感想や人との出会いが感動的。
日本人のメンタリティーや日本の良さや魅力、
外国人にとっては変な部分が浮き彫りになる。
浅田次郎先生の豊富な旅行の経験が盛り込まれている。
…どうかはわからない(1年で120日旅行している)。
主人公の日本に対する勘違いやムダな考察や理解、
ジェニファーへのラブレターがおかしくて愛しい。
日本を理解することは日本を愛する恋人を理解し、
彼女自身を理解することに通じる。だから真剣に考える。

まさに浅田次郎的な笑いと感動が詰め込まれた珍道中は
タイトルのイメージの恋愛小説よりも笑える旅行記という
比重が強い。小学館文庫
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2019年12月23日

小説『世にも奇妙な君物語』朝井リョウ

「シェアハウさない」

泥酔していた所、介抱してくれた女性により
シェアハウスに運び込まれた主人公浩子。
心に傷を負った過去を持つ彼女はライターとなり
シェアハウスに住む人々を取材したいと思っていた。
男女4人で暮らしていたメンバーの一人がここを
出て行くと知り、勢いで自分が住みたいと提案。
却下されるかと思ったが受諾され、4人に流れる
不思議な空気からある種の秘密を感じ取る。

「リア充裁判」

コミニューケーション能力が異常に尊重される
現代の風潮を皮肉った作品。
リア充裁判と揶揄されるコミニューケーション能力を
図る質疑応答がなされ、この能力が欠けていると
判断されてしまうと、コミュ力の向上を促される。
強制的にバカバカしい格好をさせられ、パーリィ
ピーポーのような振る舞いをすることが善(正解)
という世界なのである。
まともだったはずの姉を変な風に変えてしまった
この裁判に臨むことになった地味子の運命は?

「立て!金次郎」

保育士になった熱血教師だったが、
そこに立ちはだかるのはモンスターペアレント。
理不尽な要求はエスカレートし、
幼稚園で行われる全行事のうちこども全員が
主役になる機会が設けられるようにと口撃される。

こどもを見ずに保護者の顔を見ることを優先した
須永先生の評判はうなぎのぼり。
反対に人なつっこくて評判がよかった主人公の
評判は悪くなり、最近保護者からの反応が悪い。
でもやっぱりこどもの気持ちが大事だよな!
保護者からの外圧になんて屈しないぞ!
と昔からのあだ名が金次郎の主人公は奮起する。

「13・5文字しか集中して読めな」

煽り文句ばかりで真実を映し出していない
ネットニュースの見出しを皮肉った作品。
文章を要約したり、表現者にとって都合のよい部分だけを
抜粋すると、受け手(読者)に与える印象が真逆の
ものになったり、間違って伝わるよねという
ブラックユーモアあふれる物語が展開される。

「脇役バトルロワイアル」

有名な演出家蜷川作品の主役オーディション会場に
やってきた溝淵淳平ら6人の男女たち。
年齢もバラバラだし、性別も違う。
それにしても最近は脇役として活躍するメンバーばかり。
主役なんて柄じゃないよね…
と自虐的に話し合っていたら、審査がスタート。
どうやら脇役らしい振る舞いをすると不合格となり
最後の一人として残れば晴れて主役になれるようだ。
脇役あるあるも交え、本のタイトルが示すような
「世にも奇妙な物語」的演出なユーモア作品。講談社
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2019年12月17日

小説『武道館』朝井リョウ

武道館ライブを夢見る6人組アイドルグループ
NEXT YOUのメンバー愛子が主人公。
小さな頃から歌って踊ることが大好きだった
愛子はアイドルになることを選択した。両親が離婚。
父と母、どちらについて行くのか選択を迫られる。
愛子の選択は父の方であったが
幼なじみである大地と離れたくない気持ちが強かった。

