2017年03月24日

小説『ふる』西加奈子

他人からやさしいと評される池井戸花しすは、
AVのモザイクがけの仕事をしながら、
いろんな場面で音声の隠し録りをすることである。
花しすは人に見えない不思議な白いわたのような
ものが見えるのである。(まっくろくろすけの
白バージョンのようなもの)。ふわっと現れる。
人を傷つけず、周囲の空気が悪くなることを
極端に怖がる花しすは気遣いの日々を送る。
そしてこっそり隠し録りした人々の会話を聞き
安心したいのである。自分がいじられキャラであり
常にオチのような存在でありたいと願う花しす。
そんな彼女にも転機が訪れ…。

彼女の過去と現在が語られる過程で、謎の人物
新田人生が現れる。姿形を変えて次々と…。
でも主人公である私は全く気がついていないのだ。
他者に対するやさしさは同時に他者に対する無関心。
傷つけないようにする他者への過剰な気遣いは
本当は自己防衛だった。クライマックスで彼女に
「ふる」ものとは?まさに読ませる、ひきこませる。
言葉と表現の魔術師による傑作。河出文庫
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2017年03月20日

小説『そして誰もいなくなった』アガサクリスティー

インディアン島に集まった10人は童謡見立て殺人の
犠牲となり次々と命を落としていく。

集まった10人の人の生死に関わる過去の犯罪が暴かれ、
彼らの中に強い動揺が走る。
招待者U・N・オーエン(unknown)を名乗る
謎の人物の仕業なのか?悪趣味な演出に憤る彼女たち。
招待者の一人が毒殺されてしまう…。マザーグースの
「10人のインディアン人形」になぞらえた殺人だった。
犠牲者が続いたことから、第三者の存在を疑った彼らは
捜索に繰り出すのだが…。

明確な意思に基づいて殺人を続けていく犯人。
その中で疑心暗鬼に陥っていく招待者たち。
童謡のように誰もいなくなってしまうのか?
1億冊発行された世界的大ベストセラーであり
ミステリの女王、推理小説の最高傑作と言っても
過言ではない。15年ぶりに読んでもやはり名作。
感動は色あせない。早川書房
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2017年03月18日

小説『ファイヤーボール』原宏一

商社マンとして猛烈社員的働きをしていた咲本。
スペインのミゲル社長との大きな取引をまとめ
意気揚々と帰国した咲本。
しかし社内抗争が勃発し、閑職に追いやられてしまう。
暇なら町内会の仕事やってよと妻から言われ、
しぶしぶ会議に赴く咲本。

だがこの町内会大きな問題をはらんでいた。
元校長、元町内会長武村が院政をしくこの町内会では
横領、使い込み、業者への恫喝と政治的腐敗が進んでいた。
小規模な祭りとは思えないような予算が組まれるという
オリンピック的な腐敗に首をかしげた咲本は
「今より十倍盛り上がる祭り」を生み出すと豪語。

世界の祭りを調べた咲本は火の玉祭りの存在を知る。
まぁこんな危険な祭り無理だけど、本命のペット祭りを
選ばせるために提案する(捨て案)と思っていた。
しかし、武村の卑怯な策略により可決されてしまう。
どうせ泣きつくだろうとバカにされているのだ。

数少ない味方である役員と共に本気で火の玉祭りを
開催することにした咲本。オラ祭りするぞ!
家族や地域住民と共に祭りを盛り上げる決意を固めるが
既得権益保持に回る武村一味による妨害もあり苦戦。
やりたいからやる。
ファイヤーボールのように燃え上がった想いは
人々の心に伝播していき…。PHP文芸文庫
タグ:原宏一 小説
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2017年03月15日

小説『私のなかの彼女』角田光代

祖母の書いたと思しき小説の発見。
書きたいという気持ちが生まれたことで
変わっていく自分の気持ちと人生。
離れていく恋人仙太郎との距離。
そして自分を縛り付ける母、仙太郎の言葉。
それでも私は書く…。

バブル期に大学卒業を迎えることになった和歌は
同棲相手仙太郎との結婚を望んでいた。
宇都宮からやってきた特別自信もない自分は
出版の世界でちょっと名の知れた存在である仙太郎に
強い影響を受けながらなんとなく生きていた。
保守的な母は和歌の社会進出や進学にいい顔をせず、
常にプレッシャーをかけてくる。
特に母の母である祖母の存在が大きい。
「男と張り合おうとするな」という言葉を残した
祖母は物書きを志し、家出した過去がある。
祖母の行為を恥と捉えていた母は、
祖母を醜女(しこめ)と呼び、忌み嫌っていた。

しかし、何の因果か和歌は祖母の過去を想像し
小説で賞をとってしまう。妄想と現実の中で生きる
和歌はときに心を乱し、ときに寝食を忘れ仕事に没頭。
かつて望んでいたはずの仙太郎との暮らしであったが、
徐々にほころびが見え始め…。

変わっていく自分と環境の中でもがきながら
舟をこぐ和歌。漕ぎ手は誰でもない自分。
失ったものもあるが手にしたものも必ずある。新潮文庫
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2017年03月10日

小説『太陽の坐る場所』辻村深月

高校卒業から10年。毎年開かれるクラス会に
女優キョウコの姿はなかった。
神話を題材とした映画の活躍により、
東京の看板にその姿を見せるほどの芸能人になった彼女。
同級生たちにとって話題に上らないことはない。
なぜ彼女が姿を見せないのかを考える同級生たちは
やはりあの恋愛がからんだ「革命事件」が関係している
と考えていた。かつて近い所にいながら、
現在は遥か高みに行ってしまった同級生の姿は
太陽のようにまぶしすぎて実体をつかめない。
登場人物たちは本音を隠しながら、彼女に呼びかける。
キョウコに出てきてほしい、と。
徐々に明かされていくキョウコの高校時代の姿。
そこで描かれるのは女王が君臨する学園ヒエラルキー。
恋愛のためにこの高校を選び、自分を輝かせるために
選ばれた臣下としての女友達。女王の顔色を窺い、
苦汁をなめさせられていた者たちにより信頼を失った
女王は、ある事件をきっかけに…。

この物語は読んでいると違和感を覚える。
それは徐々に明かされていくのだが、伏線の張り方、
凝り方は小説じゃないとできない手法である。
登場人物たちの中には歪んだ性格の者も多く、
勘違いが引き起こす長年の葛藤も描かれている。
登場人物の心情の変化、選んだ行為、
高校における立ち位置と現在の立ち位置の変化を
描いたのは流石のひとこと。イヤミスと思わせて
うまく消化させてくれるうまさがある。文春文庫
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2017年03月07日

小説『D坂の殺人事件』江戸川乱歩

夢遊病に苦しむ男の苦悩、
退屈に苦しむ男は悪魔的頭脳で連続殺人を犯すが捕まらず、
堕胎を促す植物を知った妊婦は、
妻に裏切られた男の苦悩、
戦火の街で出会った美女、
顔を柘榴のように潰された死体から類推される真相、
人間嫌いの男が愛した女に抱いた憎しみと情念は
グロテスクで酸鼻を極める物語を作り出す。

密室状況下に起こった事件。目撃者二人の証言は
真っ二つに分かれ、犯人像が見えてこない。
名探偵明智小五郎は思わぬ視点から真相をあぶり出す。
挿絵を交えた本格派推理短編集。暗い時代背景、
人の持つ暗部や弱さを描かせたら随一。創元推理文庫
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2017年03月04日

小説『ふむふむ おしえて、お仕事』三浦しをん

16人の女性プロ仕事人との対談を収録した
インタビュー集。仕事と向き合い、人の生き方を
学ぶことで思わぬ発想や視点を持つことができる。
タイトル見ただけで興味を覚える職業がずらり。
【靴職人、ビール職人、染織家、活版技師
女流義太夫三味線、漫画アシスタント、
フラワーデザイナー、コーディネーター、
動物園飼育係、大学研究員、フィギュア企画開発、
現場監督、ウエイトリフティング選手、
お土産屋(2人)、編集者】である。

有名漫画家から引っ張りだこの萩原さん、
某芸能人や某社長と知り合いのオカマイさん、
ペンギン好きが高じて飼育係になった高橋さん、
エヴァ、ハガレンなどのフィギュアも制作澤山さん、
トンネルの現場監督を務める亀田さん、
著者もあこがれていた編集の仕事に携わる国田さん
など思わずふむふむと楽しんでしまう一冊。
人を喜ばせたい、人の生活の役に立ちたいプロたちの
言葉に思わず頭が下がります。新潮文庫
タグ:三浦しをん
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2017年02月28日

小説『みんなのふこう』若竹七海

超天然ドジっ子ココロちゃんによる珍騒動を
描いた捧腹絶倒のユーモア小説。

神奈川県葉崎(架空の街)はド田舎だが海があり
ラジオ局もある。瞳子ねえさんによって、
みんなの不幸(笑い話になりそうな不幸話)を
紹介するコーナーに登場するのがココロちゃんだ。
ココロちゃんの行くところ事件が絶えない。
バイトをすればとんでもない失敗をしでかしクビになり、
住居のボロアパートでも事件をを起こし強制退去。
斡旋された新たなバイト先では過去の事件が露見し、
あやしげな宗教団体に何の疑いもなく入り浸る。

しかし不幸続きなのに、ココロちゃん本人はいたって
平気なもので元気いっぱいに暴れまわる。
ものすごいスタンド(守護霊)がついているのか、
本人のダメすぎるドジ体質、失敗に次ぐ失敗、
他人の悪意を受けながらも命を落とすことはない。
しかも本人は他人のズルさや悪意に全く気付いていない。
ある意味超人というか仙人的というか…。
1年を通じて、彼女の活躍?を描いたこの作品は
スカッと笑いたい方におすすめの良作に仕上がっている。
株式会社ポプラ社
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2017年02月25日

小説『かなたの子』角田光代

自分たちが興じた遊びの過失により同級生を殺して
しまったこどもたちは成長し、同窓会で顔を合わせる。
40歳を過ぎて毎年顔を出すメンツは決まっている。
ある種の共犯じみた集い。暗闇に閉じ込めてしまった
かつてのともを思い出すとき自分たちも暗闇の中に…。
『同窓会』

決してでしゃばらないが無表情な妻と暮らす家には
不気味な黒い梯子がかかっていた。ある日、夫は
自分の家に黒い複数の人影が入っていくのを目撃し…。
『黒い梯子』

記憶があいまいになるほど年を重ねた老婆。
30歳になる孫が結婚するという。
まだ中学生だと思っていたのにとうろたえる。
老婆は幼少期から他の者には見えない者を見ていた。
それは生まれてこなかった双子のかたわれ。
特に何をするわけでもなく物言わず自分を見てくる。
きっと生きている自分のことを恨んでいるのだ。
『わたしとわたしではない女』

生まれてこなかった子はどうなるのか?
8ヵ月もお腹の中にいた子をなかったことに
などできるわけがない。如月となづけたかなたの子を
愛で続けた文江は「くけど」に行けばわが子に会えると
聞いてかの地を訪れる。心揺さぶられる作品。
『かなたの子』

など8編を収録した短編集。怖くてせつない。
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2017年02月18日

小説『解』堂場瞬一

1989年。
政治家、小説家になるという夢を掲げる
大江波流、鷹西仁はそれぞれ
大蔵省、新聞記者の道を歩き出した。
時は流れて2011年。彼らは夢を叶えていた。
お互いの活躍をメディアを通じ、会話し称え合う二人。
しかし、大江には親友鷹西にも妻にも言えない秘密が…。

代議士の息子である大江は総理大臣になるのが夢。
鷹西は小説家になろうと賞に応募し最終選考に残るレベル。
夢を叶える下地としてそれぞれ卒業後の進路を決めた二人は
それぞれの道を歩き始めた。
鷹西は静岡県に赴任したが大きな事件も起こらない土地柄と
いうこともあり、物足りない日々を送っていた。
一方、忙しい日々を送っていた大江だったが、父が急逝。
困惑する大江に「弔い合戦」ならぬ選挙への打診をされる。
政治家としては貴重な清貧であった父は財を残すどころか
多くの借金を抱えていた。金がらみのしがらみに捕らわれたくない
大江はこれを断った。政治家になったあとも金が理由で
首に鈴をつけられるようなことを嫌った大江は
潤沢な資金を得るために起業することにした。
アメリカへの留学経験からITが日本を席巻することを予想した
大江にはまとまった金が必要であった。かくして事件が起こった。
新聞記者鷹西にとってはじめての大きな事件であった。
しかしそんな鷹西をあざ笑うかのように異動が決まる。

大震災、悲惨な事件などと共に年を重ね、着実に階段を歩む
二人であったが…。タイトルが示す「解」とは?集英社文庫
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2017年02月15日

小説『噂』荻原浩

噂が人を殺しに駆り立てる。
新ブランドの香水を売り出すために集められた女子高生。
噂の発信地は渋谷。高額報酬により意図的な販売戦略、
口コミにより、都市伝説化した噂により大ヒットした。
「レインマンが現れ、女の子の足首を切るのだが
この香水(ミリエル)をつけていると助かる」
いい噂よりも悪い噂の方が10倍伝わり、
恐怖を交えるとその効果は一層高まる。
まことしやかに囁かれる都市伝説的噂の数々…。
しかし、その不気味な噂は現実の殺人事件になり…。

妻を亡くし、中学生の娘菜摘と暮らす中年刑事の小暮は
優秀な女性警察官名島とチームを組み事件捜査に乗り出す。
被害者である十代の友達、ギャルなどを探る二人は
噂の出所を探る内にムリエルという香水に行き着く。
意図的に広められた噂。これは臭う…。
被害者が年頃の女の子と言うこともあり警戒を強める小暮。
殺人犯の魔の手は自分の娘の友達にも迫っていた。
警察の捜査をあざ笑うかのように連続殺人事件に発展。
拡散した噂は新たな犯行のきっかけになって…。新潮文庫。
タグ:小説 荻原浩
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2017年02月12日

小説『羆嵐 くまあらし』吉村昭

大正4年北海道。巨大なヒグマにより壊滅的な被害を
受けた集落に、百人規模の警察隊が投入された。
しかしそれをあざ笑うように、ヒグマは人を喰い漁り、
恐怖は人々に伝播し、悪夢のような日々が続く。
冬眠するための穴を見つけられなかったヒグマは
特に狂暴になり、人を襲うという。
100貫(370キロ)クラスの巨体を持った
肉食獣の猛威は止まらない。
悲しみに暮れる被害者家族、そして自分たちがエサになる恐怖に
怯える人々。その恐ろしさは警察官たちとて例外ではない。
死神は今すぐそこに忍び寄っているかもしれない。
この地獄のような状況の中、
100頭以上のヒグマ(羆)をしとめた伝説のマタギ銀四郎に
白羽の矢が立つ。妻に逃げられ、子を失ったこの男は
手に負えない酒乱であり留置場に3度も捕まった問題人物。
できたら関わりたくないと敬遠され、疎まれた存在。
高額報酬こそ約束したものの、来てくれるかどうかわからないが…。
美しい自然の描写、その土地に生き根を下ろすことの意味。
過酷すぎる自然環境と圧倒的存在感を放つ大型肉食獣に
翻弄される人々の悲嘆、スリリングな展開は
実際におこった事件をもとにしたドキュメンタリー。
新潮文庫
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2017年02月09日

小説『神様からひと言』荻原浩

「珠川食品」に再就職した佐倉凉平はキレやすい性格が災いし
早速トラブルを起こしてしまう。リストラ要因収容所と
社員たちから呼ばれているお客様相談室にやってきた。
まともな社員なんているわけない。イヤミなキザ上司に
競艇狂い、アニメオタクに心を病んでいる剣道の達人。
KY(会社辞めたい)。だが家賃を払うために
2か月だけは我慢してから辞表叩きつけてやる!と
前向きに考える佐倉だったが…。

たまちゃんラーメンや漬物などを製造している珠川食品は
旧態依然の社風、会社のトップはとっちゃんぼうやの副社長。
上司へのお追従で成り立っているクソ会社で腐敗体質。
まともだった会長は失踪しており、会社は右肩下がりのジリ貧。
社運をかけたカップラーメンはまずいとクレームの嵐。
販売されている製品には苦情も多い。この会社、大丈夫?

お客様は神様。なのでお客様からのクレームを大切に!
という創始者の社訓がかかっているものも、嫌な仕事は
島流し的ポジションのお客様相談室に集中する。
わざわざ商品ごとにお客様の声を聞かせて下さい。
とここの電話番号があるからだ。
佐倉はクレームの洗礼を受け、うんざりする毎日。
でもこの職場をやめるわけにはいかない。
半年前に出ていったリンコが帰ってくるかもしれないし
嫌なことから尻尾をふって逃げるのはかっこ悪い。
これはもはや意地かもしれない。
そんな佐倉に一見ダメ社員だが、クレーム処理の達人篠崎が
謝罪の極意を伝授。篠崎も帰らぬ家族を待っていた。
少年漫画的主人公佐倉のがんばりは神様に、
人々の心に届くのか? 光文社文庫
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2017年02月05日

小説『クリムゾンの迷宮』貴志祐介

目覚めた場所は不気味な深紅色の岩が連なる不思議な世界。
ゼロサムゲームを余儀なくされた藤木たち9人の
悪夢のようなサバイバルゲームの火ぶたが切って落とされた。

藤木芳彦は何者かの手により荒野に立たされていた。
記憶はあいまいではっきり覚えていないのだが、
アルバイトの最終面接に行ったような…。
どうもはっきりしないのだが、冬だというのに暑い。
違和感がぬぐえない。傍らに置かれたゲーム機が告げる。
「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された…」
与えられた情報は限定されたもので、混乱は止まらない。
そんな彼が見た者は人影…。少しでも情報がほしい。
必死で追いかけた相手は大友藍と名乗る女であった。
やはり彼女も記憶があいまいで、ここがどこかは不明。
ゲーム機の導きにより、チェックポイントをめざす二人は
ゲームプレイヤーと合流。7人の男、2人の女は
悪意満々の主催者により、ゲームの趣旨を暗喩的に知らされる。
このゲームは限られたパイを奪い合うゼロサムゲーム。
ゲーム機により、4つのルートが提示された。
それぞれ自分がほしいと思うアイテムを選んでほしいという。
不自由な4択を迫られた9人は、各々の判断で4つのチームに
分かれ、それぞれのルートを歩み出した。
再び合流して、獲得したアイテムを平等に分配し合うという
口約束をして…。しかし…。
角川ホラー文庫
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2017年02月01日

小説『恋愛検定』桂望実

恋愛の神様が人間たちの恋愛力を判定!
恋愛検定に受かると何かと便利。先輩の中には
恋愛検定に合格したことで課長に出世した人も。
上級試験に合格すると、恋愛マスターとして
著書を出しベストセラー作家も夢ではない。
恋愛の神様は対象者の恋愛を6か月観察し合否を判定。
姿を現すときは、自分と対象者(受験者)以外の時間を
とめて会話をするのだが、酒好きで妙に人間臭いのだ。
恋愛の神様は神同士の仕事の中では傍流の末端的役割らしい。
だから仕事や上司に対するグチをする上に、恋愛をしないと
いう神様からしてみたら人間のそれは理解不能らしい。
しかも基本的にヒントを与えることも禁止されていて、
恋愛の相手すら教えてもらえない。
登場する七人の男女はそれぞれの恋愛力に応じた級を
受けることになるのだが…。
恋愛を前向きに肯定的に描き読者を楽しませる要素満載。
祥伝社文庫
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2017年01月27日

小説『砂の王国』荻原浩

どん底を味わった山崎は起死回生をかけ
2人の天才と共に新興宗教を立ち上げた。
自分を見捨てた世間を見返すために、かつて
自らが積み上げた砂の城をあえて壊すために。
そう、これは復讐の物語だ。

一流証券会社で数億円の金を動かし、高額報酬を受け
裕福な暮らしをしていた山崎遼一。
酒により病気となり職を失い、妻に離婚を切り出され、
住居費が払えなくなり、住み家も失った。
なけなしの金は心許した人間に持ち逃げされた。
40歳過ぎの山崎は持ち金3円というどん底の状態で
ホームレスとなった。そんな彼に対し世間は冷たかった。
まともな食べ物も得られず、お役所の対応はずさんで冷酷。
住所のない山崎はまともな職につくこともままならない。
絶望感にさいなまれる彼に救いの手を差し伸べてくれたのは
神に愛された容姿と美声を持つホームレス仲村。
仲村は優れた容姿によりファンから手厚い施しを受けていた。
惜しげもなく食料をわけてくれた仲村により山崎は救われ
なんとか命を長らえた。

生まれて初めて本当の感謝の念を持った山崎は
うさん臭い辻占い師龍斎の下でサクラをし、少額の報酬を得る。
コールドリーティングとはったりを駆使する60過ぎの
この男は酒とバクチに目のないどうしようもない男。
しかし門前の小僧習わぬ経を読む。40の手習いで山崎は
龍斎のやり方をヒントに詐欺的手法でお金を得る。
競馬狂いの龍斎と共に競馬場にやってきた山崎は
自分の命運を馬に託し、一発逆転を図る。

もう人に使われるのではなく、自分は使う側に回りたい。
山崎は仲村、龍斎と共に新興宗教団体「大地の会」を立ち上げた。
超然としたカリスマ性と美声を持つ仲村は教祖様大城に
祭り上げた。山崎はナンバー2の事務局長木島と名乗ることに。
表向きは大城を立てるが計画や実権を握るプロデューサー。
龍斎は小山内師範代と名乗らせ、教義の文書を書かせ
信者の相談に乗るセラピスト的役割を担わせる。
手探りで始めた大地の会であったが、仲村の持つ
圧倒的存在感や山崎、龍斎の手腕により信者を獲得。
救いの手を求める者たちは次々と現れた。
三人はそれぞれの持つ人間力により信者たちの心を掴み
熱狂の渦に落とし、勢力を拡大していく。

絵空事かと思われた山崎の青写真であったが、
幸運も舞い込み、大地の会の信者は飛躍的に増えていく。
桁違いのお金を信者たちの「寄進」により得るようになる。
人々はこの「祭り」に酔い、宴はつらい現実を忘れさせる。
しかし、山崎につきまとうのは過去から続く悪夢。
父の浮気性と言葉の暴力により、母は宗教に走った。
まともな家庭で育てず、狂信的な振る舞いの母のせいで
友達もつくれず孤独で不遇なこども時代を過ごした

山崎はこどもを不幸にするからと家庭でもこどもを作らず、
そして未だに偏頭痛と悪夢に苛まれていた。
おまけに宗教団体というややこしい商売をはじめたことで
内部対立、外圧はひっきりなしに起こり悩みは尽きない。
面倒なことは自分がやらなければ気が済まない性格の上、
どこかで悪に徹しきれない所がある。
そもそも悪の片棒を担がせるのに選んだ相手も危うい。
龍斎は父の失踪によりまともに就学できず退廃的な生き方を
選ぶしかなかったアウトロー。仲村は難病が原因で、
自己を確立できずドロップアウトしていた。
砂のように危うい関係、そして砂のように危うい組織。
こどものときに、そしておとなになってから
積み上げている砂のお城はもろく、はかないものだった。
しかも最後の拠り所、神様はいないという皮肉。
自分自身を欺いている内は助けなんて得られないという真理。
魂揺さぶられる驚愕の傑作長編。上・下巻。
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2017年01月20日

小説『攪乱者』石持浅海

久米・宮古・輪島はテロリスト実行部隊。
組織の細胞として無血で国や政府に対して
国民が不信感を持つように仕向けたい。
武力行使によるクーデターは国民にも国際社会にも
受け入れられず、適切とは言えない。
自分たちの組織が政権を握ることを夢見る三人。
リーダー入間からの指示により、テロとは無関係そうな
ことを実行していく。スーパーにレモンを置いたり、
公園にアライグマとプラスチックを置いたり、
電車に丸めた新聞を入れた袋を置いてくる。
一体自分たちの行動がどういった効果を生むのか?
疑問を持つようになった彼らの前に現れるのは串本。
無意味と思われた行動を聞いた串本は
隠された意図の答えを導き出していく。
ISにはない血の通った彼らのテロと衝撃の結末。
日常に潜む危うさや飛躍的発想、三人の主人公をあえて
善として描く手法。唸らせられる傑作ミステリー。
実業之日本社文庫 
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2017年01月14日

小説『ちょいな人々』荻原浩

ワンマン社長の鶴の一声で金曜日にはカジュアルな
格好をするようにというお達しが出た。
おじさん課長である誠一は困惑するが、女性社員瑠璃、
世間のチョイ悪ブームにノセられ、おしゃれにめざめる。
その悲喜交々を描いた「ちょいな人々」。

某おもちゃ会社は画期的とも思える発明に着手したが
モニターの犬と猫、人々は大迷惑?
「犬猫語完全翻訳機」、「正直メール」。

隣家同士の庭、境界線をめぐるちょっとした小競り合い
「ガーデンウォーズ」、目の付け所がよかったのか
人気を博すことになった占い師の快進撃「占い師の悪運」、
いじめの本質、戦う姿勢を描いた「いじめ電話相談室」、
野球狂の父と恋人を持つ主人公は応援球団のすれ違いから
「くたばれ、タイガース」など7編を収録した短編集。
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2016年11月20日

小説『ジャイロスコープ』伊坂幸太郎



蝦蟇倉(がまくら)市にやってきた浜田青年は
「相談屋」稲垣さんの下で住み込みの仕事をすることに。
ときに物騒な解決案をお客様に提示する稲垣さんに
本当っすか?(本当にそれでいいのですか)と首をかしげる
浜田青年だったが、遂に仕事を与えられる。
『浜田青年ホントスカ』

もしあのときああしていれば…。
心ある人間ならば誰しも自らの言動を反省することはある。
日々繰り返される日常の暮らし。通勤にバスを使う主人公は
事件に巻き込まれる。バスジャックであった。
『if』

いろいろな事情からサンタクロースがクリスマスにやってこない
場合がある。そんなこどもたちのために、プレゼントを届ける
会社があった。縁あってこの会社に入った者の中には
プレゼントをもらったことのあるかつてのこどももいた。
冒頭で危機が報じられ、会社での会話となり、見事に帰結させる。
『一人では無理がある』

新幹線の清掃員として働くちゃんとした人たちが主人公。
彼らが尊敬する鶴田さんが急病によって倒れる。
パウエル国務長官によって勇気づけられていた鶴田さんを
心配しながら、彼らが仕事を通じて体験した不思議な出来事を描く。
『彗星さんたち』
など7編を収録。新潮文庫。
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2016年11月13日

小説『百万のマルコ』柳広司

王の中の王フビライ・ハーンに仕え数々の功績をあげた
マルコポーロにより語られる謎かけとその答えが語られるとき
味気ない囚われの身の囚人たちは確かに自由を手に入れた。
退屈を余儀なくされた囚人たちに許されたのは思考することだけ。
マルコが語るとっておきの思考ゲームとは?
巨万の富を王により与えられながら、いつになっても
牢から出ていかないマルコを囚人たちは「ほらふきマルコ」と
呼びながら、いつしかその謎かけを熱望するように。
創元推理文庫
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 10:11| Comment(0) | TrackBack(0) | おすすめの長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする