2020年02月14日

小説『ニセモノの妻』三崎亜記

「終の筈の住所」

マンションに引っ越してきた夫婦はなぜか住人に全く会わず
不気味なほど静かな新生活を送る。
ようやく荷物も片付き、招待されていた先輩の家に
向かう夫婦が観たものは、自分たちの住むマンションに
反対する巨大な幟(のぼり)を掲げた家々だった。
あれ、先輩のウチの幟が一際大きいような…。

にこやかに夫婦を迎える先輩夫婦。
マンションの存在は大反対だった、住人たちの反対を
押し切って建設されたマンションは憎い。
だが、君たちがあのマンションに住んでいるのは別問題。
この地域の人たちはマンションを目の敵にしていた。

住民自治会にやってきた主人公は異常事態を知る。
マンションに住み、組合員は282名いるのに
自分以外は全員委任状を提出しており、出席者は自分ただ一人。
かつてこの町をジョギングしたときじぶんの部屋以外に
明かりがなかったのは見間違いではなかったのではないか?

「ニセモノの妻」

ある日を境に容姿、能力、記憶、遺伝子情報などが
ホンモノ(本人)と同じニセモノの存在が現れるようになった。
ニセモノの特徴は自らが「ニセモノ」であると自覚している。
ニセモノはホンモノやその家族の前から自発的に姿を消すので、
日常生活に問題が起こらない。彼、彼女を保護する者もいるが、
「人権を有しない」バケモノのような存在として忌避する者もいる。

自分の妻が、ニセモノではないかと言い出し、
なぜかホンモノの妻がいなくなってしまった。
主人公はホンモノの妻を捜すことに熱心なニセモノの妻と共に
ホンモノの妻を見つけることにした。

ニセモノたちが集まる方舟協會という組織があるという。
うさんくさい情報を男から入手した「二人」に待ち受けるのは?

「坂」

坂ブームによって坂愛好者が増える昨今、坂をめぐる争いが
生じるようになった。(乃木坂46、日向坂とかとは無関係)
つまり坂を持つ者、持たざる者、坂愛好家、無関心派、
そして坂愛好家に対抗する階段主義者の対立などが顕著になる。
熱心な坂愛好家である妻は、夫との坂に対する認識の違いから
家を出てしまい、坂を占拠するグループに入ってしまう。
繰り広げられる高度でありながら不毛な屁理屈合戦。
坂の「傾き」が暗示する「価値観」の争いは何を生み出すのか。

「断層」

断層、次元の狭間に突如吸い込まれた人々。
一日に十数分程度、こちらの世界に戻ってくるのだが
自分が異次元に行っていることを認識していない。
もし彼ないし彼女がそれを自覚してしまうと、
世界から消えてしまいもう戻ってくることはない。
原因不明の自体に困惑する人々。
しかし、それ以降起こらない断層現象は次元の狭間に
大切な人を奪われた関係者以外の原因解明への熱意、
保護対象などの救済措置を奪っていく。
そういたみを被る者以外にはしょせん対岸の火事だった。

物語にはある恋愛脳全快のバカ夫婦が登場し、
読者はウザいほど仲がよい姿をみせつけられる。
物語の深刻さと対照的に夫婦は平素のようにイチャイチャし、
限られた時間を過ごすのである。
妻こと希美さんにこのことを知られてはいけない。
だって、事実を知ったら最愛の妻が消えてしまう。
誰もさわれない二人だけの世界、だがそれは夫である
主人公のたった一人の孤独な戦いでもある。

大切な人を理不尽に奪われることは現実の世界にもままある。
「神隠し」的原因が不明な事象によって、妻を失う
恐怖と戦う夫くんの姿に思わず涙を流してしまった。

著者の代表作としては「となり町戦争」がある。
その後も何冊か読んだのだがそれ以来の会心の短編集である。
表題作である「ニセモノの妻」の持つ圧倒的な世界観、
コメディーのようなバカ夫婦による究極の愛の日々を描いた
「断層」。すばらしいの一言に尽きる。新潮文庫
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2020年02月03日

エッセイ『極悪鳥になる夢を見る』貴志祐介

日本ホラー小説界に新ジャンルを起こした著者による
エッセイである。あふれる知性、にじみ出る考察、
日常や自然界に潜む悪意や悪質なあれこれに迫る。

感銘を受けたホラーやSF小説に対して鋭い視点で切り込む。
そこから垣間見えるのは、あくなき探究心と理解の深さ。
そして、莫大な読書量が血となり肉となり、
そのまま貴志先生が残した名作の下地になっている。