NEXT YOUのダブルセンターを務めた主要メンバーが
1年で卒業決定。武道館は12000人規模のライブもできるが
区切れば半分以下の収容人数でもライブができる。
まずは、そのレベルでの武道館ライブをめざそう!
目標を掲げたその子が卒業してしまった。

5人はフォーメーションの変化や徐々に規模を拡大していく
自分たちのアイドル活動にとまどいながら日々を送る。
握手会や特典商法、盗撮、SNSでの炎上や正義の味方面した
書き込みそれに伴うスルースキル…
アイドルに求められるいろんな重圧や抑圧の中で
愛子は日々揺れながらメンバーや大地との学園生活を送る。

自分の中の夢やアイドルとしての人気が増えていくことで
注目を集めるようになるが、電車に乗っても気づかれない。
乗客はみんなスマホを観ている。
本当に自分の選択は正しかったのかな?
私たちのことなんて何も知らない人たちはもちろん
ファン(自称ファン)は私たちの幸せを望んでいるのかな?
というアイドル目線での半信半疑という鋭い視点を持つ。

少しずつだが人気が出てきて、オリコントップ10にも入り、
武道館ライブも現実味を帯びていく。
一喜一憂する日々の中で、それでも満たされず
物思いにふけることが多いヒロイン愛子。

自分たちを売り出すために必死になっている大人たち。
暗黙の了解というか絶対条件とされる恋愛禁止。
でも人間として生きている以上、そういう気持ちや
理不尽な攻撃に対し怒らないことって人として正しいのかな?
自分が本当のアイドルと認めるメンバー碧や他のメンバーと
共に捧げた青春の日々や選択を誇れるようになる日は来るのか?

現実世界のアイドルの不祥事や彼女たちを取り巻く環境も
交えながら最終的に著者が示したかった思いとは?
偶像として語られるアイドルたちを実像(生身の人間)
として描いた挑戦的な作品。文藝春秋

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2019年12月09日

小説『掏摸 スリ』中村文則

偽名で暮らす天才スリ師の僕は
最悪の男木崎によってある犯罪に参加。
500万円の報酬には見合わなそうな
単純な作業であったが、巨悪事件につながる
一連の犯罪につながっていた。

親友は木崎の指示により消されてしまった。
木崎を恐れて東京をネジロにスリ行為をしていた僕は
母親の命令で万引きをする少年をきまぐれて助けた。
母に見切りをつけていた少年は僕に心を開き、
僕もかつての自分を重ね合わせるように尽力する。

しかし、そんな折木崎と遭遇。
三つの仕事をこなせ。
失敗したらお前を殺す。
逃げれば最近お前と付き合いがあるあの親子を殺す。

裏社会の住人として君臨する木崎からの
理不尽な要求は、裏社会に生きる僕にとって運命。
ドレイを使って、ある男の人生の未来日記を描いた
支配者の寓話。僕の人生にたびたび登場する
不思議な塔の映像は何かのメタファー(暗喩)なのか?
絶望的な状況の中、僕は何に祈るのか?
孤独な主人公の姿を描いたピカレスク小説。河出文庫
ラベル:小説 中村文則
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2019年11月29日

小説『美人薄命』深水黎一郎

戦争によって大事な人を失ったカエは
望まぬ結婚をし、姑・旦那から虐げられ、
一方的に離縁されてしまう。
片目を失い生き場所のないカエだったが
親友の存在により繕いの仕事をこなし
御年84歳。現在では冗談によって他人を
笑わせる老婆としてつつましく生きていた。

大学のセミナーで教授から進級できないと
脅された大学生の磯田総司は弁当配達の
ボランティアに参加した。一回でもこなせば
教授も許してくれるだろうと軽い気持ちだった。

だが届けたカエなどの老婆や老爺、
ボランティアスタッフの杉村、
かつてあこがれていた同級生の沙織などの
存在もあり、腹の立つこともあるが続けていた。

物語は普通の若者である総司が
84歳にしてあこがれの人、五十路への
過去の恋に生きるカエの秘密に迫っていく
という極上の純愛ミステリーである。
旧字体で書かれるカエの述懐・回想シーンから
現代の物語につながっていく。

なぜカエは総司に対し、胸襟を開いたのか?
カエが抱いてた淡い恋心の行方は?
総司はどのように考え、どう成長したのか?
そして物語の核心、真実に迫るとき
読者をあっと言わせる演出が心憎い。
『最後のトリック』でもうならされたが
私としてはこちらの方が更におすすめ。
双葉文庫
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2019年11月01日

エッセイ『またたび』さくらももこ

まる子の世界旅行の珍道中のあれこれをつづった
爆笑エッセイ。口語体を交えて飾らない文章で
心情の素直につづる。しっかり者の木村さんや
ろくでもない石井さんら同行者とのくだらなくも
愛しい旅の思い出をあますことなく語っている。
おいしくていくらでも食べられてしまうような
世界のグルメな料理に舌鼓を打ち、
ときにゲテモノにうろたえ、
仙台の寿司屋で感動的な味に出会う。

カジノで一喜一憂し、典型的スリに遭い、
なぜか一度しか来ていないかの地で調子に乗って
イキるくだらない石井さんがおもしろい。
ローマの休日でオードリー・ヘップバーンが
アイス食べていた場所に訪れたり、
美しいベニスを堪能したり、
スリランカで宝石の原石を掘ったり、
父ヒロシとスリランカの大臣と謁見したり、
中国のお茶屋で大量にお茶を買い込む。
人のまごころを感じたり、かの地で世知辛い洗礼を
受けたり、体調を崩したりと大忙し。
旅の醍醐味は行って帰って思い返すこと。
このエッセイを読むと行ってみたい場所が増える。
猫にまたたび、いずれの人もまた旅なり。
お気軽に楽しめるさくらももこの旅エッセイ。
新潮文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:24| Comment(0) | おすすめのエッセイ・私小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月25日

小説『最後のトリック』深水黎一郎

作家である私の下に手紙が届く。
「読者が犯人」というトリックのアイディアを
買ってほしいというものだった。
香坂誠一という謎の男からの手紙はその後も届き、
「命と引き換えにしても惜しくない一世一代」
のアイディアなので2億ほしいと言う。
不信感を抱きながらも、いつしか男からの手紙を
待ちわびている作家の姿があった。
荒唐無稽の大言壮語かと思われた物語は
意外な展開を遂げて…。

作中でも語られるように意外な犯人の模索は
ミステリー界では数多の作家が挑んできた。本作は
ミステリー界最後の不可能トリックに挑んだ意欲作。
物語の随所に暗喩的伏線が提示されていて、
緻密な計算と説得力で展開される傑作推理小説。
一気読みしたくなる垂涎の一冊。河出文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:17| Comment(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月04日

小説『ボンボンと悪夢』星新一

気づいたら犯罪者への仲間入り。
殺人、殺人請負、ゆすり、密輸。
組織的なアリバイ工作、実刑を免れたい富豪が
高額弁護士に依頼した弁護の行方は?「組織」

老後の仕事として恐喝リストを手に入れた
老人の結末は?
犯罪に関わるテーマに止まらず、
圧倒的な科学力を持つ宇宙人の襲来も描く。

娯楽を求める宇宙人たちの要望に応じるため、
数々のショーを命懸けで演じる地球人たちを
描いた「宇宙のネロ」。

地上の女性たちをすべて引き渡しください。
と通告する宇宙人を描いた「賢明な女性たち」

飲む打つ買うの三拍子揃った派手な生活を送った
K氏だったが遂に切羽詰まり海で身投げをした。
しかし、奇跡的に助けられた豪華客船には
彼が人生を狂わせた娯楽が詰まっていた「不運」
などを収録。数奇な運命をたどった登場人物、
絶体絶命の人類の行方は?

posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:45| Comment(0) | おすすめの星新一・筒井康隆等SF小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする