2017年04月22日

小説『死亡フラグが立ちました!』七尾与史

都市伝説「死神」(殺し屋)を追う下っ端ライター陣内。
死神を記事にしないと干上がるので必死で捜索。
どうやら死神は実在するようで…。
知り合いのヤクザ松重と超人本宮の助力を乞うことにした
陣内は、松重の親分が死神に殺されたという情報を得る。
但し、事件性はない偶然が重なった事故死としか思えない状況。
入手した映像を必死で調べた結果思わぬ意図に気付き…。

一方、同じように事故として処理された事件があった。
疑惑の渦中にあった某政治家の秘書が交通事故により死亡。
目撃者の証言などから事件性はないと判断された。
しかし妄想刑事とあだ名される板橋、相棒の御室は
事件に疑問を持ち同僚に笑われながら独自に捜査を進める。
17年前に発生した一家が皆殺しにされた田中事件。
捜査官の一人として事件に関わり突飛な推理を披露し、
失笑を買った板橋。事件の被害者少年と同級生の御室は
過去の記憶から、大胆な容疑者を連想し推理を展開。

死神に魅入られた者、そして死神を追う者には、
死神のワナが張り巡らされ、死がつきまとう。
荒唐無稽かと思われる都市伝説ではじまった物語は
思わぬ展開と広がりを見せる。登場人物たちの発言、
死神の手によって立ちまくる死亡フラグ。
死に抗う者たちの戦いを描いたエンターテインメント小説。
本来恐怖を感じるはずの予告殺人を笑いの要素である
緊張と緩和を用いバカバカしさを演出しまとめている。
宝島社文庫このミス大賞シリーズ。
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2017年04月19日

小説『虚報』堂場瞬一

自殺教唆を疑われる大学教授のサイトをめぐり
新聞記者たちがその真相に迫っていく社会派作品。
なぜ上山は自殺を勧めるかのような記事を書き、
質問者に答えていたのか?
特ダネをめざすやり手の市川、記者経験の浅い長妻は
この事件を追ううちに窮地に立たされ…。

相次ぐビニール袋集団自殺の被害者たちは、
上山教授が運営するサイトを閲覧していた。
その内容は自殺教唆と受けとられるような記事で
自殺の決め手になったのではないかと疑われた。
サイトは封鎖され、上山教授は会見により
自殺ではなく自死であり、直接自殺を促したことを否定。
マスコミは上山に論破され
ネット上では彼を支持する者も多い。しかし新聞社、
雑誌系は上山の言動に懐疑的であり追跡取材。
また警察官も自殺教唆(自殺ほう助)などをめぐり
彼をマークしていた。

市川は上山と知り合いでその言動に首をひねる。
彼らしくない言動であり疑問が尽きないので
直接取材に乗り出した。自殺や尊厳死、安楽死
をめぐる問題に切り込んだ社会派ミステリー。
新聞社内で発生するぎすぎすした関係、
まさに生き馬の目を抜く報道合戦。
生き死にを懸けた人々の戦いを鋭く描く。文春文庫
タグ:堂場瞬一
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2017年04月15日

小説『古書店アゼリアの死体』若竹七海

不幸続きの相澤真琴は念願だった海でバカヤローと
叫ぶために神奈川県葉崎市に来たのだが死体が…。
なんてついてない日なんだ。
と叫びたくなる日々だが、古書店アゼリアの女主人
前田紅子から店番を任された。
ロマンス小説という昔取った杵柄的知識が生きてきた。

莫大な財産を持つという紅子は名門前田家の出身で
ここ葉崎で権力者として知られているひとかどの人物。
恩義を感じている者も多いのだ。意外に忙しい店番を
こなしていた真琴だったが新たな死体との遭遇…。
数多くの秘密と問題を抱える前田家の因縁が噴出し…。
入り組んだ内容と演出が心憎い推理小説。
皮肉のきいたオチが印象的。光文社文庫
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2017年04月11日

エッセイ『養老孟司の旅する脳』養老孟司

世界中に旅する理由は昆虫採集でありライフワーク。
解剖学教授でありながら、脳に関する権威とされる
養老先生による語りおろしエッセイは
目から鱗が落ちる発想も多く読んでいて楽しい。

なぜアフリカ人は8頭身のカッコイイ体型なのか?
体表面積を増やすことで熱を逃がすため。

十人並の顔はたいしたことないが、
百人の顔を平均化すると美形になる?

日本人の脳が漢字とかなを読む場所は違う?

東大医学部に合格する人間は血圧に換算すると
300という異常値であり、これを正常値に戻す。
つまり凡人に完治させまともな感覚を持つ医者に
する必要がある。など2〜3ページごとに語られる
エッセイなのでサクサク読める。小学館
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2017年04月08日

小説『この国。』石持浅海

一党独裁の管理国家を誇るこの国は繁栄をたどり
管理体制側は最高の国を自負する。しかし、
反政府を掲げる反対勢力による妨害を受け…。

200年にわたる鎖国を解禁し、欧米列強の魔の手から
なんとか植民地化を避けてきたこの国。
第一次戦争、第二次戦争に介入せず、それ以降も
平和主義を貫き現在に至っている。

主な特徴としては、公開処刑(死刑執行)が娯楽化し、
小学校卒業までの結果で職業などの将来が決定される。
士官学校は形骸化し、実質的に公務員を作り出す組織。
エイズの蔓延を防ぐ目的で環境が整えられた売春宿は
政府が管理する。(表向きは売春を認めていない)
世界に類を見ないほど街はキレイで治安はよく、
失業率は1%以下、世界からの評価も高く老後を
この国ですごす海外からの永住者も多い。
しかし不満は募るもの。
そして同時にどんな集合体においても水面下、意識下では
歪でエゴが蔓延する危険を多分にはらんでいる。
国家転覆、政権打倒を掲げる反政府組織松浦らは
治安警察官番匠に戦いを挑み続ける。

この国のため、この国のあり方をめぐり
頭脳戦を繰り広げる二人は、好敵手にして
不倶戴天の敵であるお互いに殺意をぶつけ合う。
国レベルのマクロな問題でありながら、
個人レベルのミクロな私情をはさんだ頭脳ゲームを
制するのは果たして?光文社文庫
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2017年04月05日

小説『きりこについて』西加奈子

きりこと賢い猫ラムセス2世による強い絆と
再生の物語を描いた心温まる物語。
この一冊で多くの人が救われますように。

美男美女の両親であるパァパとマァマ、祖父や祖母の
悪い所ばかりが遺伝してしまったぶすのきりこ。
親から世界で一番かわいい子として育てられ、
うちって世界一かわいいこやねん!と自信満々。
周囲の大人も同情心と優しさからきりこを取り立てる
発言を繰り返したためこどもたちから尊敬を集める。
遊びにおいても「きりこルール」(彼女による鬼指名)や
きりこに都合のよいルールがまかり通っていた。
賢く超然とした存在として、こどもたちをうっとりと
陶酔させるきりこの快進撃は小学校でも通用。
そんなある日きりこは体育館裏で黒猫と出会う。
かわいいと言われることを嫌い、賢いと言われることを
望む黒猫はラムセス2世という立派な名前を頂戴した。
驚異的な知能を誇るラムセス2世は人語を解し、
きりこは猫に耳を傾ける度量の持ち主だった。
2人はお互いを尊重し、毎日を過ごすうちに会話できる
ようになっていった。

初恋の相手だったこうた君にラブレターを渡した結果
「ぶす」という言葉を投げつけられた。
強いショックを受けたきりこであったが、
なぜという疑問がぬぐえない。両親や猫たちから
容姿を褒められる自分がなぜぶすなのだろう?
魔法がとけたかのように周囲のきりこへの扱いは
変わっていった。11歳になった小学生たちは
かわいいという容姿に対して敏感となり、
おばさん化していた同級生だけがきりこの友達に。
でもきりこは自分がぶすだと思っていなかった。

中学生になり、ますますかわいい女子がモテる。
ある日、友達の書いていた少女漫画のヒロインから
きりこは自分の顔が彼女の顔と対極にあると気付く。
学年の美少女ともてはやされる子たちは、なるほど
漫画の美少女と呼ばれる容姿をしていた。
自分はぶすであり、心ない同級生からぶすと
呼ばれても仕方のない存在と打ちのめされたきりこ。
ひきこもって、彼女のことを強く尊重してくれる
猫にあこがれるようになり夜型の生活をするように。
きりこがひきこもっても、ただそこにいるだけでよいと
両親の愛情は揺るがなかった。

猫が至上の喜びと考える睡眠に没頭していたきりこ。
ある日夢の中で泣いている女の子と出会う。
きりこは自分にSOSを出している存在に気付き、
外の世界に歩み出す。ひとりの人間、一匹の猫の
運命的な出会いによって、助けられる者たち。
やさしさを忘れそうになったとき読んでほしい
極上の一冊。価値観は人の数だけあって
自分にとって大切なことは他人が決めることではない。
角川文庫
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2017年04月01日

小説『仮面同窓会』雫井脩介

理不尽な体罰的指導を強制されていた高校時代を
思い出し、仕返しを企てることにした4人。
20代後半になりながら体育教師樫村から受けた傷は
洋輔の中に未だ尾を引いていた。

高校時代あこがれていた美郷をストーカーから守った
ことで親しくなり、パッとしない日々に潤いが生まれた。
同窓会にやってきた洋輔が見た者は、自らの行為に
何の疑問も反省もせず生きている樫村の姿だった。

樫村の健在をおもしろく思わない皆川、大村、八真人は
「仮面同窓会」を開き梶村に制裁を加えることを発案。
洋輔も断り切れず、4人で樫村を拉致して彼が自分たちに
強制させていた天突き体操をさせることにした。

溜飲を下げることに成功した彼らは意気揚々と引き揚げた。
しかし、樫村が死体で見つかったことから疑心暗鬼となり
自分たちの中に犯人がいるのではないかと思い出す。
過去の事件が引き起こした因果応報的ミステリー。
関係者は皆沼に引きずり込まれていく。
姿は見えないが声だけはする不思議な兄の存在。
そして物語に隠された伏線回収が見事だ。幻冬舎
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2017年03月29日

小説『御不浄バトル』羽田圭介

電通ではなく電信に入社。ブラック企業だった。
教材を法外な値段で売る詐欺会社の事務職の僕は
徐々にこの会社の実態に気付いていく。
まともな精神の者は半年で会社を去り、
精神が麻痺した社員はインチキ教材を売りさばき
報酬を得て、ぜいたくな暮らしに走る。
人の嫌がることを進んでやれる(悪い意味で)。
そんな鈍感な者だけがいられる場所。
それが電通。おっと間違えた電信だ。

主人公の僕が心を落ち着けられる場所はトイレだ。
駅のホームにある比較的綺麗な個室を確保したいと
今日も僕は速足で歩く。常連メンバーと出くわす。
緊張感漂う会社の中で僕にとって安寧の場所。
トイレの中だ。食事もここで行う位だ。
欲求不満すらもここで処理する。
絶対不可侵の聖域。それはトイレである。
それにしても排泄物の描写がリアルすぎる。

僕は何とか詐欺的勧誘に関わらないように
お茶を濁してきたが、上司から暴力的な制裁を受ける。
本格的に会社を辞めたいが、会社都合による退職を
めざす僕は証拠集めに乗り出す。恋人や友人の支え、
トイレの中でこっそり発揮されるバカバカしい戦い、
ブラック企業の実態、サラリーマンの苦悩を描いた問題作。
短編「荒野のサクセスも収録」 集英社文庫
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2017年03月27日

小説『黒い福音』松本清張

戦後の日本で暗躍したキリスト教団体の腐敗、隠蔽体質。
そして及び腰になってしまった捜査関係者の哀愁を
見事に描いたミステリー。実際の事件ベルギー人神父を
容疑者とする日本人スチュワーデス殺人事件を題材に、
迷宮入りした未解決事件のアンサーを投げかける。

戦前から日本に布教目的で存在したバジリオ会は
表向きは敬虔で戒律を重んじる清貧な宗教団体。
だがその裏では海外からの救援物資である砂糖などを
横流ししたり、麻薬の密輸に手を染める邪心団体である。
穏やかで明るい笑顔に隠された神父たちは裏では
日本人を侮り、汚い言葉を吐く悪魔たちである。
悪魔たちは勢力拡大のために悪事の限りを尽くし、
豊富な資金を作り、破戒僧となり愛人を囲う。

物語は、某宗教の信者でありかつての英雄的行為から
物資の貧しい時代でありながら贅沢な暮らしをしている
ヤス子という女性。そこに足しげく通うビリエ神父の
秘密の暮らしを描くところからはじまる。その家には
人目を忍ぶかのように自動車が次々と止まるのである。
穏やかで尊敬を集める神父の裏の顔は悪徳商人。
彼は信者であり優秀で素直な少年トルベックに目をかける。
期待通り好青年に成長したトルベックは女性信者たちの
中でアイドル的存在になる。そうすると自然の摂理で
トルベックは女性と親しくなり、戒律を破るようになる。
それこそ神に祈ることを忘れ、女性に溺れる。
しかしそのしあわせは長くは続かなかったのです。
そう教会は裏の顔を持っていて、トルベック神父に
会計係という教会の暗部とも言える悪の片棒を担がせる。
トルベックは自分の恋人を麻薬の運び屋にするように
圧力をかけられる。
閉鎖的な組織の中で絶対的な権威主義がまかり通る世界。
その中で悪魔のささやきにより犯罪に手を染めてしまう。

事件を追う警察関係者、事件記者たちは宗教団体が
事件の鍵を握ることに行き着く。
容疑者が宗教団体の神父だったことから捜査は難航。
犯罪集団は宗教的立場や、日本での強い立場を悪用。
また政治的駆け引きから彼らを追う警察に上(外部)
から強い圧力がかかる。必死の捜査は実を結ぶのか?
新潮文庫 
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2017年03月24日

小説『ふる』西加奈子

他人からやさしいと評される池井戸花しすは、
AVのモザイクがけの仕事をしながら、
いろんな場面で音声の隠し録りをすることである。
花しすは人に見えない不思議な白いわたのような
ものが見えるのである。(まっくろくろすけの
白バージョンのようなもの)。ふわっと現れる。
人を傷つけず、周囲の空気が悪くなることを
極端に怖がる花しすは気遣いの日々を送る。
そしてこっそり隠し録りした人々の会話を聞き
安心したいのである。自分がいじられキャラであり
常にオチのような存在でありたいと願う花しす。
そんな彼女にも転機が訪れ…。

彼女の過去と現在が語られる過程で、謎の人物
新田人生が現れる。姿形を変えて次々と…。
でも主人公である私は全く気がついていないのだ。
他者に対するやさしさは同時に他者に対する無関心。
傷つけないようにする他者への過剰な気遣いは
本当は自己防衛だった。クライマックスで彼女に
「ふる」ものとは?まさに読ませる、ひきこませる。
言葉と表現の魔術師による傑作。河出文庫
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2017年03月20日

小説『そして誰もいなくなった』アガサクリスティー

インディアン島に集まった10人は童謡見立て殺人の
犠牲となり次々と命を落としていく。

集まった10人の人の生死に関わる過去の犯罪が暴かれ、
彼らの中に強い動揺が走る。
招待者U・N・オーエン(unknown)を名乗る
謎の人物の仕業なのか?悪趣味な演出に憤る彼女たち。
招待者の一人が毒殺されてしまう…。マザーグースの
「10人のインディアン人形」になぞらえた殺人だった。
犠牲者が続いたことから、第三者の存在を疑った彼らは
捜索に繰り出すのだが…。

明確な意思に基づいて殺人を続けていく犯人。
その中で疑心暗鬼に陥っていく招待者たち。
童謡のように誰もいなくなってしまうのか?
1億冊発行された世界的大ベストセラーであり
ミステリの女王、推理小説の最高傑作と言っても
過言ではない。15年ぶりに読んでもやはり名作。
感動は色あせない。早川書房
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2017年03月18日

小説『ファイヤーボール』原宏一

商社マンとして猛烈社員的働きをしていた咲本。
スペインのミゲル社長との大きな取引をまとめ
意気揚々と帰国した咲本。
しかし社内抗争が勃発し、閑職に追いやられてしまう。
暇なら町内会の仕事やってよと妻から言われ、
しぶしぶ会議に赴く咲本。

だがこの町内会大きな問題をはらんでいた。
元校長、元町内会長武村が院政をしくこの町内会では
横領、使い込み、業者への恫喝と政治的腐敗が進んでいた。
小規模な祭りとは思えないような予算が組まれるという
オリンピック的な腐敗に首をかしげた咲本は
「今より十倍盛り上がる祭り」を生み出すと豪語。

世界の祭りを調べた咲本は火の玉祭りの存在を知る。
まぁこんな危険な祭り無理だけど、本命のペット祭りを
選ばせるために提案する(捨て案)と思っていた。
しかし、武村の卑怯な策略により可決されてしまう。
どうせ泣きつくだろうとバカにされているのだ。

数少ない味方である役員と共に本気で火の玉祭りを
開催することにした咲本。オラ祭りするぞ!
家族や地域住民と共に祭りを盛り上げる決意を固めるが
既得権益保持に回る武村一味による妨害もあり苦戦。
やりたいからやる。
ファイヤーボールのように燃え上がった想いは
人々の心に伝播していき…。PHP文芸文庫
タグ:原宏一 小説
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2017年03月15日

小説『私のなかの彼女』角田光代

祖母の書いたと思しき小説の発見。
書きたいという気持ちが生まれたことで
変わっていく自分の気持ちと人生。
離れていく恋人仙太郎との距離。
そして自分を縛り付ける母、仙太郎の言葉。
それでも私は書く…。

バブル期に大学卒業を迎えることになった和歌は
同棲相手仙太郎との結婚を望んでいた。
宇都宮からやってきた特別自信もない自分は
出版の世界でちょっと名の知れた存在である仙太郎に
強い影響を受けながらなんとなく生きていた。
保守的な母は和歌の社会進出や進学にいい顔をせず、
常にプレッシャーをかけてくる。
特に母の母である祖母の存在が大きい。
「男と張り合おうとするな」という言葉を残した
祖母は物書きを志し、家出した過去がある。
祖母の行為を恥と捉えていた母は、
祖母を醜女(しこめ)と呼び、忌み嫌っていた。

しかし、何の因果か和歌は祖母の過去を想像し
小説で賞をとってしまう。妄想と現実の中で生きる
和歌はときに心を乱し、ときに寝食を忘れ仕事に没頭。
かつて望んでいたはずの仙太郎との暮らしであったが、
徐々にほころびが見え始め…。

変わっていく自分と環境の中でもがきながら
舟をこぐ和歌。漕ぎ手は誰でもない自分。
失ったものもあるが手にしたものも必ずある。新潮文庫
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2017年03月10日

小説『太陽の坐る場所』辻村深月

高校卒業から10年。毎年開かれるクラス会に
女優キョウコの姿はなかった。
神話を題材とした映画の活躍により、
東京の看板にその姿を見せるほどの芸能人になった彼女。
同級生たちにとって話題に上らないことはない。
なぜ彼女が姿を見せないのかを考える同級生たちは
やはりあの恋愛がからんだ「革命事件」が関係している
と考えていた。かつて近い所にいながら、
現在は遥か高みに行ってしまった同級生の姿は
太陽のようにまぶしすぎて実体をつかめない。
登場人物たちは本音を隠しながら、彼女に呼びかける。
キョウコに出てきてほしい、と。
徐々に明かされていくキョウコの高校時代の姿。
そこで描かれるのは女王が君臨する学園ヒエラルキー。
恋愛のためにこの高校を選び、自分を輝かせるために
選ばれた臣下としての女友達。女王の顔色を窺い、
苦汁をなめさせられていた者たちにより信頼を失った
女王は、ある事件をきっかけに…。

この物語は読んでいると違和感を覚える。
それは徐々に明かされていくのだが、伏線の張り方、
凝り方は小説じゃないとできない手法である。
登場人物たちの中には歪んだ性格の者も多く、
勘違いが引き起こす長年の葛藤も描かれている。
登場人物の心情の変化、選んだ行為、
高校における立ち位置と現在の立ち位置の変化を
描いたのは流石のひとこと。イヤミスと思わせて
うまく消化させてくれるうまさがある。文春文庫
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2017年03月07日

小説『D坂の殺人事件』江戸川乱歩

夢遊病に苦しむ男の苦悩、
退屈に苦しむ男は悪魔的頭脳で連続殺人を犯すが捕まらず、
堕胎を促す植物を知った妊婦は、
妻に裏切られた男の苦悩、
戦火の街で出会った美女、
顔を柘榴のように潰された死体から類推される真相、
人間嫌いの男が愛した女に抱いた憎しみと情念は
グロテスクで酸鼻を極める物語を作り出す。

密室状況下に起こった事件。目撃者二人の証言は
真っ二つに分かれ、犯人像が見えてこない。
名探偵明智小五郎は思わぬ視点から真相をあぶり出す。
挿絵を交えた本格派推理短編集。暗い時代背景、
人の持つ暗部や弱さを描かせたら随一。創元推理文庫
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2017年03月04日

小説『ふむふむ おしえて、お仕事』三浦しをん

16人の女性プロ仕事人との対談を収録した
インタビュー集。仕事と向き合い、人の生き方を
学ぶことで思わぬ発想や視点を持つことができる。
タイトル見ただけで興味を覚える職業がずらり。
【靴職人、ビール職人、染織家、活版技師
女流義太夫三味線、漫画アシスタント、
フラワーデザイナー、コーディネーター、
動物園飼育係、大学研究員、フィギュア企画開発、
現場監督、ウエイトリフティング選手、
お土産屋(2人)、編集者】である。

有名漫画家から引っ張りだこの萩原さん、
某芸能人や某社長と知り合いのオカマイさん、
ペンギン好きが高じて飼育係になった高橋さん、
エヴァ、ハガレンなどのフィギュアも制作澤山さん、
トンネルの現場監督を務める亀田さん、
著者もあこがれていた編集の仕事に携わる国田さん
など思わずふむふむと楽しんでしまう一冊。
人を喜ばせたい、人の生活の役に立ちたいプロたちの
言葉に思わず頭が下がります。新潮文庫
タグ:三浦しをん
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2017年02月28日

小説『みんなのふこう』若竹七海

超天然ドジっ子ココロちゃんによる珍騒動を
描いた捧腹絶倒のユーモア小説。

神奈川県葉崎(架空の街)はド田舎だが海があり
ラジオ局もある。瞳子ねえさんによって、
みんなの不幸(笑い話になりそうな不幸話)を
紹介するコーナーに登場するのがココロちゃんだ。
ココロちゃんの行くところ事件が絶えない。
バイトをすればとんでもない失敗をしでかしクビになり、
住居のボロアパートでも事件をを起こし強制退去。
斡旋された新たなバイト先では過去の事件が露見し、
あやしげな宗教団体に何の疑いもなく入り浸る。

しかし不幸続きなのに、ココロちゃん本人はいたって
平気なもので元気いっぱいに暴れまわる。
ものすごいスタンド(守護霊)がついているのか、
本人のダメすぎるドジ体質、失敗に次ぐ失敗、
他人の悪意を受けながらも命を落とすことはない。
しかも本人は他人のズルさや悪意に全く気付いていない。
ある意味超人というか仙人的というか…。
1年を通じて、彼女の活躍?を描いたこの作品は
スカッと笑いたい方におすすめの良作に仕上がっている。
株式会社ポプラ社
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2017年02月25日

小説『かなたの子』角田光代

自分たちが興じた遊びの過失により同級生を殺して
しまったこどもたちは成長し、同窓会で顔を合わせる。
40歳を過ぎて毎年顔を出すメンツは決まっている。
ある種の共犯じみた集い。暗闇に閉じ込めてしまった
かつてのともを思い出すとき自分たちも暗闇の中に…。
『同窓会』

決してでしゃばらないが無表情な妻と暮らす家には
不気味な黒い梯子がかかっていた。ある日、夫は
自分の家に黒い複数の人影が入っていくのを目撃し…。
『黒い梯子』

記憶があいまいになるほど年を重ねた老婆。
30歳になる孫が結婚するという。
まだ中学生だと思っていたのにとうろたえる。
老婆は幼少期から他の者には見えない者を見ていた。
それは生まれてこなかった双子のかたわれ。
特に何をするわけでもなく物言わず自分を見てくる。
きっと生きている自分のことを恨んでいるのだ。
『わたしとわたしではない女』

生まれてこなかった子はどうなるのか?
8ヵ月もお腹の中にいた子をなかったことに
などできるわけがない。如月となづけたかなたの子を
愛で続けた文江は「くけど」に行けばわが子に会えると
聞いてかの地を訪れる。心揺さぶられる作品。
『かなたの子』

など8編を収録した短編集。怖くてせつない。
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2017年02月18日

小説『解』堂場瞬一

1989年。
政治家、小説家になるという夢を掲げる
大江波流、鷹西仁はそれぞれ
大蔵省、新聞記者の道を歩き出した。
時は流れて2011年。彼らは夢を叶えていた。
お互いの活躍をメディアを通じ、会話し称え合う二人。
しかし、大江には親友鷹西にも妻にも言えない秘密が…。

代議士の息子である大江は総理大臣になるのが夢。
鷹西は小説家になろうと賞に応募し最終選考に残るレベル。
夢を叶える下地としてそれぞれ卒業後の進路を決めた二人は
それぞれの道を歩き始めた。
鷹西は静岡県に赴任したが大きな事件も起こらない土地柄と
いうこともあり、物足りない日々を送っていた。
一方、忙しい日々を送っていた大江だったが、父が急逝。
困惑する大江に「弔い合戦」ならぬ選挙への打診をされる。
政治家としては貴重な清貧であった父は財を残すどころか
多くの借金を抱えていた。金がらみのしがらみに捕らわれたくない
大江はこれを断った。政治家になったあとも金が理由で
首に鈴をつけられるようなことを嫌った大江は
潤沢な資金を得るために起業することにした。
アメリカへの留学経験からITが日本を席巻することを予想した
大江にはまとまった金が必要であった。かくして事件が起こった。
新聞記者鷹西にとってはじめての大きな事件であった。
しかしそんな鷹西をあざ笑うかのように異動が決まる。

大震災、悲惨な事件などと共に年を重ね、着実に階段を歩む
二人であったが…。タイトルが示す「解」とは?集英社文庫
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2017年02月15日

小説『噂』荻原浩

噂が人を殺しに駆り立てる。
新ブランドの香水を売り出すために集められた女子高生。
噂の発信地は渋谷。高額報酬により意図的な販売戦略、
口コミにより、都市伝説化した噂により大ヒットした。
「レインマンが現れ、女の子の足首を切るのだが
この香水(ミリエル)をつけていると助かる」
いい噂よりも悪い噂の方が10倍伝わり、
恐怖を交えるとその効果は一層高まる。
まことしやかに囁かれる都市伝説的噂の数々…。
しかし、その不気味な噂は現実の殺人事件になり…。

妻を亡くし、中学生の娘菜摘と暮らす中年刑事の小暮は
優秀な女性警察官名島とチームを組み事件捜査に乗り出す。
被害者である十代の友達、ギャルなどを探る二人は
噂の出所を探る内にムリエルという香水に行き着く。
意図的に広められた噂。これは臭う…。
被害者が年頃の女の子と言うこともあり警戒を強める小暮。
殺人犯の魔の手は自分の娘の友達にも迫っていた。
警察の捜査をあざ笑うかのように連続殺人事件に発展。
拡散した噂は新たな犯行のきっかけになって…。新潮文庫。
タグ:小説 荻原浩
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