作中には「怖い絵」のような名画や美術品に対する
アプローチ、考察もされていてこれも楽しめた。

中には阪神タイガースへの強力な愛情を感じる話や
グロテスクだが生命力あふれるスッポンを食べる話、
なぜか意欲的に早口言葉を創作する話、
こどものときにバターコーヒーにはまった話など
あえて他愛のないことや言葉遊びに興ずる回もある。
バラエティーに富んだ内容である。文春文庫

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2020年01月03日

小説『わが心のジェニファー』浅田次郎

恋人の頼みで日本旅行に訪れたアメリカ人のラリー。
外国人の目から日本を実体験することで
深く理解(誤解も含めて)していく。
日本人、日本の自然、グルメや温泉や文化、宗教観を
知ることは、神秘体験の連続だった。
日本のことをポジティブ・ネガティブに紹介した二種類の
変なガイド書を参考にしながら、各地の名所をめぐる。

なぜか日本びいきの恋人ジェニファーが
日本に行くようにお願いした理由とは?
「日本人は油断のならない奴ら」と断じる退役海軍将校の
祖父を持つラリーは祖父と祖母によって育てられた。
厳格な祖父とやさしい祖母によってアメリカ人にしては
少々内気で巨漢で大食漢なデブ青年は何を見いだすのか?

異国への旅行による新鮮な感想や人との出会いが感動的。
日本人のメンタリティーや日本の良さや魅力、
外国人にとっては変な部分が浮き彫りになる。
浅田次郎先生の豊富な旅行の経験が盛り込まれている。
…どうかはわからない(1年で120日旅行している)。
主人公の日本に対する勘違いやムダな考察や理解、
ジェニファーへのラブレターがおかしくて愛しい。
日本を理解することは日本を愛する恋人を理解し、
彼女自身を理解することに通じる。だから真剣に考える。

まさに浅田次郎的な笑いと感動が詰め込まれた珍道中は
タイトルのイメージの恋愛小説よりも笑える旅行記という
比重が強い。小学館文庫
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2019年12月23日

小説『世にも奇妙な君物語』朝井リョウ

「シェアハウさない」

泥酔していた所、介抱してくれた女性により
シェアハウスに運び込まれた主人公浩子。
心に傷を負った過去を持つ彼女はライターとなり
シェアハウスに住む人々を取材したいと思っていた。
男女4人で暮らしていたメンバーの一人がここを
出て行くと知り、勢いで自分が住みたいと提案。
却下されるかと思ったが受諾され、4人に流れる
不思議な空気からある種の秘密を感じ取る。

「リア充裁判」

コミニューケーション能力が異常に尊重される
現代の風潮を皮肉った作品。
リア充裁判と揶揄されるコミニューケーション能力を
図る質疑応答がなされ、この能力が欠けていると
判断されてしまうと、コミュ力の向上を促される。
強制的にバカバカしい格好をさせられ、パーリィ
ピーポーのような振る舞いをすることが善(正解)
という世界なのである。
まともだったはずの姉を変な風に変えてしまった
この裁判に臨むことになった地味子の運命は?

「立て!金次郎」

保育士になった熱血教師だったが、
そこに立ちはだかるのはモンスターペアレント。
理不尽な要求はエスカレートし、
幼稚園で行われる全行事のうちこども全員が
主役になる機会が設けられるようにと口撃される。

こどもを見ずに保護者の顔を見ることを優先した
須永先生の評判はうなぎのぼり。
反対に人なつっこくて評判がよかった主人公の
評判は悪くなり、最近保護者からの反応が悪い。
でもやっぱりこどもの気持ちが大事だよな!
保護者からの外圧になんて屈しないぞ!
と昔からのあだ名が金次郎の主人公は奮起する。

「13・5文字しか集中して読めな」

煽り文句ばかりで真実を映し出していない
ネットニュースの見出しを皮肉った作品。
文章を要約したり、表現者にとって都合のよい部分だけを
抜粋すると、受け手(読者)に与える印象が真逆の
ものになったり、間違って伝わるよねという
ブラックユーモアあふれる物語が展開される。

「脇役バトルロワイアル」

有名な演出家蜷川作品の主役オーディション会場に
やってきた溝淵淳平ら6人の男女たち。
年齢もバラバラだし、性別も違う。
それにしても最近は脇役として活躍するメンバーばかり。
主役なんて柄じゃないよね…
と自虐的に話し合っていたら、審査がスタート。
どうやら脇役らしい振る舞いをすると不合格となり
最後の一人として残れば晴れて主役になれるようだ。
脇役あるあるも交え、本のタイトルが示すような
「世にも奇妙な物語」的演出なユーモア作品。講談社
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2019年12月17日

小説『武道館』朝井リョウ

武道館ライブを夢見る6人組アイドルグループ
NEXT YOUのメンバー愛子が主人公。
小さな頃から歌って踊ることが大好きだった
愛子はアイドルになることを選択した。両親が離婚。
父と母、どちらについて行くのか選択を迫られる。
愛子の選択は父の方であったが
幼なじみである大地と離れたくない気持ちが強かった。

NEXT YOUのダブルセンターを務めた主要メンバーが
1年で卒業決定。武道館は12000人規模のライブもできるが
区切れば半分以下の収容人数でもライブができる。
まずは、そのレベルでの武道館ライブをめざそう!
目標を掲げたその子が卒業してしまった。

5人はフォーメーションの変化や徐々に規模を拡大していく
自分たちのアイドル活動にとまどいながら日々を送る。
握手会や特典商法、盗撮、SNSでの炎上や正義の味方面した
書き込みそれに伴うスルースキル…
アイドルに求められるいろんな重圧や抑圧の中で
愛子は日々揺れながらメンバーや大地との学園生活を送る。

自分の中の夢やアイドルとしての人気が増えていくことで
注目を集めるようになるが、電車に乗っても気づかれない。
乗客はみんなスマホを観ている。
本当に自分の選択は正しかったのかな?
私たちのことなんて何も知らない人たちはもちろん
ファン(自称ファン)は私たちの幸せを望んでいるのかな?
というアイドル目線での半信半疑という鋭い視点を持つ。

少しずつだが人気が出てきて、オリコントップ10にも入り、
武道館ライブも現実味を帯びていく。
一喜一憂する日々の中で、それでも満たされず
物思いにふけることが多いヒロイン愛子。

自分たちを売り出すために必死になっている大人たち。
暗黙の了解というか絶対条件とされる恋愛禁止。
でも人間として生きている以上、そういう気持ちや
理不尽な攻撃に対し怒らないことって人として正しいのかな?
自分が本当のアイドルと認めるメンバー碧や他のメンバーと
共に捧げた青春の日々や選択を誇れるようになる日は来るのか?

現実世界のアイドルの不祥事や彼女たちを取り巻く環境も
交えながら最終的に著者が示したかった思いとは?
偶像として語られるアイドルたちを実像(生身の人間)
として描いた挑戦的な作品。文藝春秋

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2019年12月09日

小説『掏摸 スリ』中村文則

偽名で暮らす天才スリ師の僕は
最悪の男木崎によってある犯罪に参加。
500万円の報酬には見合わなそうな
単純な作業であったが、巨悪事件につながる
一連の犯罪につながっていた。

親友は木崎の指示により消されてしまった。
木崎を恐れて東京をネジロにスリ行為をしていた僕は
母親の命令で万引きをする少年をきまぐれて助けた。
母に見切りをつけていた少年は僕に心を開き、
僕もかつての自分を重ね合わせるように尽力する。

しかし、そんな折木崎と遭遇。
三つの仕事をこなせ。
失敗したらお前を殺す。
逃げれば最近お前と付き合いがあるあの親子を殺す。

裏社会の住人として君臨する木崎からの
理不尽な要求は、裏社会に生きる僕にとって運命。
ドレイを使って、ある男の人生の未来日記を描いた
支配者の寓話。僕の人生にたびたび登場する
不思議な塔の映像は何かのメタファー(暗喩)なのか?
絶望的な状況の中、僕は何に祈るのか?
孤独な主人公の姿を描いたピカレスク小説。河出文庫
ラベル:小説 中村文則
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2019年11月29日

小説『美人薄命』深水黎一郎

戦争によって大事な人を失ったカエは
望まぬ結婚をし、姑・旦那から虐げられ、
一方的に離縁されてしまう。
片目を失い生き場所のないカエだったが
親友の存在により繕いの仕事をこなし
御年84歳。現在では冗談によって他人を
笑わせる老婆としてつつましく生きていた。

大学のセミナーで教授から進級できないと
脅された大学生の磯田総司は弁当配達の
ボランティアに参加した。一回でもこなせば
教授も許してくれるだろうと軽い気持ちだった。

だが届けたカエなどの老婆や老爺、
ボランティアスタッフの杉村、
かつてあこがれていた同級生の沙織などの
存在もあり、腹の立つこともあるが続けていた。

物語は普通の若者である総司が
84歳にしてあこがれの人、五十路への
過去の恋に生きるカエの秘密に迫っていく
という極上の純愛ミステリーである。
旧字体で書かれるカエの述懐・回想シーンから
現代の物語につながっていく。

なぜカエは総司に対し、胸襟を開いたのか?
カエが抱いてた淡い恋心の行方は?
総司はどのように考え、どう成長したのか?
そして物語の核心、真実に迫るとき
読者をあっと言わせる演出が心憎い。
『最後のトリック』でもうならされたが
私としてはこちらの方が更におすすめ。
双葉文庫
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2019年11月01日

エッセイ『またたび』さくらももこ

まる子の世界旅行の珍道中のあれこれをつづった
爆笑エッセイ。口語体を交えて飾らない文章で
心情の素直につづる。しっかり者の木村さんや
ろくでもない石井さんら同行者とのくだらなくも
愛しい旅の思い出をあますことなく語っている。
おいしくていくらでも食べられてしまうような
世界のグルメな料理に舌鼓を打ち、
ときにゲテモノにうろたえ、
仙台の寿司屋で感動的な味に出会う。

カジノで一喜一憂し、典型的スリに遭い、
なぜか一度しか来ていないかの地で調子に乗って
イキるくだらない石井さんがおもしろい。
ローマの休日でオードリー・ヘップバーンが
アイス食べていた場所に訪れたり、
美しいベニスを堪能したり、
スリランカで宝石の原石を掘ったり、
父ヒロシとスリランカの大臣と謁見したり、
中国のお茶屋で大量にお茶を買い込む。
人のまごころを感じたり、かの地で世知辛い洗礼を
受けたり、体調を崩したりと大忙し。
旅の醍醐味は行って帰って思い返すこと。
このエッセイを読むと行ってみたい場所が増える。
猫にまたたび、いずれの人もまた旅なり。
お気軽に楽しめるさくらももこの旅エッセイ。
新潮文庫
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2019年10月25日

小説『最後のトリック』深水黎一郎

作家である私の下に手紙が届く。
「読者が犯人」というトリックのアイディアを
買ってほしいというものだった。
香坂誠一という謎の男からの手紙はその後も届き、
「命と引き換えにしても惜しくない一世一代」
のアイディアなので2億ほしいと言う。
不信感を抱きながらも、いつしか男からの手紙を
待ちわびている作家の姿があった。
荒唐無稽の大言壮語かと思われた物語は
意外な展開を遂げて…。

作中でも語られるように意外な犯人の模索は
ミステリー界では数多の作家が挑んできた。本作は
ミステリー界最後の不可能トリックに挑んだ意欲作。
物語の随所に暗喩的伏線が提示されていて、
緻密な計算と説得力で展開される傑作推理小説。
一気読みしたくなる垂涎の一冊。河出文庫
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2019年10月04日

小説『ボンボンと悪夢』星新一

気づいたら犯罪者への仲間入り。
殺人、殺人請負、ゆすり、密輸。
組織的なアリバイ工作、実刑を免れたい富豪が
高額弁護士に依頼した弁護の行方は?「組織」

老後の仕事として恐喝リストを手に入れた
老人の結末は?
犯罪に関わるテーマに止まらず、
圧倒的な科学力を持つ宇宙人の襲来も描く。

娯楽を求める宇宙人たちの要望に応じるため、
数々のショーを命懸けで演じる地球人たちを
描いた「宇宙のネロ」。

地上の女性たちをすべて引き渡しください。
と通告する宇宙人を描いた「賢明な女性たち」

飲む打つ買うの三拍子揃った派手な生活を送った
K氏だったが遂に切羽詰まり海で身投げをした。
しかし、奇跡的に助けられた豪華客船には
彼が人生を狂わせた娯楽が詰まっていた「不運」
などを収録。数奇な運命をたどった登場人物、
絶体絶命の人類の行方は?

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2019年09月23日

小説『妖精配給会社』星新一

タイムマシン、不老不死、幽霊、宇宙旅行、宝船…。
科学の発展や摩訶不思議な現象によって、
人々はどんな選択をしていくのか?
ショート・ショートの第一人者である星先生が
繰り出す珠玉の35編を収録。新潮文庫

【おみやげを持って】

初の恒星間飛行を成し遂げた乗組員たちは
不老不死の秘宝という最高のお土産を入手し、
意気揚々と地球をめざす。

【妖精配給会社】

他の星からの漂流者「妖精」は、飼い主に従順で
会話が可能で褒め上手。残飯を与えられれば、 
喜んで食べ、悪口も言わないので最高のペットとして
人々にあまねく普及していった。あまりにも
できすぎた妖精という存在に疑問を抱いたのは
一人の老人だった。

【ごきげん保険】

万能生活保険会社の保険に加入した男。
日常に起こった些細な不満や私情まみれのクレームに
会社から慰謝料として保険料が支払われる。
イライラを解消できると喜ぶ男だったが…。

【求人難】

小さな町工場の経営者のエス氏は求人難に悩んでいた。
夜道で拾ったがま口財布は不思議な財布で、
空っぽにして再び開けると紙幣が入っている。
にわかに景気がよくなったエス氏だったが…。
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2019年08月25日

小説『彼女が追ってくる』石持浅海

冷酷で頭脳明晰な才女たちによる
論理的な頭脳ゲーム開幕。最期に笑うのは一体誰だ?

「箱根会」は成功した経営者たちに催される会。
今回はコテージに会のメンバーとゲストとして
火山学者碓氷優佳が参加した。
メンバー間の懇談によって楽しい夜が過ぎていく。
そんな中、中条夏子はかつての親友にして
恋のライバルだった黒羽姫乃殺害を断行した。
用意周到にして計画的な殺人であり、
夏子は完全犯罪を確信していたのだが…

事件は被害者である姫乃が握っていたカフスボタンの
存在によって、思わぬ展開をみせる。
それは姫乃の遺志なのか?殺したはずの相手から
追われているような錯覚を受ける加害者夏子。

容疑者をかばう気鋭や同情心や打算から
警察への通報が遅れ、関係者たちによる
殺人事件に対する考察が行われる。
部外者のはずの碓氷優佳は事件の真相を暴いていく
超然とした存在として異彩を放つ。
読んだあなたが本当に冷たいと感じる女性は誰?
祥伝社文庫
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2019年08月19日

小説『極楽カンパニー』原宏一

定年退職した会社人間須河内、桐峰は本気で
会社ごっこをはじめた。
「絵空事・馬鹿正直・度外視」
という現実の会社ではできなかった理想を掲げ、
邁進する二人は彼らに賛同する喫茶店のマスターの
協力もあって架空の会社を設立。

退職後張り合いをなくし、暇を持て余していた
同じ境遇の者たちが想像以上に集まってきた。
喫茶店をオフィスとした本気の会社ごっこ遊びは
会社人間、モーレツ社員たちにとって最高の時間。
金の介在がないだけで本式の会社と見間違うレベルの
ごっこ遊びに定年退職者達は夢中になる。

100人単位に膨れ上がり、喫茶店だけではキャパ超えと
桐峰は新たに別会社をつくり切磋琢磨しようと張り切る。
商社に勤めていた須河内の息子慎平はそんな父を冷ややかに
見ていた。だが将来の独立を真剣に考えるようになり
父たちの会社ごっこはそのままビジネスに転用できる
可能性に気づく。そして資金を出してくれるという
悪評ばかりの二谷の存在もあって会社との決別を決める。

会社ごっこは会社人間だった多くの定年世代の心を捉え、
全国に広がっていく。そんな中、事件が勃発して。

父と子の確執、母の怒り、働き方や働く意味を
ユーモアを交えて描く。作品の中で、登場人物が
会社って一体何なんだろうね?と考えるシーンがあるが
本当に会社って何なのかね?労働環境自体はどんどん
よくなっているはずなのに、離職率とかは上がっている。
終身雇用が崩壊したことや、転職自体のハードルが
ずっと低くなったことや、家庭の形やあり方や
女性の社会進出など多くの要素がからみあって、
一概には言えないのもかもしれない。

職業選択が自由化したことで、かえって複雑化、
迷う要素が増えたような気もするが、職業を変えられる、
逃げられる環境もできた気もするし。いずれにせよ
天職を見つけられればいいけどこればかりは難しい。
集英社文庫
ラベル:小説 原宏一
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2019年08月02日

小説『白髪鬼』江戸川乱歩

九州の大名を先祖に持つ大牟田子爵は姦夫姦婦
(ゲス不倫、NTR)され、事故を装った殺人未遂
の被害に遭う。旧家の立派な墓に埋められる。
当時土葬だったので彼は仮死状態から復活した。

数日間地中から這い出ようとした地獄体験、
死の恐怖によって白髪となり老人の姿に豹変。
しかし思わぬ形で海賊の宝を手にすることに。

愛する妻瑠璃子と親友川村が自分を裏切り、
殺そうとした真相を知ってしまう。
大牟田俊清は悪女瑠璃子と川村に復讐を果たそう
と強く決意した。
二人の罪を告発しても苦痛の少ない死刑が関の山。
それではこの怒りは修まらないと私刑を選択。
目には目を、歯には歯を、殺意には殺意を。
コノウラミハラサデオクベキカ。

自分の顔の特徴である目を黒眼鏡で隠し、
大牟田家の親類で渡米し正体不明となった
親類里見重之になりすます。
彼は南米で大成功し、成金紳士となって
日本に帰ってきたという筋書きだ。
白髪鬼と化した彼は復讐の心を胸に秘め
瑠璃子と川村に近づいていく。その結果、
二人の犯した新たな罪も露見し、より一層
白髪鬼の仇討ち的ストーリーに拍車がかかる。

ゾクゾクする名作ホラー。人の心に醜さ、
恐ろしさや複雑さを見事に描く。
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2019年07月29日

小説『影男』江戸川乱歩

いくつもの名前を持ち、複数の恋人を持ち、
人々の秘密を握り影のように暗躍する影男。
人の表の顔と裏の顔を探求する影男は、
めだたない影のような存在となり恋人や部下も
動員して権力者の急所を握り大金を脅し取る。

犯罪小説家という顔を持つ彼は、実際に自分が
行った犯罪を作品で発表するという
大胆不敵な行為をし、それを愉しんですらいる。
しかし根っからの悪党ではないので、きまぐれで
困っている人間を助けたりと義賊的性格も併せ持つ。

その類い稀な頭脳は本当の悪党に目をつけられる。
殺人請負会社を営む須原は影男に接触。
ターゲットを奇抜な方法で殺したいので
その方法を伝授してほしいと影男に依頼した。

幻想的な世界を構築し、ルパン的主人公影男が
暗躍する物語に引き込まれる。作者が述べるように
思いつきと二番煎じ(過去の作品との)、
後半の構成にやや難があるが十分楽しめた。
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2019年07月15日

小説『くちびるに歌を』中田永一

Nコン合唱コンクールをめざす長崎県五島列島の
中学生たちと合唱部を指導する自称ニートの美人教師の
奮闘を描いた青春小説。作者は乙一先生別名義中田先生。

産休に入った信頼厚い音楽教師松山先生の代理で
美人ピアニストでニートをしていた柏木先生がやってきた。
松山先生と柏木先生は友人であり三角関係の当事者。
松山先生の旦那はかつて柏木の恋人ということもあり
複雑な想いを抱いていた。生徒達には伏せられていたが
松山先生は心臓が悪く危険度が高い。
それを知る教師達は彼女の容態を危惧していた。

合唱部は元々女子しかおらず、まとまっていた。
しかし、美人の柏木先生目当てで男子生徒が数名入り
(桑原サトルのみ違うが)、不協和音が生まれることに。

美形の2年生男子をちやほやする浮かれた女子生徒、
練習をまじめにせず女子生徒から不況を買う男子生徒、
めだたないまじめな生徒だった桑原がみせる意外な才能、
部内で生まれた恋愛感情や恋愛関係。

思春期を迎えた中学生がいろんな悩みに直面しながら
等身大の自分と向き合いながら生活を送る。
一見おちゃらけて見えた人物の意外な素顔、
明るくてかわいいあの子の素の部分や悩み、
家族から過度の期待を背負わされた生徒、
そして案外メンタル弱い顧問の柏木先生に
部員を支えるしっかり者の部長、
自分の意外な恋心に気づく女子生徒と
盛りだくさんなキャラクター、感情がほとばしる。

「手紙〜拝啓 十五の君へ〜」、そして作中登場人物が
十五年後の自分に向けた手紙を描いているが、
そこにこめられた想いやそのときに感じた
あれこれを形にするというのは、恥ずかしさと同時に
大切な思い出に変わる日がくるかもしれない。

主人公の一人であるサトルは、自閉症の兄がいる。
将来を心配した両親から、兄の面倒をみる存在として
生まれた子である。ある種の義務感、責任感を
あらかじめ運命づけられた存在であり、消極的で
めだたない彼はともだちもできず得意は寝たふり。
しかし、明るくかわいい同級生長谷川コトミが
つぶやいた毒舌を聞いてしまう。寝たふりを続け、
聞いていなかった演技を続けるが、おそらく
バレている。でもそんなこともあり、サトルは
コトミのことが気になり、ひょんなことから入部。

サトル意外の男子生徒は柏木がいないと露骨に
まじめに練習をしないので女子から敵視される。
女子部員の中でも男子擁護派、男子敵視派(主流)が
生まれ対立が表面化。昔のラブレターによる裏工作と
ほほえましい?水面下の交渉も勃発。
本気でNコンをめざす女子部員は、男子を出さない
強硬案を主張する自体に。混声合唱は生まれるのか。
小学館文庫
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2019年07月08日

小説『夜光の階段』松本清張

女を踏み台にして成功の階段をかけあがる
美容師佐山道夫と彼に疑惑を抱く桑山検事。
女たらし、女殺しと称される美容師佐山は
刑事事件的な意味で裏の顔を持っていた。
男性美容師が珍しいいわゆるカリスマ美容師の
走りだった当時にヒモ・悪事の天才佐山が躍動。
関係を持ち、女性を利用し尽くす悪魔のような男は
シッポをつかませないし、豹変するときはある意味
君子のように行動が迅速で頭もキレる。

自白を強要する違法捜査がまかり通り、
官尊民卑が顕著だった社会背景もあって
そのシッポをつかまれない佐山。
美容界の寵児、ニュースターともてはやされる
佐山の周囲では変死を遂げる者が多い。
裁判によって一応の解決をみせた殺人事件。
しかし、それはえん罪だったのではないか。
不思議な因縁で彼に対して疑惑を強める佐山は
独自の調査を進めるのだが…。
富と名声のために悪事に手を染めていく
美容師がいろんなものを切りまくる。
それは後ろ暗い過去か邪魔になった女との関係か。
新潮文庫上・下巻
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2019年06月25日

小説『百瀬、こっちを向いて。』中田永一

「百瀬、こっちを向いて。」

人間レベル2の学校カースト底辺を自負する僕は、
百瀬陽という美少女とつきあうことに。
そこにはこんないきさつがあった。

幼なじみにして年上のヒーローイケメンの宮崎先輩は
学校を代表するご令嬢の神林先輩とつきあっている。
(資産家の神林先輩は県知事とも知り合いなのだ)
誰もがうらやむ美男美女のカップル。
しかし、宮崎先輩は百瀬というタイプの異なる美少女
ともつきあっていた。デートを目撃してしまった僕は、
神林先輩の疑念を晴らすために百瀬と恋人のフリを
してほしいと宮崎先輩から頼まれてしまう。
命の恩人である宮崎先輩の頼みは絶対に断れない。

豆電球のような学校生活を同レベルの親友田辺と
すごしていた僕だったがきら星のような恋人ができた。
そして先輩たちカップルとのダブルデート。
神林先輩への罪悪感と百瀬への切なく苦しい想いや
秘密を抱えきれなくなった僕は田辺に心情を吐露する。

作品において印象的なのはキャラクターたち
ひとりひとりの秘密や感受性豊かなセリフだ。
恋愛物語の蚊帳の外に置かれていた田辺が吐き出した
飾りのない主人公へのメッセージに心打たれた。

「なみうちぎわ」

5年間の間、意識を失っていた私の目の前に
現われたのは成長したかつての教え子だった。

海辺の田舎町の女子高生姫子は小学六年生の
灰谷小太郎の家庭教師になる。不登校になった
小太郎は生意気な口をたたくが徐々に打ち解ける。
そして事件が起こる。

溺れていた小太郎を助けようと海に飛び込んだ
姫子は重体となり遷延性意識障害と診断される。
意識を取り戻した姫子は徐々に回復し、
杖をつきながら大検をめざして歩き出した。
しかし自分のせいで姫子の人生を大きく変えて
しまったという自責の念にかられる小太郎は
まだあの日の波に翻弄されていたのだった。
寄せては返す波のように起こった恋愛感情、
ふたりの恋の行方は…

「キャベツ畑に彼の声」

本田先生は国語教師、発生がよく黒いセルフレームの
眼鏡がよく似合い女子生徒から人気がある。
わたしこと小林も心惹かれるひとりだが、
結婚間近な恋人がいるという噂。ざんねんである。

わたしは作家の「テープおこし」という高額バイトを
頼まれて録音素材から入力作業を行っていた。
あれ、この声どこかで聞いたような…。
覆面作家(正体、写真などを公にしていない作家)
北川誠二は本田先生なのではないか?

こうなると北川誠二の作品が俄然気になり
読んでみると、黒いセルフレームの国語教師が
登場する本大先生をモデルにしたような内容だ。
確信を強めた私は提出課題時のノートに
あの小説を書いたのは本田先生ですか?と問いかけた。

「小梅が通る」

引っ越しを機に私は周囲をあざむくブスメイクを
はじめた。女優をしていた母、その遺伝を強く受けた
わたしは自覚はないが美少女で周囲をザワつかせる。
頼まれて子役モデルの仕事をしていたことがあるが
ヤバイ自称ファンの出現に心配した親は
引っ越しを決めわたしはモデルを引退した。
誰もがうらやむ容姿は同性からの強いやっかみもあり
苦い過去をつくりもした。

めだたない方が穏やかな生活を送ることができる。
という強い人生訓を持つ母、いろいろ学んだわたしは
平素からブスメイクをし偽装をし日々を送る。
めだたないよう心の友である二人と共に教室の隅で
ひっそりと生きることを選択したわたし。
しかし、お調子者の山本寛太の出現によって
春日井柚木は架空の妹小梅を名乗ることに。
油断して焼き肉店で素顔をさらしてしまい、
とっさにモデル時代の名前を言ってしまったのだ。

小梅にひとめぼれした山本寛太は彼女に会わせろと
わたしをせっつく。めんどくさい奴だ、
数学70点取ったら会わせてやる、でもムリだろ。
と思っていたのだが…。
嘘からはじまる恋もあるんだね。いとしいね。

乙一先生別名義の傑作短編集。すさまじい完成度。
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 19:04| Comment(0) | すごくおすすめの短編・短編集 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月10日

小説『美しい星』三島由紀夫

円盤を目撃したことで自分たちは宇宙人である
と自覚した一家。水爆実験(核実験)をはじめた
アメリカ・ソ連の暴挙を憂い平和を熱望した。

埼玉県飯能市の裕福な大杉一家には秘密があった。
家族四人が個別にそれぞれUFOを見たことで
金星・火星・木星・水星人であると思い出す。
そして地球人の個体に精神(霊魂)が侵入し、
4人で生活する家族であった。
生まれ育った天体での記憶は全くないが、
それぞれ別の天体から飛来した宇宙人であり、
そう自称している。

もちろんそんなことを言う奴は、狂人扱いされ
この星では排斥されることは明白なので
一家はこのことを隠しながら生きている。
世界平和を憂う父重一郎は宗教的活動を行い、
長男一雄は政治活動に活路を見いだそうと
有力な政治家黒木に近づく。
地球人離れした美人の金星人暁子は
自称金星人の竹宮に会いに行く。
変人ばかりの家族の中で平凡な感受性を持つ
母伊余子は彼らに寄り添うように暮らす。

彼らの存在を妬む卑しい近隣の住人。
彼らの通報によってやってきた刑事。
そして円盤を見たことで宇宙人であることを
自覚した自称宇宙人たちも現われる。
彼らは地球人達を安楽死(人類を滅亡)させる
ことが衆生につながると物騒な考えに囚われた
厄介な存在であり、重一郎と対決することに。

物語に登場するのは自称宇宙人であり、
明確な形で宇宙人とする根拠や記述はない。
しかし重一郎や暁子がそれぞれ見た円盤が
実在するのかを論じるのはナンセンスだ。
この物語の主題は冷戦下にあった当時の
深刻な緊張状態の中、核実験を繰り返す
愚かな人類を宇宙人の視点で捉え、
痛切に批判、解決を模索した点である。

核という人間の手には余る科学技術を放棄するか
そもそも人類自体を滅亡させることで
魂を苦痛から解放する(安楽死させる)
という命題に挑んでいる。
作中重一郎は、個人の痛みが人類全体の痛みと
して共有されればこんなバカげた諸々の
失敗や過ちを繰り返さないはずだと糾弾する。
殴り合えばわかることが、爆弾を投下すれば
一方的な暴力となりボタン一つで可能となる。
しかも、それが命令であれば責任の所在は
あいまいとなり、取り返しのつかぬ惨劇を生む。

「人」が思いつくことはいいことでも悪いことでも
いつかは誰かが実行する。理想を掲げる重一郎、
政治家になることで人類を支配しようとする一雄、
金星人を身籠る暁子。そして自称三バカ宇宙人。
自己陶酔する者たちの運命、人類の運命は?

1962年(昭和37年)に描かれ8年後に著者は
亡くなったわけだが、その頃と今とでは世界の
あり方や緊張度全然違うのだろうなぁ。
それこそ宇宙人や広大な宇宙に救いを求めたくなる
気持ちもあるのだろうが、著者の持つ宇宙(脳)に
少し触れられるというだけでも一読の価値がある。
新潮文庫 355ページ
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 17:24| Comment(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月31日

小説『火花』又吉直樹

花火大会で出会ったお笑い芸人あほんだらの神谷さんに
惚れ込み弟子入りした徳永。
お笑いのために全身全霊をこめて邁進する師匠神谷さんと
僕との日々を描く。そんな愛しくも馬鹿馬鹿しい傑作小説。

平素の破天荒な言動や舞台での暴走などにより
お笑い芸人からも引かれる。
ヒモ的な生活をしながら借金を重ね、
誰よりも純粋にまじめに笑いを追求する探求者神谷。
彼の才能に魅せられたスパークスの徳永は
実生活やお笑いにおいて強い影響を受ける。
繰り広げられる漫才談義、独自の哲学。
お笑いに対する真摯な姿勢。

周囲からバカにされ、受け入れてもらえなくても
ただただ我武者羅にひたむきに我が道を行く。
そんな姿に感動させられ、強く勇気づけられる。
神谷と徳永の何気ない会話が無性におもしろい。
そして、やはり花火のシーンが印象的な作品。
文藝春秋
ラベル:おすすめ 小説
posted by book0001,世界は誰にでも、読書初心者におすすめ at 07:13| Comment(0) | すごくおすすめ長編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする